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辺境者は朝のルーチンから逃れて

どうりで風が吹いている
どうりで心が揺れている
だから 歩く歩幅は正確に
視線はアパートの二階部分目安に顎を引き
私は猫背を改める

昨晩の雨が新緑の匂いを遺す
火事で焼けた家が解体される音を横切り
昨日までの焦げ臭い履歴を消して 地下鉄の駅へと向かう


電車に乗る時は先頭車両の一番前
運転席の窓ガラスに映る 闇の向こうの私
重なり合うもの 重なり合わぬもの
一つのはずの私が分断される
この先は一人でいかなくては 奈落の底へ

車内に響く機械のノイズは秩序の外へ
私は辺境者として共同体の外へ
できれば 今日はノイズに合わせて口笛吹いて
私の境界の内へと取り込む心の旅路 

蚕のように言葉を食んで糸を作る ロシア人形のように入り子の世界を生きてきた 細胞レベルの生死が生み出すメランコリー
「全てのシステムは生き残り、成長し、変形する」と誰かが言った

憂鬱は闇を作るが システムは変形すれば光を作る 

変形はこれまでの秩序の崩壊と新しい秩序の誕生 

そうはいっても怖いし悲しい そうやって どうにかこうにか 世界とつながり生き延びた できれば 同じ糸ではなくて 異質な糸も取り込んで私の身体(システム)は成長する

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なのに 最近 同形同質のechoの声に耳を傾け 無限ループに恋い焦がれる
昨晩 動画で見た フグの毒で遊んでいるイルカ達よリ一人堕落して寂しい
繭に覆われたまま 成虫になることを放棄して 胎児に戻る夢でもみるのか


もしも この世界より高次元に住む者がいるのなら どうか私を裏返してみてほしい 重なるものと重なり合わぬものを縫い合わせてまだ見ぬ世界を作って欲しい

いずれは 境界というものが無くなるのなら 私の魂をCPUに組み込んで機械に取って代わりたい 身体という構造にとらわれることなく光の早さに近づけるのに それでも鉄は錆びつき滅んでしまう 

ああ 私はどこの星の人

まだ この世に魔界が存在していた頃 永遠の命は死と同義であることを教えてくれた人がいた

職場のある駅をやり過ごすと奈落の底から 光差し込む地上の駅(ほし)へ

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