
読書ノート『カフネ』
ままならない現実に打ちのめされても明日はくる。
不妊、離婚、弟の死、自分では気づけないほど弱っていた心を救ったのは、おなじ心の弱さのお節介だった。
41歳バツイチ、面倒くさいほど真面目な性格の戦闘力高めの女性・薫子は、弟の元恋人・せつなと一緒に家事代行のボランティアをはじめる。
生活に困窮しているひとたちだけでなく、ADHDや介護疲れ、生活の荒れてしまった家庭へ温かいご飯とキレイな部屋を提供する。
家事代行をとおして受けとる感謝の言葉に感情がこみあげる。だれかを助けることで救っているのは自分自身なのだと感じた薫子は、ボランティアを続けることになる。
表面的にみえることでわかった気になるなよ! と言われた気がする。家族やパートナーの気持ちを100%理解することなんてできないけれど、対話をして、理解しあう努力を怠ってはいけない。
そのためには温かいご飯とキレイな部屋が必要で、心が元気じゃないと対話もできない。
能力に差があるように、頑張れる量もひとによって違う。自分よりも我慢して、頑張っているひとがいても、助けを求めることは悪いことじゃない。

「カフネ」とは……
愛するひとの髪にそっと指をとおす仕草。
頭をなでて眠りにつかせる穏やかな動作。
甘いものは心の栄養です。体に悪くても、生きるために必要なことっていっぱいあります。
生きることがすこしだけ楽になる。そんな本に出会ってください。