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月と六文銭・第十四章(49)

 工作員・田口たぐち静香しずかは厚生労働省での新薬承認にまつわる自殺や怪死事件を追い、生保営業社員の高島たかしまみやこに扮し、米大手製薬会社の営業社員・ネイサン・ウェインスタインに迫っていた。
 オペレーション・パートナーのデイヴィッドとの打合せの時間になっても彼との連絡が取れない。何かおかしいと感じた都は彼がいるはずの部屋を訪ねたが、想像していなかった姿で彼を発見した。

~ファラデーの揺り籠~(49)

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 都のオペレーション・パートナーのデイヴィッドだってトレーニングを受けた工作員、簡単に格闘で負けるとは思えないが…。
 涎と鼻血が顔から流れ、シャツについていた。ズボンは小便が流れ出てしまったために股間の部分から膝までが濡れていて、少し臭いを発していた。
 首の血管で脈を確認したが、完全にダメだった。でも、どうして?誰がこんなことをやったのか?ウェインスタインが何かに気付いたの?こんなことをしておいて、平気な顔をして私と朝食を楽しんだというの?

 都は"業務用携帯"を取り出して、本部にクリーナー手配の連絡を入れ、扉の札を"起こさないで"に架け替えた。
 40分程で来るというので、クリーナーが来るのを待った。
 怒りが湧くのと同時に、ウェインスタインがやったことなら、自分のことをどれだけ知っているのかが分からないのも懸念点だった。自分のチェックインと同時にヴィッドもチェックインしていたら、自分も疑われるが、ヴィッドは彼らがチェックインした日、つまり自分のチェックインよりも前から居るので、二人の関係を疑われることはないと思っているが…。

 都は部屋の中を確認した。メインとなるコンピューターなどは都の隣の部屋に置いてあったから盗まれてはいないが、デイヴィッドは監視状況をモニターできるよう、画面を共有するためのノートPCを持ち歩いていたはずだ。あれを立ち上げたら、オイダン、ウェインスタインの部屋に加え、自分の部屋の監視カメラの画像が表示されてしまう。
 勘の悪い人間でも私が関係者だということはすぐに分かるだろう。監視対象か監視者か、それはすぐに分からないにしても、ファーマ社員ではない私が監視対象になっていることから、何かを疑うだろう。

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 ウェインスタインもオイダンもどうして私が監視されているのか、初めは分からないだろう。しかし、ライバル社のファーマ社員でもなく、交渉先の官庁側の人間でもないとすると、二人を監視している側の人間だということに気が付くだろう。そうなるとヴィッドを殺した人間は私も狙ってくるだろう。
 どうしよう、今日の午後、ウェインスタインに会うことにしてしまった。しかも、ベッド・インを求められている…。

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田口静香の寝物語がいよいよ佳境を迎えたかと思いきや、意外な人物の関与が状況を複雑にしていく。 CIA工作員・田口静香が担当した危険なアサインメントの第四部に突入!

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