見出し画像

日々のセンス・オブ・ワンダー

レイチェル・カーソンのセンス・オブ・ワンダー。
この「センス・オブ・ワンダー」を知ったのは、大学1年のときに、カーソンの著書を紹介されたことがきっかけでした。

すぐに、カーソンの60ページほどの『センス・オブ・ワンダー』を入手。カーソンがアメリカのメイン州で大甥のロジャーと、海辺や森の中での散策をする様子が、瑞々しく、静かな感動とともに書かれていて、すぐに惹き込まれていきました。読み終わった後、しばし、しんとした心持ちになり、大きな何かに出会ったような、心に新しい源泉ができたような感情がふつふつと湧き上がってきました。
それから、20年にわたって、私の中のセンス・オブ・ワンダーはいろんな形で発酵し、作品や考え方に影響を及ぼし続けています。

レイチェル・カーソンは、『センス・オブ・ワンダー』の著者でもありつつ、ベストセラーである『沈黙の春』も執筆していて、世界に初めて農薬が地球環境に及ぼす危険性に先見性を持ち警鐘を鳴らした科学者でもありました。彼女の理知的でわかりやすく心に訴えるメッセージは、ありとあらゆる生命が、複雑な網を構成していること、人間が化学物質を使うことでそのネットワークが脆くなってしまうことを明示するとともに、人々に環境問題について向き合う重要性を示してくれています。

わたしが初めて手にした『センス・オブ・ワンダー』は、美しい写真が載っている上遠恵子さんの翻訳でした。上遠さんは、センス・オブ・ワンダーとは、「神秘さや不思議さに目を見はる感性」と訳されていて、実際にそのような感情や感性を感じ、大切にしたり、伝える活動をしてきました。

そして今年の4月に、森田真生さんがカーソンの『The Sense of Wonder』を新たに訳されたものが刊行され、楽しみに手に取りました。新訳と、その続きである「僕たちの『センス・オブ・ワンダー』」で構成されていて、センス・オブ・ワンダーの心の動きについて、より様々な可能性を瑞々しい言葉にされていて目が開かれるようで、読んでいて嬉しくなりました。
森田さんは、wonder⏤という言葉がもつ豊かな広がりをこのように語っています。

「どこに進むのでも、たどり着くのでもなく、ただ心がいきいきと躍動している状態。驚異、驚嘆、驚き、不思議、好奇心。あるいは文脈によっては、疑念や不安と訳されることもある。結論がでないまま、動き続ける。静かでありながら、繊細に周囲に感応している。
(森田真生『センス・オブ・ワンダー』p52)

…自然の中に分け入ると、自分の思考の枠をいとも簡単に超えた自然を目の当たりにして、まるでサナギの中身が再構成されるように、わたしの感性も心地よく(時折おののきながら)、呼応したり、新しく変革されていくことを感じます。

また、自然はオープンでありながら、知り尽くすことができないほどの謎や不思議さを秘めています。そのことを思うと、人間の有限さのかなしみを感じるとともに、果てしない喜びも静かに湧いてくるように思います。
この心を揺さぶるワンダーや、自然からの「宝物」にいかに気づくことができるか、そのアンテナも日々意識して育み、観察を続けていきたいと思いを新たにしました。

ここでは、わたしなりの「日々のセンス・オブ・ワンダー』として、自然の宝物を観察・記録して、Wonder を描き継いでいきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?