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京大生の本棚part.3〜五十嵐律人さん「法廷遊戯」〜
いや〜面白かった!これほど読むのに頭を使う小説というのも久しぶりです。
法学部生のはしくれである私が、五十嵐律人さん著「法廷遊戯」の感想を記していきたいと思います。
この本は、こんな人におすすめです!
・「罪」とは何か、「罰」とは何かを考えてみたい人
・法律にぼんやり興味があるけど、なんか敷居が高いなと思っている人
・どんでん返しの連続のノンストップエンターテインメント小説を読んでみたい人
・考える読書をしたい人
ちなみに、解説をされているのはQuizKnockの河村さんです。
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いきなり宣伝で失礼いたしました。
できる限り見ていただけるところにリンクを載せたかったもので…
では、本題に参りましょう。
序盤に司法手続きの専門用語が出てくるので「うっ」となりかけましたが、この小説は法律に関する知識そのものを問うものではありません。
それよりも、もっと本質的な話です。
突然ですが、あなたは、「目には目を、歯には歯を」という言葉を聞いたことがありますか?
社会現象にもなった某ドラマの「やられたらやり返す、倍返しだ!」というように「自分が何か危害を加えられたら、やり返して良いってことでしょ」と認識している方も多いのではないでしょうか。
…半分、正解です。
挑発的な言い方になってしまいましたが、少し想像してみてください。
あなたはある人と取っ組み合いの喧嘩をしていて、相手に顔面を殴られ、不幸にも片目を潰されてしまいました。
さあ、相手をどうしますか?
思い切り殴り返しますか?え、半ごろしにする?それとも…
片目を奪われるのは大きな苦痛を伴います。でも、冷静に考えてみてください。奪われたのは片目の視力。
それなのに、相手には命を持って償わせるのは、重すぎではありませんか?
何か被害を受けたら、それと同程度の報復しかしてはならない。
つまりこの場合、相手の片目をつぶすことで勘弁してあげようという話。それが「目には目を」=同害報復の真の意味なのです。
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画像引用元: https://sekainorekisi.com/glossary/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%A0%E3%83%A9%E3%83%93/
どれほど腹が立っても、同程度の報復で許すというのは、ある意味では「寛容の論理」(登場人物の1人、結城馨のセリフより)なのです。
しかし、本当にそうでしょうか?
この原理で行くと、「誰かの命を奪った人は、自分の命を持って償わなくてはならない」ということになるのではないでしょうか。
でも、故意ではなく過失で人の命を奪うことになってしまった場合、命での償いは重すぎます。
それは、「本当の意味」で人の命を奪った者にのみ課されるべき罰です。
「本当の意味」での殺人-----。
一体何を持ってしてそれを決めるのでしょうか?
その答えを丸一冊を使って、読者の頭も総動員して考えるのが、「法廷遊戯」という作品なのだろうと思いました。
あまりに抽象的なので、物語そのものの話もしましょう。
なお、映画のHPで公開されている範囲のネタバレをします。「まっさらな状態で読みたいよ!」という方はここで閉じてください。
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主人公・久我清義(演:永瀬廉さん)
織本美鈴(演:杉咲花さん)
メインとなる登場人物は3人。みな法律家を目指しています(いました)。
主人公・久我清義(くが きよよし)は弁護士に、
ヒロイン(?)・織本美鈴(おりもと みれい)は大事件の被告人に、
もう1人(主人公の友人)・結城馨(ゆうき かおる)は命を落とします。
それも、非業の死というべきものでした。
しかも、その友人を殺害した容疑で美鈴が逮捕され、清義が弁護人になるのです。
どうです、ゾクゾクしませんか?
弁護人となった清義は、数々の謎にぶち当たります。
・美鈴が本当に馨を手にかけたのか?
・そうでないなら、馨はどうして命を落とさなければならなかったのか?
しかしこの事件の裏には、3人を結ぶあまりにも壮絶な過去が強く絡んでいて…。
物語としてはハードですが、展開が何回も何回もひっくり返り、驚きの連続。それがシリアスな中にもエンターテインメントの要素を加えています。
特に最終章の盛り上がりは凄かった。思わず「えーっ」と口に出してしまったほどです。これは、ぜひ実際に読んで体感していただきたいです!
最後にトリビアを一つ。表紙に描かれている花は、おそらくリンドウです。リンドウの花言葉は、「正義感」と「勝利」。
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画像引用元: https://gardenstory.jp/plants/48353/
詳しくは言えませんが、物語を読むと、このトリビアが深〜い味わいを添えてくれます。
個人的にかなりのヒット作品です(というか、最近の小説はどれもレベル高い)。ぜひ、お手に取ってみてください!