クリエイターの夢を後押ししたい。マンガボックスの経営企画とは〜経営企画室長・依田拓郎さんインタビュー〜
2013年から提供を開始したアプリ「マンガボックス」。
有名作家の人気作から新進気鋭の話題作まで、枠にとらわれない幅広いラインナップを擁し、マンガボックス編集部オリジナル作品の『ホリデイラブ~夫婦間恋愛~』『にぶんのいち夫婦』はTVドラマ化、週刊少年マガジン編集部作品の『恋と嘘』はアニメ・映画化するなど数々のヒットコンテンツを生み出してきました。
そんなマンガボックスで働く様々な社員にインタビューをする本企画。
今回は経営企画室・室長の依田拓郎(よだ たくろう)さんが登場。マンガボックスではサービス開発から編集と幅広いキャリアを積み、現在は会社の指針となる経営企画室の室長として活躍してます。そんな依田さんが率いていくマンガボックスは、これからどのような未来を描いていくのでしょうか。
自分が大好きだったエンタメを、今度は作る側から携わりたい
──依田さんは現在、マンガボックスの経営企画の代表としてご活躍されています。どのような経歴でマンガボックスに入るようになったのでしょうか。
依田さん:学生時代から、事業を作っていきたいという思いと、エンタメに携わりたいという思いがあり、マンガボックスの前身であるDeNAに入社しました。入社後は海外向けゲームの部署に配属され、シンガポールやベトナムに赴任してゲームの開発や運用の仕事をしており、帰国後どの部署にいこうかというタイミングで、マンガボックスにジョインすることになりました。当時はマンガボックスができて、1年半が経ったころだと思います。マンガという自分自身も好きだった領域の事業に関われることがとても楽しみでしたね。
──入社以来、一貫してエンタメに携わりたいという背景には特別な思いがありそうですね。
依田さん:そうですね、昔からゲームやマンガ、アニメが好きで、すごく楽しませてもらった経験があって、エンタメは自分にとって身近な存在だったんです。だから、いつか自分もエンタメを作る側に立って、みなさんの心を動かすような作品を生み出せたら素敵だなという思いがありました。
今でもエンタメは大好きで、例えばこないだもニコニコ動画が15周年を迎えて、マンガボックスの会社のメンバーと当時の思い出を話しながら、時代を感じ懐かしんでいました(笑)。
──マンガボックスに入ってからは、どの部署に配属されたのでしょうか?
依田さん:最初はサービス開発の企画・進行を担当していました。動きとしては、マンガボックス内の電子書店機能の立ち上げために、新機能の企画や開発進行、またマンガボックスでより多くの作品をお届けすることができるように、出版社さんのデジタル担当の方とお話をさせていただいたりということをしていました。売上数百万円からスタートして1年くらいでチーム全体の力で数十倍規模に成長させることができました。
──サービス開発にはどのくらい在籍していたのでしょうか?
依田さん:ちょうど1年くらいでしょうか。そのあとは実際にコンテンツを作る側に関わってみたいという思いから、編集部に移りました。編集部では0から作品の立ち上げを行ったり、自分たちの作品を書店さんに販売していたりという仕事をしていました。ありがたいことに「ホリデイラブ~夫婦間恋愛~」という作品の二人目の編集者として、作家さんの生み出された作品が読者さんに届き、その先にドラマ化していく、という経験もさせていただきました。2-3年ほど編集として携わったのちに、現在の経営企画の方に入りました。
目標となる夢を決めて、そこに向かって進む道を作っていくワクワク感がたまらない
──経営企画は具体的にどういった業務をしているのでしょうか?
依田さん:経営企画の仕事としては2つあります。
1つはこれからの活動に向けて、法人としての骨格となるコーポレート機能を整備することですね。「会社」という大きな組織の基礎となる部分なので、経理や人事、法務など、各部門の専門家の方の力をお借りしながら、事業部のみなさんと同じ方向を向いて仕事を進められるよう動いています。
2つ目は、その骨格を元に会社の未来図を、チームメンバーや社員のみなさんと一緒に作っていくことですね。ディスカッションの中で、事業部のみなさんが叶えたい夢の解像度を一緒にあげていったり、目の前の連続的な成長だけでなく長期的に会社として何をやっていくのかということを考えていくことが、私たちの仕事になってきます。
──具体的にはどのような業務になるのでしょうか?
例えば、事業計画や中期経営計画の策定のプロジェクトがあります。事業部のみなさんが達成したい目標を伺いながら、経営企画として中長期での経営としてのあるべき姿を一緒に言葉と数字に落とし込んでいく。そうすることで、叶えたい夢にどうたどりつくのか、という解像度をあげていき、事業部・経営陣の目線を合わせていく、というような仕事があります。
その他にもコーポレート領域での課題としては、例えば新しい会計システムを導入するというプロジェクトを進めています。それにはマンガボックスの経理担当と、TBS・DeNA両社の経理部のみなさま、外部でお願いしている顧問会計士・税理士の方たちと一緒に、財務会計と管理会計の両面から、法人として必要となる財務数値や、経営と事業計画をウォッチしていくために必要となる数字の出し方、そしてみんなが使いやすいシステムとするにはどうしたら良いのか、といった論点を考えていたりします。
──単純に数値の結果が出ればいいというわけじゃないんですね。
依田さん:その数字やシステムを必要としている人たち全員がわかるようなものでないと、組織としては使いづらいと考えているので、単純な数字ではなく、そこに意味のある、命がこもっているような生きた数字や計画を共有していきたいなと思います。
──経営企画の面白いなと思うところはどこですか?
