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桃源郷の住民たち、再び~『大家さんと僕 これから』(矢部太郎)~

*この記事は、2020年1月のブログの記事を再構成したものです。


『大家さんと僕』の続編の感想です。

↑kindle版


読み始めて思ったのは、「続編を出す必要はなかったんじゃないかな」ということ。続編は大ヒットした第1作を超えられない、というセオリー通りでの気がしたのです。明らかに、前作より劣るので。


でも、それは矢部自身が思っていたことであり、彼はもともと続編を描くつもりはなかったことが明らかになります。なのになぜ描いたかといえば、大家さんのためでした。


そこから、前作とまた違う今作の味わいが出てきます。人生の坂をゆっくり、でも意外に早く下っていく大家さんに寄り添う矢部。戦時中を含め、大家さんの子ども時代や若き頃のエピソードも織り交ぜつつ、月日の移ろいを描きます。


結末は、予想はついていたものの、やはり泣けました。でも大家さんは、これからもずっと矢部と一緒なのだと思います。授賞式の矢部に、矢部の想像の中で寄り添っていたように。


読みながらふと思ったのは、大みそかを大家さんと過ごすことを選ぶ矢部と、そんな矢部を「売れる気あんの?」と責める相方の心のありようの違いが、二人の人生を分けたのではないかということ。


最終的には、ぜひお勧めのマンガとなりました。大家さんも矢部も周囲の人たちも、前作同様、桃源郷の住民たちのようで、心が洗われます。


見出し画像には、「みんなのフォトギャラリー」から大家さんの大好きな新宿伊勢丹の写真を使わせていただきました。


↑単行本



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margrete@高校世界史教員
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