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【映画感想メモ】『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』誰かのために歩くこと

おじいちゃん映画が好きです。

愛する妻を亡くして途方に暮れた主人公が、隣に引っ越してきた家族との交流によって少しずつ心を開いていく『幸せなひとりぼっち』。

病気によって職を失った主人公が、シングルマザーとその子ども家族を助けたことで絆を深め助け合っていく『わたしは、ダニエル・ブレイク』。

70年以上疎遠になっていた命の恩人である親友に、仕立て屋の主人公が最後に仕立てたスーツを届けに行く『家へ帰ろう』。

…などなど、おじいちゃん映画は良作が多い印象があります。なんだろう、理由はうまく言語化できないのですが、おじいちゃん映画からしか得られない何かがある気がする…

そんなわたしのタイムラインに、不意に流れてきたこのツイート。

「うわあ、これ絶対に好きなやつだ…!!」と思い、なんだかもうこのツイートの内容だけでちょっと泣きそうになってしまって、公開を心待ちにしていました。
原作は小説で、日本では「ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅」というタイトルで発売されているそうです。

あらすじ

定年退職し、妻のモーリーンと平凡な生活を送るハロルド・フライ。ある日、北の果てから思いがけない手紙が届く。差出人はかつてビール工場で一緒に働いていた同僚クイーニーで、ホスピスに入院中の彼女の命はもうすぐ尽きるという。ハロルドは返事を出そうと家を出るが、途中で心を変える。彼にはクイーニーにどうしても会って伝えたい“ある想い”があった。ホスピスに電話をかけたハロルドは「私が歩く限りは、生き続けてくれ」と伝言し、手ぶらのまま歩き始める。歩き続けることに、クイーニーの命を救う願いをかけるハロルド。目的地までは800キロ。彼の無謀な試みはやがて大きな話題となり、イギリス中に応援される縦断の旅になるが──!?

公式サイトより

感想

とても沁みました、よかった…。

本作の多くののシーンはハロルドが歩いているシーンで、何かすごい事件が起こったり大きなどんでん返しがあったりみたいなことはないのですが、ハロルドが友人の無事を、自分が歩くことがきっと友人を救うはずだということを、信じて祈りながらひたすら歩いていく姿が沁みます。
イギリスの風景も綺麗で。街並みはもちろん素敵だし、壮大な自然にも癒やされる。ロードムービー的な良さもあります。

もうちょっとコメディっぽい作品を想像してたのですが、結構ドライだったりシリアスな要素も。細切れに入ってくる過去の回想シーンは、終盤になるにつれて辛かった。そして、なぜハロルドがこれほどまでに並々ならぬ思いでこの友人のために歩くのか、というところにも繋がります。

クイーニーは異性の友人だけれど、本当に純粋に良い関係の友人だったのもすごく良かった。ハロルドが旅先で出会った人に「その人のことを愛してるの?」と聞かれて、ポカンとした表情で「?僕が愛してるのは妻だけだけど…」と答えるシーン良かったな。でも奥さんの立場からしたらそりゃ色々複雑な気持ちだよね…… 終盤で明かされる"隠しごと" のことも考えるとなおさら。

手段を選ばずにもっと早く着いていれば、と思ってしまわなくもないけれど、でも、「歩いて行く」というあの手紙に、自分のために今まさに歩いて来てくれているという事実に、クイーニーがどれだけ救われたか。きっと言葉を交わさずともきっとお互いの想いは伝わっているはず、そう祈りたい。
そしてハロルドにとっても、自分の過去と向き合いながら折り合いをつけていく大事な時間になったのだと思う。

誰かのためにする行動が必ずしも相手を救うわけではないし、結局のところどうしたって自己満足ではあるのだけれど。それでも、それが巡り巡って誰かの救いになることも確かにある。結果がどうであれ、相手を思って行動することの尊さを感じました。ラストのカットの"光"が、まさにそれを表していたと思う。
じんわりと心に残る作品でした。


[鑑賞メモ]
2024/06/13 横浜ブルク13 シアター9(F-10)にて
(ちょうど真ん中あたりで見やすかった◎)


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