塩角煮とチャーシューと食べあと
台所の切り札
そんな日にはこれ、という『台所短縮レシピ』を誰しも持っているのではないか。
自分が台所に立つようになってから、そう思うようになった。事前に漬けるだけ、あとは焼くだけで食卓に並べられるひと品に助けられることのなんと多いことか。
パン・ウェイさんの簡単チャーシュー
ついこの間もそんな日があったので、迷わずこのチャーシューを作ることにした。
「ひと晩漬ける」とレシピにはあるがふた晩漬けてみたらさらに濃厚になり、そちらのほうが好みだったので今回も2日前に仕込む。
👇パン・ウェイさん『簡単チャーシュー』👇
焼き目は魚焼きグリルで
漬け汁の材料をポリ袋にぽんぽん入れて、3cm幅に切った豚バラの塊を漬け汁に入れていく。
『オイスターソースと醤油は同量で』とあるが、子どもがオイスターソース独特のコクを時々いやがるので今回は若干減らした。
ポリ袋の空気を抜いて縛ってから冷蔵庫へ。おやすみなさい🌙
食べる日は焼く30分くらい前に冷蔵庫から豚肉を出して、魚焼きグリルで片面8分ずつ焼く。レシピでは『170℃に熱したオーブンか魚焼きグリル』となっており、両方試したがグリルの方が時間が短くて済んだ。そしてグリルは焼き目がついて食欲をそそるのだ。
単に、わが家の12年選手のオーブンには重労働だったのかもしれない。
焼けた豚肉を1cm幅に切って、貝割れ菜がなかったのでベビースピナッシュを敷いたお皿に盛る。この日は外出から帰ってそのまま台所に立ち、あれよあれよという間に夕飯の時間がきて写真を撮るのをすっかり忘れていた。そんな日のほうが多い。
あぁ、おいしかった。ご馳走さまでした🥢🍚
これなら作りたい
わたしの場合決して多くはないが、台所に立つのが苦でないレシピもある。
そう思ってしまう一品がある。それが角煮やチャーシュー、炊き込みごはんだ。
ねぎの青い部分をそろそろ食べなければ、と思っていたところに豚バラ肉の塊が舞い込んできた。やった!
角煮はときどき作るのだけれど、数年前に塩角煮を知って作ったところ、ものすごくおいしかった。
それをふと思い出してレシピを探す。
ケンタロウさんの塩角煮
あった、あった。
「塩角煮ってどんな味なんだろう。塩だからしょっぱいのかな」と思っていたが、酒と黒胡椒と小さじ1の塩でこんなにやさしい味になるんだとはじめて作ったときに驚いた覚えがある。
👇ケンタロウさん『塩角煮』👇
深い鍋にたっぷりのお湯を沸かし、4、5cm幅に切った豚肉と、Aをすべて鍋に入れる。沸騰して3分くらいは強めの中火のまま、灰汁を粗方とってから弱火にした。蒸し器用の穴のあいた中蓋を蓋代わりにして、茹で汁が蒸発して豚肉がひょっこり出てきたら湯を足していく。
『竹ぐしがスーッと通るまで2、3時間弱火で茹でる』のレシピ通り、約2時間後に豚肉はぷるんぷるんになっていた。火を切って豚肉と茹で汁1カップを取り出す。が、計量カップがどこを探しても見当たらない。
しかたがないので『茹でた鍋をサッと洗って(レシピ)』ではなく、目盛りつきの鍋に豚肉、茹で汁1カップ、B(酒大2、塩小1、粗びき黒こしょう少々)を移し変えて蓋をする。弱めの中火にかけて15分、ときどき煮汁を豚肉に回しかけながらふたたび煮込む。
クレソンはないけれど
豚バラの塊を見てレシピを思い出したのでクレソンの用意まではしておらず、食べる直前に鍋を温めて乾燥あおさを入れた。
苦味をもとめるならこの季節であれば春菊でも、夏場なら水菜にも合いそう。
箸でつまんだだけでくずれるほど豚肉が柔らかい。豚肉の甘みと塩気に黒胡椒がきいている。白いご飯に乗せて一度にほお張る幸せ。今朝お米を炊いておいて良かった。
つぎに作るときは粒こしょうを買ってガリガリ挽こう。
食べあとをきれいに
10年以上前にケンタロウさんのお母様、いまは亡き小林カツ代さんのエッセイで「食べあとをきれいに」と読んだのを折にふれて思い出す。
一言一句おなじではないが、こんなことが書かれていた。
これを読んでから外食や誰かのお宅におじゃましてお茶をしたとき、使った食器やカップ、ナプキンに気を配るようになった。作ってくれたひとへの気持ちやあと片付けをしてくれるひとの手数をひとつでも減らすことはもちろん、ぐしゃあぁと音がしそうなテーブルよりもしんと調ったテーブルのほうが去るほうも気持ちがいい。
書いている最中に「立つ鳥跡を濁さず」の諺を思い出した。
水鳥が飛び去ったあとは水辺は濁ることなく澄んだままであるというのが由来らしい。「立ち去るものはきれいに始末をしていくべし」という戒めでもある。
そうか、食べ「後」ではなく食べ「跡」だったのか。