アフタヌーンティー(横浜編)
武田は好きな塩野七生の本を読んでいた。
のぞみは勉強していたが、顔をあげて週末のデートプランを提案し始めた。
「ねえ、次の土曜日、横浜でアフタヌーンティーはどうかな?」
「お、いいね、お目当ては?」
「横浜のYカフェでイチゴのアフタヌーンティーがあるの」
「お、久しぶりだね、横浜方面」
「でしょ?!予約していい?」
「もちろん」
「ありがとう!すごい楽しみ♥」
「僕もだよ」
「そこはイチゴのウェルカムドリンクとティーが25種類あるの」
「それは中々のラインアップだね」
「そう、哲也さんの好きな中国茶が10種類もあるのよ」
「それは嬉しいね」
「ねぇ、あの、新しいワンピース着てっていい?」
のぞみの視線は窓の外の自宅方面に向けられていた。先日のデートの時に夏のノースリーブ・ワンピースを買ってもらっていたのだが、「デートの時に着たいからまだ着ない」と言って自宅のクローゼットに大事に仕舞ってあったのだ。
「もちろん、可愛いと思うよ」
「ありがとう。
それでね、前の日、美容室に行きたいんだけど、会社の後に行っていい?」
「行っておいで」
「ありがとう。
ただ、髪型を崩したくないから、そのまま帰りたいの」
「ん?」
武田は「どういうこと?」という顔をした。いつもならそのまま「新しい髪型、可愛いでしょ?」と見せに来るのに。
「せっかくきれいにしてもらったから、デート前に崩したくないの」
「ほぉ、なるほどね、分かった」
「ごめんなさい。
本当はすぐに見せたいけど、ちょっとアップとかカールを入れてみてそのままデートに行って、哲也さんをびっくりさせたいの」
武田はニンマリ微笑んだ。のぞみがそういう可愛らしさを全然失っていないところが好きだった。
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