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アフタヌーンティー(横浜編)-2

 翌週の土曜日、武田とのぞみは横浜で待合せた。

 のぞみは前の晩にセットしてもらったヘアを武田に見せたくて、サロンから自宅に戻り、朝自宅から出てきたのだ。もちろん、先月買ってもらったノースリーブのワンピースを着て、足下は夏に向けて準備していたキラキラしたストラップのサンダルを履いて。

「お待たせ~!」

 のぞみはわざわざ武田の死角から近づいて、声をかけた。
 武田はびっくりして、拳闘の構えをしようとしたが、のぞみの姿を見て、一瞬にして顔から緊張感が消え、デレデレした顔になった。

「どう?」
「どうって?」
「可愛いとか、きれいとか、似合っているとか、似合ってないとか、何かないの?」

 のぞみはちょっと心配になった。武田は大らかな性格で、のぞみを甘やかしてくれていたが、意外とストライクゾーンが狭かった。だからほかの子に目移りしないのだが、好みがはっきりし過ぎていて、難しい時もあった。

「いやぁ、えぇ?最高じゃないか、のぞみさん」
「あぁ、よかった!
 この髪、かなり冒険したから、哲也さんが気に入らなかったら、どうしようかと思って。
 あと一か月はこの髪型だからね」

 武田はぼぉっとしばらく恋人・三枝さえぐさのぞみを眺めていた。きれい、可愛い、素敵、チャーミング。言葉はいろいろあるけど、どれもピンとこないし、口にしてもしっくりこない。

「のぞみさん、それは流行はやりの女優の髪型か何かなの?」
「ふふふ、実は昔のアルバムを見ていたら、ママの若い頃の写真が幾つかあって、見たことがない髪型があったの」

 武田はどこからこの可愛さというか、チャーミングさが出てきているのか、必死に考えていた。

「それでね、今、私はかなりママに似ているらしいから、親戚のおばさまたちによると、同じ髪型にしたら可愛いかなぁ、と思って美容師にお願いしたの」

 ママに似ている。のぞみの母は自分と同じ世代なのは確かだが、トレンディドラマのヒロインのような髪型は懐かしいと感じるものだった。

<そう、懐かしい感じがする>

 武田は漸く探している言葉が見つかって安堵した。のぞみは自分の母のイメージに髪型を整えてもらったのだ。武田達の世代がトレンディドラマで見ていた女優たちのような髪型を周囲の女の子たちが真似ていた時代だ。
 アイドル歌手の「○○ちゃんカット」もあったが、バブル時代の派手な髪形、前髪が垂直に立っているような、今見たら若者が笑い転げるような髪型が武田の若い頃はきれいなお姉さんたちのトレードマークだった。

「行きましょ!」

 いつものように、のぞみはスッと手を伸ばして、武田の手を取り、歩き出した。

「Yカフェはこっちよ」

 そして、いつものように、のぞみが武田を操縦して、お店に辿り着いた。

「予約した三枝です」
「おまちしておりました。
 ハーバービューの席を用意してあります」

 のぞみが足取りが軽く、周囲から見たらルンルンという感じで店員さんについて、港の見える席に向かった。

「奥に座ってもいい?」
「いいと思うけど、港を見るならこちらの席の方が眺めはいいぞ」

 そう、武田なら、席を横に向けて設置して、どちらに座っても港が見えるようにするのだが、そうすると窓側に設置できるテーブル数が1/4くらいになってしまう。今のように窓に対して垂直に並べるなら、より多くのテーブルが並べられて、より多くの客を入れられる。

 店員さんがウェルカムドリンクとセイヴォリーを持ってきて、説明をしてくれた。

セイヴォリー

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八反満
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