第十一の覚書(カラオケ好きのNKSさん)
第九の覚書で作業療法のことを少し書いたが、作業療法がうれしかったのは、少しの間だけでも新鮮な空気が吸えることだった。
閉鎖病棟は窓が開かない。たぶん近年のコロナ禍でも状況は変わらんかったのではないだろうか。
フロアの入口に鍵がかかっており、別のフロアに行くのも医師の許可のもと、看護師や介護士の引率でしか移動ができない。
精神的・物理的に閉じ込められる感覚が、これほど人間をむしばむことはないと思った。
そんなたまの作業療法の時間。Tさんはよく屋外でPCさんとキャッチボールをしていた。
PCさんの投球は正直言ってへぼく、一方のTさんはさすがは元甲子園児。
フォームからして素人とは違う。
それでも投げ終わったら、「ありがとうございました!」と相手のPCさんに丁重に挨拶をしていた。
お世辞にも体育会系とは言い難い自分は、野球やバスケにはすぐに飽きてしまった。
カラオケルームなるものがあって、作業療法での自分の居場所を見つけることができた。
そこで第九の覚書で触れた女性の登場。
別の階の患者さんと触れ合う機会は、事実上作業療法くらいなものであった。
(定期的に行われる映画鑑賞会なるものもあったが、特段交流という交流はない)
閉鎖病棟の女性病棟の患者さんらしい。
この女性、カラオケでよく西野カナを歌っていた(NKSさんとしよう)。
始めましての段階から会話もしてみたが、別にやりとりは普通。
初対面の段階では、特段「変だな」とは思わなかったのだが・・・
とにかく1週間か一回ほどの作業療法。閉じ込められた空間から少しの間解放される安堵感。
あと作業療法士さんたちは、優しい方が多かった。
(看護師さんたちについては、また別の機会に書く)
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