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ひとり親家庭のために寄付つきインフルエンザワクチンを始めます!

マーガレットこどもクリニックの院長の田中です。
毎年この時期になるとインフルエンザワクチンの入荷が心配でソワソワしてます。

さて、今日は10月から始める寄付つきのインフルエンザワクチンの取り組みについてお話をしようと思います。

今年、私たちのクリニックではインフルエンザワクチン1回につき500円の寄付をみなさんにお願いすることにしました。ワクチン1本4000円に500円の寄付がついて4500円/回です。

この500円を8人分あわせて、お困りのひとり親家庭の親もしくはお子さん1名にワクチンをプレゼントさせて頂きます。

当院では一昨年は無料、昨年は1人1000円でインフルエンザワクチンの提供をひとり親の親子に行ってまいりました。

今年はたくさんの方の力を借りて、少しでも多くの人にプレゼントをさせて頂きたいと思いこの企画を考えました。

どうしてひとり親への寄付が必要なんだ?

と思われる方もいると思います。そこでひとり親の現状についてまずは触れたいと思います。

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https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000190571.pdf より

図はひとり親世帯の数を母子世帯、父子世帯数(推計)を示しています。ひとり親世帯はここ数年横ばいでおよそ140万世帯です。圧倒的に青で示す母子世帯が多いのが現状です。

その母子家庭の就労状況をみると80%の人が就業していますが、そのうち正規職員として働けているのは半数以下。半分以上がパート・アルバイトおよび派遣社員で、母親の平均就労収入は200万 世帯での平均年収は348万で 児童がいる世帯の平均の半分にしか届きません。非正規の年間収入に至っては平均133万。

ひとり親家族の多くが貧困の中にいます。

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一方、同じひとり親である父子世帯は非正規での雇用は10%未満。また、父親の就労収入は400万前後で世帯収入は573万 児童のいる世帯の81%となっています。


母子家庭と父子家庭でなぜ、こんなに差が出るのでしょうか?個人の問題はあるかもしれません。でもその前に、日本はそもそも男女で就労、賃金において明らかに差があります。

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こちらの図は主要先進国の男女賃金格差を示しています。日本はフルタイムの労働者の男女賃金格差は主要先進国で最も大きいという、とても悲しい状況です。

主要国における年齢別の労働力率を示します。日本は20代までは他国と大きな差はありませんが、30代になると女性の労働力率が落ち込みます。結婚出産で離職する人が増えるからです。この年代、男性に変化はみれられません。

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こちらは年齢別の労働力率の就業形態別の内訳です。就業形態をみると男性に比べて女性の正規雇用はもともと低く、結婚出産年齢を経て、さらに正規雇用が減っているのが分かります。


もともと非正規雇用もしくは仕事についていない母親が、ひとり親となってから小さいこどもを抱えて正規雇用になる選択は日本ではかなり難しい。

インフルエンザにこどもが罹患したら、たちまち困ってしまうのはどこの世帯も同じかもしれません。

でも、ひとり親の世帯ではこどもの病気により、親は仕事に行けなくなる。非正規の場合には収入の減少に直結する。さらには親も罹患してさらに困りごとが大きくなる。ということが容易におきます。ひとり親自身の身体的な負荷はもちろんのこと、精神的にも大きな負荷になるでしょう。子ども自身が病気に罹患した自分を責めてしまうことだってあるかもしれない。

最もワクチンを必要とする人たちがひとり親家庭の親子です。

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ひとり親になったのは、自己責任だと思う方もいると思います。

しかし、
養育費を強制的に徴収する仕組みが不足しているのも
女性の正規雇用がそもそも男性より低く
女性の収入がそもそも男性より低く
結婚・出産の負担が女性にまだまだ多く
男女格差が大きいのは、個人のせいでは決してないはずです。
社会のひずみだと思うのです。


ひとり親が貧困となってしまうのは社会の問題です。

そのしわ寄せが一番行くのが、ひとり親のこども達だなんておかしくないでしょうか?

私自身、小さい頃は男女差なんて意識したことはなかったです。
理系を選択したときにも、医学部を選択したときにも、小児科を選択したときも、仕事を始めたころも女性であることで不利益を意識したことはなかった。たぶんすごく恵まれていたのでしょう。

でも、結婚して、出産をするととたんに変わりました。
なぜ世帯主は夫なのだろう そもそも世帯主ってなんだろう
なぜ家事分担は半分じゃないのだろう
なぜ育児の主体は母親がほとんどなのだろう
なぜ仕事を減らすのは母親なのだろう
なぜこどもの病気のときに受診につれてくるのは母親ばかりなのだろう(最近の外来はずいぶん変わりましたが)
なぜPTAは女性ばかりなのに、会長は男性なのだろう
いろんななぜは今もつきません

やっかいなのは自分自身のなかにも、「よき母」「よき妻」の像があって、そこにたどりつけないことをマイナスに考えてしまうこと。仕事を減らしたり、家事や育児を女性の方がすることを当たり前だと思ってしまう自分がいること。

ジェンダー格差はほんとに根深く、難しい。

ひとり親の貧困問題って、個人の問題だけじゃない問題だと思うのです。

誰にだって明日には夫婦のどちらかが事故にあって、ひとり親になる可能性がある。それに、選択をひとつ間違えたら、もう修正がきかない世の中なんて、息苦しくて嫌じゃないですか?

それよりも、困ったときには困っているといえる。手を差し伸べられる人が手を差し伸べる。助けられた人も元気が出てきたら次の誰かを助ける。そんな社会がいいなって私は思うのです。

そして「なぜ」の苦しみに、一緒に働く若い子達がこの先も同じように苦しむこと。今、赤ちゃんの女の子たちが将来同じように苦しむことをなんとか減らしたい。

今回の企画はひとり親の親子を支えたいという思いと、ジェンダー格差に対する私の小さな抵抗です。

私達の力は小さいですが、私達だけの力ではなく、多くの人の力で最もワクチンを必要とする人に届ける。その活動を多くの人に知ってもらう。

小さな一歩をみんなで踏み出せば、結構大きな力になるんじゃないかなって思ってます。皆さんの力をおかしください。

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最後に昨年当院でインフルエンザワクチンを接種されたひとり親の方の声です。

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・こどもが二人いて二人分の費用だけでなかなか自分の分までいかないので、本当に助かります。自分が倒れるわけにはいかないので

・毎年こども3人分の注射を打つので精一杯で、自分は打てずにこどもから感染してしまったりしていました。子どもたちも1回分しか打てない年もありました。喘息のこどももいるので、電車賃をかけてでも打ちに来たいと思いました。本当にありがたいと感謝の気持ちでいっぱいです。

・非常にありがたいキャンペーンです。ひとり親なので親・子どちらか倒れてしまうと共倒れになってしまうので。
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当院のインフルエンザワクチンは10月6日より開始します。予約の詳しい方法は以下をご覧ください。
















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