月と六文銭・第十四章(14)
田口静香の話は続いていた。厚労省での新薬承認を巡る不思議な事件の話に武田は引き込まれ、その先の展開に興味を示していた。
パイザーの交渉役2人は東京の夜の生活を満喫していたが、スペシャリスト・ウェインスタインは女性との関係には慎重だったようだ。
厚労省の服部昌子事務官はウェインスタインから刺激も受けていないのに体が反応したことに戸惑っていた…。
~ファラデーの揺り籠~(14)
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米国側から新薬承認事務を見た場合、ファーマ復権に貢献しているのだから、ありがたいということになる。しかし、その過程で人が殺されたりしているのは穏やかじゃないし、そもそもこの特殊能力を持った人物はどこから来たのか、そして、米国に牙を向けないかが懸念材料となります。
私ともう一人が投入されたのはこうした理由からです。私は厚労省のビルに潜って、近くから見ること、もう一人はライバル・ファーマの社員として赴任してきたことにして、在日米国人社会に入り込んで情報を収集することでした。
パイザーの二人は六本木の高級ホテルに投宿して、毎晩クラブに出掛けてはキレイどころを持ち帰って楽しんでいたが、米国人が日本に来てハメを外して羽根を思いきり伸ばすのは珍しくないから、定期的に連れ出すホステスなどがいないかをチェックしました。
オイダンは律儀に毎晩違うホステスを連れ出していた。気前がいいのだろう、どのホステスからは文句も苦情も愚痴も出てきませんでした。外国人を相手にすると、大抵は変なことをされそうになったとか、薬を勧められたとか、複数プレイになりそうになって逃げてきたとか、密室ならではの出来事が起こって評判が悪いものだが、オイダンは紳士なのか、宿泊しているホテルの最上階のバーで少し飲んで、相手が納得したところで部屋に連れて行き、ごく普通の行為を楽しんでいたそうよ。
ウェインスタインはどうかというと、テーブルで付いてくれたホステスをドキドキさせて、そのホステスが「抱いて欲しい」とか「入れて欲しい」とかと思ったところで帰ってしまうのだった。
ここでも手も触れず、何か薬を飲み物に入れたのでもなく、女性の目を見つめ、「目力」だけで女性をその気にさせていたようだ。
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