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我が街 稲城多摩ニュータウン

 都内から中央高速を西に走ると晴れた日は調布出口辺りで富士山が見えてくる。そして稲城大橋の出口が近づくと富士山の手前の丘の上に突然マンションの群れが見えてくる。大規模マンションが多いが決して密集しておらず、緑との適度なバランスが取れており、遠くから見栄えのする風景はどこか日本離れしている。これが多摩ニュータウン地区で最も遅く開発された稲城地区の光景だ。
 

 今から32年前1988年3月に、この街に最初に建てられたビューパレー向陽台に引っ越して来た。それまで調布に住んでいた。マンションは駅に近く利便性の良いところだったが、駅までは歩道もない細い道路を車を恐れながら歩かねばならず、それが大きなストレスだった。とは言え、これが日本の都市の普通の住宅事情で特別、調布の環境が悪い訳では無かった。

 しかし、稲城向陽台地区は歩道も調布の車道ぐらい広く、車道は片道1車線だが、それこそ、調布の2車線の狭い車道ぐらいの広さで駅までの距離はあったが、気持ちよく歩くことが出来た。大袈裟だが日本の都市の未来を見る感じがしたものだ。時はバブルの最終期だった。その後、バブルが弾け、開発は遅れたが、向陽台、長峰、若葉台と開発が進み、30年の時間を掛け、最後まで残っていた京王若葉台駅の近くの空き地もコーチャンフォーという巨大な本屋、ショッピングセンター、アルソックの研修所、朝日テレビのイヴェント広場等で埋まり、漸く街が完成した。年寄りも多いが、街が若い分、若いカップルも多い。小さな子供が多く、公園は子供たちの元気な声で満ち溢れている。特にコロナ禍ではリモートワークのお父さん、お母さんと一緒の子供達で溢れ返り、むしろ、都会より密な状況になり、公園に近付くのが憚られるほどだ。コロナ禍にも関わらず皆幸せ一杯と言う顔をしている。
 

 今、東京では晴海フラッグが話題である。魅力は、80m2と広い3LDKと広々とした緑一杯の公園だろう。晴海フラッグに魅力を感じる人は日本の都市の未来を見ているのであろう。稲城地区の向陽台も同様のコンセプトで開発された地区である。3LDK 100m2を基準としてマンションが設計、建設された。確認した訳ではないが、地区全体のマンションが3LDK100m2を基準とし建設されているのは稲城市向陽台地区だけだろうと思う。また、戸建ても2000年以前に販売された区画は向陽台、長峰地区では200m2以上の敷地面積がある。

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 緑が多く、敷地に余裕をも持ってマンションや家が建てられている。公園も多く、各地区にそれぞれ大きな公園がある。晴海フラッグと同様だが、そのスケールは桁違いに大きい。海は見えないが、豊かな山の風景が心を癒してくれる。

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 この風景は長峰中央公園から西へ続く、約1Km続く長峰中央通りの歩道の風景である。歩道の両側に雑木が茂り、まるで森の中を歩く様だ。私の最も好きな稲城の光景である。一般の並木道と異なり、統一性は見られないが、まるで森の様な豊かさがある。柿、びわ、杏、アーモンド、栗等の果樹も育ち、果実の収穫は早朝散歩の楽しみだ。

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 果実を求めて様々な野鳥が寄ってくる。私はその後、長峰地区の戸建てに引越したが、庭にも多くの野鳥がやってくる。写真のメジロ、ムクドリ、アカゲラ、スズメ、山鳩、オナガドリ等々。公園には時々雉が姿を見せる。特に稲城は鷹の一種であるチョウゲンボウが有名だ。親水公園の上谷戸大橋の橋桁に毎年子育てのために巣を作る。チョウゲンボウを撮影しようと多くのカメラマンが屯する。

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 この様に自然環境に恵まれた公園は東京、日本には沢山ある。稲城の公園はどこも規模的には見るものはない。しかし、多摩ニュータウン稲城地区の素晴らしいところは緑が身近にあり、街自体が自然豊かな公園の様である事だ。

 昭和バブルが崩壊した後は徐々に都心回帰の傾向が強まり、郊外のニュータウンは人々の関心を失ってきた。しかし、今コロナ禍により生活様式が大きく変化し始めている。在宅勤務が一般化し、出勤日数が減れば、通勤時間の長短はそれほど大きな意味を持たず、逆にそれにより生まれた余暇をいかに家族と過ごすかが重要になってくるだろう。32年前に感じた日本の都市の未来が今、コロナ後のあたらしい世界と共にこのニュータウンで実現するかもしれない。
 マンション購入のブログを読めば皆マンション購入の基準は資産価値だと言う。それは間違いではないだろう。しかし、最重要な基準であってはならない。本当に大切な基準は家族の幸せであろう。稲城は東京で最も緑の多い街に選ばれたことがある。しかし、住みたい街の様なアンケート調査でランクインしたことは一度もない。殆ど、脚光を浴びない地味な街の印象だ。しかし、家族の幸福度のアンケートがあればきっと上位にランクインするだろう。
 しかし、問題点もある。それは都心へのアクセスだ。通勤には京王相模原線を使うが、若葉台駅から新宿まで昼間は30分足らずで行けるが、通勤時間帯は50分近くかかる。これは、電車が渋滞し、ノロノロ運転になるからだ。これにはかなりフラストレーションがかかる。正に痛勤だ。しかし、現在電車の渋滞を避けるため、立体交差の工事が進められている。調布から仙川までは既に完成しており、現在仙川から笹塚までの工事が行われている。2022年度に完成予定で、これが完成すれば、新宿まで上下複複線化により通勤時間帯でも30分程度で新宿に着くことができるであろう。

 コロナも人々の新しい生活様式と幸せの確立の契機になれば悪いことばかりではない。そして稲城が未来都市のモデルになればと期待に胸を膨らませながらコロナと戦っている。

#この街がすき

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