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ハミング

パタ、パタ、とすり減ったゴム底の靴音は国道沿いを彷徨うには
煤の広がった夜を渡る風にさらわれてしまいそうで心許なく、
切れ間のないヘッドライトの群れから逃れるうち、うっすらとした
灯りが揺れて人ひとりがやっと通れる細い裏通りへ迷い込んでいた

ぶん、ぶん、と低く唸る室外機から漏れる水たまりに映る夜空には
ネオンの星々が輝いて、ところどころが青や紫、あるいは赤に縁取られ
その唸りに合わせてどこかから歌が聴こえてくるような気がしたので
くたびれた黒いデニムのポケットをまさぐってみると、時計が出て来た

コツ、コツ、と秒針は小さな音を立てながら逆さまにねじれてゆき、
そのままぐるぐると回り続けるのを眺めるうちに探していたものが
何だったのかも忘れてしまい、限界を超えた秒針が文字盤のガラスを
粉々に打ち砕いたかと思うと、僕は自分が歌っていたのを思い出した

まるで今この瞬間ここへやってきたように、見知らぬ街のベンチに座って
言葉も分からないからずっとハミングで、通り過ぎる透明うつろな人達を横目に



※Marcos Japasamba名義での音楽活動のひとつ【Lofi Night Sound Scape】との連動を図る、音と画と詩で相互をモチーフとする形態での詩作品です。

※こちらの楽曲は以下よりDL可能です。無料DL可能ですが、お気に召したら投げ銭購入して頂けますと活動費となり幸いです。(投げ銭の場合はシステムの都合上、最低金額¥50~ご無理のない範囲で自由に金額を決めて頂き、DL購入が可能となっております)

https://marcosjapasamba.bandcamp.com/track/21-quando-a-matriz-quebra

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