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座ってちゃダメですか?
労働安全衛生規則にはこうある。
立ち仕事をしている人たちにも、就業中に座れる機会があるときは、座る権利があり、事業者には休息のための椅子を置く義務がある。
一般に接客業では多いけれど、私の働く工場でも似た問題はある。
日本人の美徳か知らないけれど、座って仕事をすることを良しとしない価値観は存在する。効率的に見ても座れる時間があるのなら、座ればいい。
その方が疲労の蓄積は少ない。疲れにくいということは、ミスや事故のリスクを下げることになる。もちろん、効率も上がる。
一番のメリットは、いい会社だと思ってもらえることだ。
あるカフェでは。
お客がニ人しかいない店内に、立ったまま監視をするように控えているスタッフがニ人。コーヒーを飲みながら本読み、だらだらしている私は、ふと顔をあげるとスタッフと目が合う。
(あれ、読書に集中できないな)と思って顔を上げると、また目が合う。
落ち着かない。ずっと見られている? もしかしてお客が一人でもいたら、気を抜いてはダメなのか。いやいや、仕事熱心すぎるだろ。
次に顔をあげて目が合ったらと思うと、不安になってきた。
一気に飲み干すにはまだ熱めのコーヒーを流し込む。のどに痛みを抱えながら店を出た。
海外では座って接客するスタイルが普通になっている。コロナ禍が明けて、外国人旅行者が増えている。他国から見た日本のこうした価値観はどう映るだろうか。
先日勤め先の社長が、ある女性社員に怒っていた。
すこし具合の悪い女性は、作業の合間の数分、手空き時間だけ椅子に座っていた。もちろん作業は立たなければできない。作業はちゃんとこなしていた。そんな彼女に追い打ちをかける。
「見た目が悪いから立っていなさい」
女性はお願いする。
「すこし具合が悪いので、手空きの合間だけ座らせてください」
「それはあなたの都合で、みんな立ってるのだから、あなただけ座ってるのは間違っている。立ちなさい」
数日後に、なにも言わないまま退職した。
他の社員も転職を考えている。
その場にいて、助けられなかった人たちも同罪なのだ。罪悪感をもってしまう。悪いのは社長なのに。まるで自分が罪人になってしまったかのように、心が重い。
立っているか、座っているか、問題はそこではないんだよ。
その場にいる人が快適に過ごせる環境を、どうやって作っていくかを考えたい。
そのために対話をしたい。
何事も押し付けたらダメになる。
これでいいのか。と現状を疑って、より善い未来に向かって生きたい。