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【町内会 顛末記】自治会長というのをやってみた 1

 昨年末、自治会長のTさんが入院してもう何ヶ月か経ち、退院の見込みは立っていない。次の自治会長を選出しなければならないのだが、空き家ばかりが目立つ古い城下町のことだ。日本全国の例に漏れず高齢化がすすみ年寄りばかり、会長・副会長・会計の三役をできる家は限られている。

 加えて長年の複雑な経緯で、任期は2年、副会長が次の2年は会長にスライドといった会則はあるものの、だれもやりたがらない会長はTさんが十数年務めていて、副会長や会計もその場しのぎの「頼みますわ」で同じような顔ぶれが続き、「順番では次は1班から会長を出すはず」というTさんの奥さんに、もともと会則をつくった1班のOさんが「そんなの、会則どおりにやらないのが悪い」と噛みつき、もうぐちゃぐちゃですわ。

 それでとりあえず、新三役の選出及び会則の見直しをするために臨時総会を開いてみんなで相談しようと、副会長の近所のNさんに頼まれて回覧版の内容をわたしがA4サイズで作成したのが昨夜。

「会則の見直しったって白紙から始めたら決まらないだろうから、ある程度たたき台をつくって、かつ主要メンバーで外堀を埋めておいた方がいいんじゃないか」とわたしのアドバイスで、つれあいの他三名がわが家に集まってフリーメイソンならぬ秘密会合をもち、仕事から帰ってきたら「うちが自治会長になっちゃったの」って、いったい何があったのですか。

 訊けばいろんなことがぐちゃぐちゃになっているし、総会でこまかい議題を出してもまとまらないだろうし、とりあえずやる気のあるメンバーで三役を牛耳って、2年の間に役員総会でいろんなことを決めてしまおう、という作戦らしい。

「そうか、わかった。いよいよおれの時代がきたか」と、わたしはなかばやけくそになって、「ではまず、“若い娘をさしだせ”という会長指令を出す」と宣言すると、つれあいが「若いって、わたしたちくらいが若い世代だからね~」

 続いて娘「20歳の女の子4人分で80歳のおばあさん一人でどうだ」 「それはちょっとキビシイな~」
 会長指令は早くも座礁しかけている。 

「会長って、たとえばどんなこと、するのさ?」
「そうだね・・ お葬式が出たら、回覧をまわして、葬儀委員長みたいなことをしなくちゃいけない」 

 「“2年間はだれも死なないこと”という会長指令第二弾を出す」 

 つれあい「それはむずかしいんじゃないかな~」 
「“死んでも2年間は死を秘匿すること”」  
 娘「武田信玄だね!」 

 そんなお馬鹿な会話でわが家の今宵は更けていく。



以下の内容で、連載を予定しています。
第一部 【町内会 顛末記】自治会長というのをやってみた
第二部 【町内会 顛末記】町内会を殲滅し廃墟の中から真実の自治組織の出現を待とう


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