依田さん:面白いなと感じるところは、会社の未来図を自分たちで描いていけるということです。目標となる夢を決めて、そこに向かって進んでいく道を自分たちの手で描いていく感じ、そして実際にその道を進んでいく感じがワクワクするし、時にはうまく行かず途中で道を描き直すこともありますが、それも含めて面白いなと思います。
──今マンガボックスで解決していきたいと考えている課題やマンガボックスのビジョンを教えてください。
依田さん:マンガ作りのバリューチェーンにおける、制作・編集部分のアップデートを進めていけたらと考えています。業界を見てみるとテクノロジーにより、バリューチェーン上の読者さんに作品をお届けする配信部分はここ数年でかなり変化が進んでいると思うのですが、制作・編集の部分についてはまだ取り組める領域があるのではないかと考えています。
──具体的にどういうことでしょうか?
依田さん:例えば社内で「コミッカー」と呼んでいる作家さんのアシスタントさんを集めたり、アシスタントの方のマネジメントの面をマンガボックスで行っていくという制度です。従来の進め方ですと、作家さんは作品の構想を考えたり作ったりしながら、自分たちでアシスタントさんをマネジメントの上、作品作りをしていかなければならず、作家さん一人にかかる負担が大きいと考えています。そこで、そのアシスタントさんのマネジメント部分をマンガボックスがサポートし、作家さんと分業することができれば、作家さんの負担を軽減することで作家さんが作品の構想を考える時間も増え、制作自体をスピーディーに進めることができ、読者さんに面白い作品をより素早く届けられるのではないかと思っています。そうすれば作品のPDCAサイクルも早めることができ、作家さんがさらにトライアルできる回数を増やすことにもつながります。今はその運用の構築を進めているところですね。
──それは面白い取り組みですね。
依田さん:自分も編集部にいたときに、作家さんの隣で編集をしていた経験があって、作家さんのやることの多さを目の当たりにしてきました。命を削って1つの作品を作ってくださっている作家さんの姿を僕は見てきたので、少しでも作家さんがクリエーションに集中できるよう環境が作れればいいなと思い、今は動いています。
──経営企画をやっていく中で、何か印象的だったことはありますか?
依田さん:やはりDeNAから分社化し、TBSからの出資を受け、合弁企業化していく一連のプロジェクトでしょうか。社長の安江さんと一緒に進めていったのですが、この過程では多くの方と出会い、経営と事業両面で多様な論点を検討していくという大変なプロジェクトでしたが、たくさんの方のご協力のもと、最終的には新会社の株主となっていただいたTBS・DeNA両社が同じ方向を向いてマンガボックスをサポートしてくださったため、いいタイミングで非常に前向きに進められて良かったなと思っています。
──分社化したマンガボックスに対して、どのように感じていましたか?
依田さん:新しい領域に踏み込んでいける可能性の強さを感じました。DeNAから分社化するにあたって、業界に対してどのような貢献をしていくことができるのか、ということをずっと考えていたんです。そもそもマンガボックスは、マンガアプリの黎明期に、マンガアプリのパイオニアとして市場を広めることに挑戦していて、突き進む強さを持っている会社だと思っています。ですから今は、先にお話したマンガ作りのアップデートに加え、TBSさんと協力をして、マンガという垣根を超えて、新しい視点からマンガを生み出していくことに可能性を感じています。これからのマンガボックスの動きが、また次の領域でのパイオニアとして影響を与えることができたら嬉しいなと思っています。
「夢」をかたちにする、これからの未来図
──依田さん自身の、今後の展望はありますか?
依田さん:そうですね。過去の自分と同じように、自分たちが生み出した作品が読者さんの心を動かすことができれば、こんなに嬉しいことはないなと思います。僕は過去に何度もマンガやエンタメに救われて、心を揺さぶられたことがありました。これからのマンガボックスの作品も、僕と同じように、誰かの心に触れられるようなものになればいいなと思っています。
また、作家さんの夢をもっと支えていきたいですね。夢って言葉になってなかったり、数字にはなかなか表しづらいものだと思うんです。それを僕たちが言語化や、数字に落とすお手伝いをさせていただいて、一緒に叶えていくことができたら嬉しいなと思います。これは今まで多くの人たちと関わってきた経験があるからこそ思えることです。
──そんなマンガボックスには、どんな人に来て欲しいですか?
依田さん:エンタメが好きだったり、クリエイターの方をリスペクトする気持ちをお持ちの方は、マンガボックスに向いているんじゃないかなって思います。ものづくりの現場を近くでみてきて、何かを生み出すということは苦しさも伴うということを実感しています。ですので、クリエイターのみなさんに対して、リスペクトの気持ちを持ちながら、支えることができるかどうかが、大切かなと思います。