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むかしかいた (2006-2008)

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むかしかいたやつ
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記事一覧

くれはす

 乾いた空から真直ぐに落ちてくる日の光が、濡れ鼠色のブロック塀を、くっきりした影に塗りわけている。清爽な冷ややかさを含んだ風が、アスファルトの道々を隅々まで吹きぬけ、女性の重くじっとりと垂れた髪を揺らす。

 道端を足早に歩いていた女性は、背中の大部分を覆い隠す黒髪を荒くかきあげた。前方の道にぼんやりと焦点を合わせている、太い縁眼鏡の奥の瞳は、目尻に集まった細かい皺の中に赤く潤んで佇んでいる。

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毒虫(2007サークル冬合宿用)

「毒虫」

 グレゴール・ザムザはある朝、なにやら胸騒ぐ夢がつづいて目覚めると、ベッドの中の自分が一匹のばかでかい毒虫に変わっていることに気がついた。
「いやはや!」ザムザは叫んだ。「これは困ったことになった!」
 ザムザはおそるおそる、布団を体の上から取り除けた。その布団をつかむ手すら、名状しがたい姿に変貌している。ザムザはくらくらしてくる頭を軽く左右にゆすった。唾を飲みこむと、身体の中で、内臓

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カグラデナカル公園(2006秋、文学フリマ販売誌に投稿)

 電車から降りると、襟首つかまれ地面に叩きつけられた。

 あれよと言う間に目隠しされて、手首を縛られ引ったてられる。何度も転げ落ちそうになりながら、階段を降り改札を抜け、ずんずんずんずん歩かされた。ようやく目隠し歩きに慣れた頃、突然膝を後ろから蹴られ、座りこんだ。目隠しを外される。

 目前には、歪んだ銀色の板と、それに映る自分の呆けた顔があった。恐る恐る周囲を見回す。そこでようやく、ここは公園

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