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「物語」という文学の歴史とは?
こんにちは!
よろづの言の葉を愛する古典Vtuber、よろづ萩葉です🍁
今回は「物語」の歴史をお話しします。
物語とは
物語とは文学のジャンルで、辞書には
「作者の見聞や想像をもとに、人物・事件について語る形式で叙述した散文の文学作品。(デジタル大辞泉より)」
とあります。
今で言うと小説のようなものですが、昔の物語は本を読むだけでなく口で語って聞かせるということもしていました。
平安時代の物語
日本最古の物語
「現存する日本最古の物語」と言われているのが、「竹取物語」。
平安時代中期に書かれた源氏物語の中で「竹取物語が物語のはじまり」と書かれているので、この時代からすでに最古の物語と考えられていたようです。
竹取物語といえば「かぐや姫の物語」として今でも有名なお話ですね。
成立について詳しくはわかっていませんが、平安時代初期に男性によって書かれたと考えられています。
歌物語
同じくらいの時期に生まれた歌物語として有名なのが、「伊勢物語」。
平安初期を代表する色好みである在原業平をモデルとして、様々な恋が描かれているお話です。
歌物語というのは和歌を中心に展開されていく物語のことで、伊勢物語にも多くの和歌が登場します。
かな文字の影響
やがて「大和物語」「平中物語」「うつほ物語」「落窪物語」など、多くの物語が生まれます。
平安時代に物語が流行した理由は、「かな文字」が発明されたことです。
かな文字は日本独自の文字で、日本語を表現するために作られたものです。
かな文字のおかげで和歌が流行し、宮中では歌合が開かれたり勅撰和歌集が編まれたりしますが、かな文字の功績はそれだけではありません。
日常の言葉を表現することが可能になったため、かな文字で物語や日記が書かれるようになったのです。
漢詩文は男性のものとされていたのに対して、かな文字は男女関係なく使われていました。
そのため、平安時代中期になると女性による文学が多く登場するのです。
物語の地位
とはいえ、平安時代、物語は地位の低い文学とされていました。
和歌や日記と違って、物語は「作り物」、フィクションです。
作り物語は「家にこもっている女性が暇つぶしに読むもの」という認識だったようです。
そしてそれらの物語は、ほとんど男性が書いていました。
しかも多くは「今は昔」という、なんとなく現実味のない始まり方をしていたようです。
そこに登場したのが、あの源氏物語です。
源氏物語の登場
源氏物語は紫式部によって書かれた長編物語です。
紫式部はもともと物語が好きだったようで、源氏物語は竹取物語を始め多くの物語の影響を受けていると考えられています。
それに加えて、漢詩のネタも散りばめられているんです。
わかる人が読めば、作者にはものすごく知識があるということが伝わる作品だということですね。
しかも始まりが「いずれの御時にか」。
本当にあった話かのような書き出しで、この始まり方は画期的でした。
源氏物語は、紫式部が夫を亡くしたショックから立ち直るために創作活動に没頭したことで生まれたというのが有力な説です。
初めは近しい人たちに読んでもらっていたのが、評判が広まり、やがてその噂は宮中にまで届きます。
そして、藤原道長・源倫子夫婦がその噂を聞き、一条天皇に入内した娘の彰子に仕える女房として、作者の紫式部をスカウトした。という流れになります。
源氏物語について詳しくはこちらをご覧ください。
初めに書き始めた物語が本当に源氏物語だったのか、詳しいことはよくわかってませんが、
元々は自分のため、あるいは内輪で楽しむためだけに物語を書いていた紫式部は、やがて中宮彰子のために物語を書くようになっていったんです。
宮中でも話題になり、公卿達の間でも回し読みされるようになります。
当時を代表する文化人である藤原公任までが、源氏物語を読んでいました。
そのことは紫式部日記からわかります。
そしてついに一条天皇までが、この物語を読むようになった。
一条天皇と彰子は初めはあまり仲が良くありませんでしたが、源氏物語が二人の仲を繋いだと言われています。
そこに目をつけた道長は、源氏物語を書き続けられるように、紫式部に紙を用意するなどの支援を行うのです。
物語の地位が低かったことを考えると、この流行は異例のことでした。
後にも先にも、宮中でここまで流行った物語は源氏物語だけです。
だから源氏物語はすごいんです。
「更級日記」の作者・菅原孝標女も、
日記の中で「源氏物語がどうしても読みたい」と書いています。
ようやく手に入った時は徹夜で読み耽ったとのことで、それだけ源氏物語が人々に好かれていた物語だったということがわかりますね。
ちなみに当然ながらこの時代に本を印刷して大量生産することはできないので、人々は写本をして本を増やしていたんです。
源氏物語も多くの人々によって写本されました。
平安後期以降の文学
残念ながら平安時代以降、源氏物語と並ぶ物語が生まれることはありませんでした。
代わりに流行したのは、歴史物語です。
有名なのは「栄花物語」や「大鏡」。
そして、鎌倉時代以降は軍記物語が流行しました。
鎌倉時代初期の「平家物語」や、室町時代の「太平記」などです。
今でも人気の文学ですね。
また、「今昔物語集」や「宇治拾遺物語」といった説話集も多く生まれました。
江戸時代以降の物語
江戸時代になると印刷技術が発展したこともあり、それまでは貴族や地位のある人のものだった文学が庶民の間でも読まれるようになります。
そしてさまざまなジャンルの文学が次々と生まれます。
江戸時代の有名な物語といえば、上田秋成による怪異小説「雨月物語」、
十返舎一九による滑稽本「東海道中膝栗毛」、
馬琴による長編小説「南総里見八犬伝」などでしょうか。
「四谷怪談」や「皿屋敷」といった怪談も流行しました。
近代になるとさらに多くの小説が生まれますね。
そして今に至ります。
現代の僕たちは読みきれないほど多くの物語に囲まれていますが、身分関係なく楽しめるようになったのは結構最近のことなんですね。
物語を読むのが好きな僕としては、今の時代に生まれてよかったと心から思います。
お読みいただきありがとうございました🖌️
〈参考文献〉
秋山虔、 三好行雄 編著「原色新日本文学史 増補版」文英堂
山口仲美「日本語の歴史」岩波新書
紫式部 山本淳子訳注「紫式部日記」角川ソフィア文庫
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