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あなたに首ったけ顛末記【長編小説】

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『異能もの現代ファンタジーラブコメ』女子向けライトノベルなお話です。お口に合いそうでしたら、ひと口だけでもいかがでしょうか?note独占配信(笑)&全話無料!不定期更新で連載中で…
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#小説

あなたに首ったけ顛末記<その1・はじめまして、首フェチの生き霊です>【小説】

あなたに首ったけ顛末記<その1> ◇◇はじめまして、首フェチの生き霊です◇◇ (5200字)  彼の首に、触れたかった。  ネクタイがほどよく締まったワイシャツのカラーの上の、彼の肌が見える部分。のどぼとけ。あごや耳へつながるライン。うなじの、髪の生え際のところ。  電車で毎朝出会う彼。少し離れた場所から彼の姿をこっそり見るのが、喪女な私のささやかな楽しみだった。理想の体型。マスクで隠れていない目と眉の造作、髪の質感、ヨシ。あとでスケッチに起こすため、彼の姿を目に

あなたに首ったけ顛末記<その2・鑑賞は生に限るが生き霊はイタダけない>【小説】

あなたに首ったけ顛末記<その2> ◇◇ 鑑賞は生に限るが生き霊はイタダけない ◇◇ (7300字) <1>御崎十緒子は生を謳歌する (2670字)  まつ毛、長いなあ。    いつものように、首からあごにかけてのラインを舐めまわすように観たあと、私は彼のまぶたをぼんやりとながめていた。  彼の部屋のベッドの上。  横向きになって眠る彼の顔に向かい合うように、私も横になった。    触れることは、できない。  触れようとしても、弾かれてしまう。  だから、観てるだけ

あなたに首ったけ顛末記<その3・水野春臣の懊悩と金曜日が終わらない件>【小説】

あなたに首ったけ顛末記<その3> ◇◇水野春臣の懊悩と金曜日が終わらない件◇◇ (10300字) <1>水野春臣の金曜日・1 (1900字) 「なんだこれ……ヘビ、なのか?」  それを確かめた途端、俺、水野春臣は、思わず声を上げた。  ここは、十緒子の部屋。  さっきまで寝室の入口にいたヤバそうな生き霊は、去った……ベッドの上でベロチューかます、俺と十緒子を見て。  そのすぐあと、姿を現した、それ。    仰向けで脱力している十緒子と、十緒子に覆いかぶさって

あなたに首ったけ顛末記<その4・御崎十緒子のゴカイ☆フェスティバル>【小説】

あなたに首ったけ顛末記<その4> ◇◇御崎十緒子のゴカイ☆フェスティバル◇◇ (14400字) <1>御崎十緒子は誤解する(1) (4200字)  『鑑賞』が足りないから生き霊になりがち、というのは、実は詭弁だったりする。  水野さんが、命がかかっていることだからと仕方なく、渋々イヤイヤ提案してくれて、私は嬉々としてそれに乗っかって。  結局、『鑑賞』が生でも間接でも、問題はそこではなかったのだ。  だって、私がいちばん最初に願ってしまったのは。  手を伸ばした

あなたに首ったけ顛末記<その5・手は口ほどに物を言うし言われたがってる>【小説】

あなたに首ったけ顛末記<その5> ◇◇手は口ほどに物を言うし言われたがってる◇◇ (15400字) <1>御崎十緒子は眼鏡をかける (5300字) (十緒子様、あの女。魂のつなぎが、もうすぐ切れます。数多の邪を、引き連れて)  生き霊さんに警戒しながら、私、御崎十緒子のウチから水野さん、水野春臣の住むマンションへ移動した土曜日、彼の部屋のリビングで。  ソファのローテーブルの上、宙に浮かぶ白いヘビ……この世のものではない不思議なヘビ、しーちゃんが、ふわん、と白く

あなたに首ったけ顛末記<その6・日曜日には現実のいくつかを夢オチにしたっていい>【小説】

あなたに首ったけ顛末記<その6> ◇◇日曜日には現実のいくつかを夢オチにしたっていい◇◇ (19100字) <1>御崎十緒子の日曜日・回想を回想する朝 (3300字)  ああ、そうだった。  あのとき、私は……わざと、忘れることにしたんだ。  私、御崎十緒子宅で、水野さん、水野春臣とギョーザを食べたあの金曜日の、日付が変わって土曜日になった、深夜。  水野さんが帰って、後片付けを終えた私はすぐさまスケッチブックと鉛筆を手に取り、そのまま夜更かしして絵を描いていて

あなたに首ったけ顛末記<その7・吾唯足知:われはただ「足りない」ばかり知っている>【小説】

あなたに首ったけ顛末記<その7> ◇◇ 吾唯足知:われはただ「足りない」ばかり知っている◇◇ (15000字) <1>水野春臣は足りなかった (5500字)  俺は、ただ。  もう一度、確かめたかったのだ。    岡田主任を見送って彼女、御崎十緒子の部屋に戻り、その長い黒髪と華奢な背が視界に入ると。  俺、水野春臣はどうにも、その衝動を抑えられなかった。  手を伸ばし、後ろから抱きすくめ。  こいつのやわらかさや大きさを、直に触れることで確かめ。  床に転がして

