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人生最高の料理と、キッチン奴隷

イタリアで食べた人生最高に美味しかったお料理のことを以前書きました。今回はこの話のちょっと続き。

突然ですが、「Heat」という面白い本がありまして、我が家の愛読書になっております。

ビル・ビュフォードという、雑誌「ニューヨーカー」の編集者だった人が、アマチュアながらニューヨークで有名なイタリアンシェフ、マリオ・バターリのレストランの厨房で働き、どんどん料理人の世界にはまっていき、

さらにはイタリアに渡ってパスタ修行したり、アメリカでもだいぶ有名な、トスカーナの変な肉屋のおっさんダリオ・チェッキーニの下で働いてみた時のこと、料理に関わる一筋縄ではいかない人達について描かれたすごく面白い本です。

日本語翻訳版も出てました。日本語版のタイトルは「厨房の奇人たち―熱血イタリアン修行記」ですが、オリジナルのタイトルは「Heat」。そして副題は「素人がキッチン奴隷、調理スタッフ、パスタ職人、そしてトスカーナでダンテの詩を吟じる肉屋の弟子として働いた冒険記」。

この副題にも入っている「キッチン奴隷 (kitchen slave)」という言葉。

素人だったビュフォードさんが、マリオ・バターリの厨房で働き始めた時、厨房スタッフの指図や指導を受けつつ、言われた仕事をこなしていく様子を冗談半分で最初自らをキッチン奴隷、と呼んでいたのですが、

実際厨房は親方と弟子の世界。厨房の中では絶対的存在であるマリオ・バターリの世界の中で、彼のアイデアを実現させるための「奴隷」にもなっていたわけです。

さて、料理の腕を磨くために料理人が海外修行するのはよく聞く話。ビュフォードさんもイタリアでパスタ作りや、肉屋での修行に励みますが、イタリアでは、料理修行したいと海外からやってくる人が殺到しており、そういう人達のための「インターン」ビザがあるそう。そしてそのビザを取るのもなかなか難しいらしい。

しかもインターンは無給。

これぞまさしく、「キッチン奴隷」。

そしてこの本の中にさらっと書かれていた一言

「そういったキッチン奴隷は色々な国の人(フランス人除く)がいるが、ほぼ大体日本人

・・・Σ(゚Д゚) マジデスカ!

イタリアで美味しいレストランで食事するたびに、旦那は「この厨房の奥には、日本人やアメリカ人のキッチン奴隷が働いてるのかもしれないなあ」なんて言っていましたが、実際ネットで私が人生最高の料理を食べたレストラン「リストランテ・フリポー」を検索していたら、ここで修行した日本人がかなりの数いることが判明。

さらにこのレストランを目指してわざわざトッレ・ペリチェにご飯を食べに行く日本人もいたらしい。そういうブログ記事もヒットして、これまたびっくり。ここ、結構山奥村にあるんですが・・・

恐るべし、食いしん坊日本人!

フリポーで修行した日本人の話が、この朝日新聞の古い記事でも紹介されています。私も食べた羊の牧草包み焼きのレシピまでついてた。

リストランテ・フリポーのシェフは、郷土料理をベースにしたイタリア料理を作り出してきたという、ヴァルテル・エイナルドさん。北イタリアを代表するシェフの一人なんだそうです。なーんも知らないでうまいうまいと食べてたわ・・。

この記事はもう10年以上前のものですが、フリポーで修行した日本人シェフ達のレストラン、祖師谷の「トラットリア・フィオッキ」、外苑前の「アカーチェ」、茨城の守谷にある「リストランテ・ルーチェ」・・調べてみたら全部まだ営業中でした!

特に「フィオッキ」では、この牧草包み焼きを全面に押し出したピエモンテの郷土料理を出しているみたい。

この記事によると、2011年にリストランテ・フリポー自体は閉店したそう。

フリポーはもう無くなってしまったけれど、そこででいわゆる「キッチン奴隷」として修行に励んだ(と思われる)シェフの皆さんが、日本でフリポーの味、ピエモンテの山奥の土地の味を今も再現しているのだと思うと、なんとも不思議です。

実はこの他にも、イタリアで美味しかったなーと思ったジェラート屋さんや色んなお店、後で調べて見たら日本に支店を出しているところが沢山ありました。美味しいイタリアンを食べたければ、日本に行け!!

よし、次回の里帰りでは祖師谷に行くぞ!

おまけ:ヴァルテルさんはその後、ピエモンテ州のケラスコという、これまた人口6000人の小さな街で新たなレストランをオープンした模様です。もともと修道院だった場所をホテルとレストランにしたところらしい。行けるものならいつか行ってみたい。

さらにおまけ:イタリアに最後に行ったのは随分前なんですが、昔書いていたブログに未完の旅行記あり、これを基に記事を書きました。ご興味ある方(いるのか?)はどうぞ~。

トッレ・ペリーチェというイタリアの山奥村と、そこでの素晴らしい食事の話はこちら↓


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