スマホの奴隷だった自分が、エッセイイストになるまで
✦Who?
忍足さんは、会社員をしながら出版の夢を追いかけ続け、晴れてエッセイイストとしてデビューされました。日常生活の中で抱く感覚を大切にされている方で、自身の人生を懸けて「自己表現」されている姿にとても感銘を受けました。
✦Points
☑ エッセイイストとしての活動
☑ 「スマホ奴隷」というテーマ
☑ 人生を切り売りするという生き方
1.自己紹介
-----現在の活動は?
会社員をしながら、エッセイイスト・漫画原作者として活動しています。自分自身の「人生を切り売り」するような物書きをしていて、2019年11月1日に『#スマホの奴隷をやめたくて』で本の出版デビューをしました。
忍足みかん
1994年生まれ
エッセイスト 漫画原作者
趣味はプロレス観戦、アイドル、宝塚、サブカルチャー全般、沖ヨガ、アロマ、zumba
特技はドラム演奏
影響を受けた作家・漫画家は梶原一騎、峰倉かずや、芥川龍之介、綿矢りさ、吉田修一
2.絶対に形にしたかったテーマ
-----出版に至った経緯は?
作家として、「本を出版する」ことがずっと夢であり、目標でした。出版にあたってお世話になった編集部の方から、「今までにないテーマで面白いね」と言っていただき、本になりました。
ここまでの道のりは、本当に大変でした。書いた原稿を手に、ありとあらゆる所に電話をし、アポイントをいただいて対面し、「本にしたいです」とお願いしてはコテンパンにされる日々でした。
その度にへこんで、何度も諦めそうになりました。でも、「このテーマで絶対に何かカタチにしたい!」と信じ続けて、ひたすら持ち込みを続けました。
持ち込みをしていた当初は、絵も描いたマンガの作品として持ち込んでいたのですが、絵で出版するには実力が及びませんでした。しかし編集者から、「文章が独特でいい。エッセイならいけるよ」と才能を見出していただき、エッセイイストとしてデビューすることになりました。
3.「スマホの奴隷」
-----「スマホの奴隷」というテーマへのこだわりは?
色んなものを描いていた過程で、新聞の読者ページに投稿をしていた時期がありました。ある50代の主婦さんが投稿を読んで、感謝のお手紙を送って下さりました。その時に投稿していたテーマが「スマホ奴隷」でした。
この主婦さんはガラケーを使用していて、お子さん達は今や当たり前のようにスマホを持っている世代でした。スマホを持った生活が当たり前になった今の時代を風刺し、デトックスをテーマに書いた作品に対して、「こういうことを書いていることが素敵ですね」という内容のお手紙をいただきました。
書いたものが誰かの元に届いて、感謝の言葉をいただけたのは本当に嬉しかったですね。このテーマが、「世の中から求められている」という自信をもらったきっかけとなりました。
自分自身も「スマホの奴隷」になっていた、という経験も大きかったと思います。どこへ行くにも、スマホを肌身離さず持ち歩き、映える場面があっては写真撮影し、SNSにアップし続けました。
投稿への「いいね」に一喜一憂し、どんどん心身が疲弊していきました。ある時、SNSでのやりとりに疲れてしまって投稿を控えたのですが、気付けばどんどんフォロワーが減っていました。「私の投稿に “いいね” もしてくれないのに、繋がっている意味ある?」という経緯を聞いたときに初めて、「毒されている」という感覚になりました。
命を落としかけた出来事もありました。いつものように、SNSに投稿するための編集に夢中になりながら「歩きスマホ」をしていると、左からは「スマホしながら」向かってくる自転車、右からは「スマホしながら」運転している自動車がやってきました。ハッ、と気付いた頃には過ぎ去っていたのですが、タイミングが少しでも違っていれば衝突していたかもしれませんでした。
これらの経験があって、「スマホ利用の在り方」について考えるようになりました。依存しすぎて、首がボロボロになるストレートネックに苦しんだ当事者として、「スマホの奴隷」をテーマについて書こう!と思いました。
4.「人生を切り売りして」かく生き方
-----忍足さんにとって「かくこと」とは?
死んだ後にも、評価されるための手段だと思っています。
5歳くらいから気付いたら絵本を描いていて、小学生になったらあらゆるコンクールに作品を出していました。「描く・書く」というのは物心ついた時から身近にあって、一生側にあるものだと思っています。
以前所属していた会社での仕事が大変過ぎて、何も書くことができない時期もあったのですが、本当に苦痛でした.....。親や知人からも「現実を見ろ」と言われ続けてきましたが、結果として今こうやってエッセイイストとしての道をスタートできたことは、誇りに思います。
西原理恵子さんという、尊敬する漫画家さんがいます。西原さんが自身の姿を、「人生を切り売りして描いている」という風に表現されています。私自身が「スマホ奴隷」だった話でも触れましたが、自分の人生を題材に作品にしていくという生き方をしていきたいし、多様性がもっと受容される世の中になるような作品をこれからも出していきたいですね。
-----今後の抱負は?
エッセイイストとして、2作目となる作品を出版したいですね。赤裸々に、自分が経験してきたことを「切り売り」して、誰かに届くようなものを書きたい。そして、マンガを書いていくこともこれから仕事にしていきたいので、原作者としても活動していきます。
そして、出版デビューした『#スマホの奴隷をやめたくて』が売れて、少しでも多くの人に届いたらいいなぁ。無名の新人なのでまだまだこれからですが、口コミの力をお借りして発信し続けていきます。
《執筆後記》
対話の中で、忍足さんの抱いた感覚を作品に落としこむ表現力と、断られても出版社への持ち込みをし続けた意志の強さを随所で感じました。
会社員としての働き方に苦労しながらも、自分らしい生き方を実現するためにされてきた努力は、計り知れないものだと思います。
忍足さんの人生かけて見出した「スマホ奴隷」というテーマ、そして初のエッセイ作品。是非、手に取ってみてください。
話し手:忍足 みかんさん
対話 / 執筆:はやし。
《共育者 / 心の対話をする人 / 物書き》
『生き辛さが癒え、心から生きたい幸せを選択できる人で溢れる世界に』を志に、本職は(株)LITALICOにて子どもと親御様双方を支援する教育事業に携わる傍ら、「心に寄り添う」をベースとした対話、インタビュー / ライティング活動等も行っている。
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『取材での対話と発信を通じて "その人の生き方" に光を灯すインタビュー記事』
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