あなたに首ったけ顛末記<その8・天国には酒も二度寝もないらしい>【小説】

あなたに首ったけ顛末記<その8> ◇◇ 天国には酒も二度寝もないらしい ◇◇ (15500字) <1>御崎十緒子は二度寝する・1 (5000字)  トットットッ、トットットッ。  トクトクトク、トクトクトク。    心地のよい、音。  気がついたら聴こえていて、でも飽きずに聴いていられる、このリズム。  その響きが私の体を気持ちよく震わせ、私は、まさに全身でそれを聴いている。  リズムが聴こえてくるそれは、あったかくて、適度な硬さで……この抱き枕、ヤバい。私は目

あなたに首ったけ顛末記<その9・どうしようもないわたしたちが落ちながら歩いている>【小説】

あなたに首ったけ顛末記<その9> ◇◇ どうしようもないわたしたちが落ちながら歩いている ◇◇ (15800字) <1>水野春臣は夜を歩く (4500字) 「ああ、お客様だったんだ……んん、お客様、じゃないのかな?」  カオコおねえちゃん、と十緒子が呼んだその女性は、人指し指を頬に当てながら小首をかしげてみせた。  十緒子とはまったく系統の違う、おっとりとした、だが華やかさを持つ美人。十緒子の姉というからにはいくつか年上なのだろうが、言われなければそうは見えない

あなたに首ったけ顛末記<その10・「逃げちゃダメだ」と云わないで>【小説】

あなたに首ったけ顛末記<その10> ◇◇ 「逃げちゃダメだ」と云わないで ◇◇ (16100字) <1>水野春臣はヘタレることにした (3200字)  十緒子の生き霊が自力で体に戻るのを、ただ見てることしかできなかった、土曜日。 「水野春臣くん、あなた。私の番いに、なりなさい」  マンションの前まで送られ、礼を言ってさっさと車を降りたところで。  車を降りてきた十緒子の姉、御崎華緒子に手を取られ、そんなことを言われた。 「ツガイ?」 「番い。あっ、ハナがいっ

あなたに首ったけ顛末記<その11・アテ馬は意外と馬に蹴られない>【小説】

あなたに首ったけ顛末記<その11> ◇◇  アテ馬は意外と馬に蹴られない ◇◇ (18000字) <1>御崎十緒子(状態異常:色ボケ) (5000字) 『……んん、私ねぇ。うっかり、切られちゃったの。ああもう、しまったな……あいつに、してやられるなんて』 『切ら、れた? ……あいつ?』 『怪異。お化け、って言えば、伝わる?』  姉の御崎華緒子、華緒ちゃんとの、そんな物騒な通話を終えてから。  私、御崎十緒子は即、チーフに電話をかけることにした。 「明日、なんで

あなたに首ったけ顛末記<その12・”〇〇”はゴールではない、人生は続く>【小説】

あなたに首ったけ顛末記<その12> ◇◇ ”〇〇”はゴールではない、人生は続く ◇◇ (17000字) <1>御崎十緒子は保留する (5200字)  と、いうわけで。  私、御崎十緒子と、彼、水野春臣は。  お互いの気持ちを伝えあい、お付き合いをすることになりましたとさ。  めでたし、めでたし。 << いままでのご愛読、誠にありがとうございました >>  ……で、終われたら。  こんなにいろいろ、悩まなくってもいいのに、なあ……。  朝の電車で、この至近距離

あなたに首ったけ顛末記<その13・イインダヨ? これでいいのだ!>【小説】

あなたに首ったけ顛末記<その13> ◇◇ イインダヨ? これでいいのだ! ◇◇ (15800字) <1>ある巫女の昔話・とをまりみっつの蛇 (4100字)  昔々、あるところに。  人と人との争い事から遠く離れた、穏やかな地があった。  山々に囲まれた起伏の多いその地は、田畑のため開墾するには難儀な土地ではあったが、山と森の恵みが、その集落に住む者たちの暮らしを緩やかなものにしていた。  その地でひと際高く美しい山、その中腹には、こぢんまりとした鳥居と社があっ

あなたに首ったけ顛末記<その14・耳目は貪欲に見聞し勝手に塞ぎこむ>【小説】

あなたに首ったけ顛末記<その14> ◇◇ 耳目は貪欲に見聞し勝手に塞ぎこむ ◇◇ (15900字) <1>御崎十緒子は掃除する(1) (3200字) 「んん、じゃあこの部屋はお願いしちゃうから。あとで見てあげるし、適当にやってみて~」  華緒ちゃんはそう言って、この部屋から出ていった。「ええ、ちょっ、待って華緒ちゃん、」と言いかけた私の目の前で、ドアが閉まる。間を置かずに、隣の部屋のドアが開く、きしんだ音が聞こえてきた。  築4、50年とかいう、年代物の二階建て