トレーニングの目的について
当たり前のことだが、トレーニングには目的がある。トレーニングを通して達成したい目標はあるけれど、それとまた別で目標に向かう過程の中で行うトレーニング一つひとつの中にも目的と目標がある。それぞれの目的を達成して目標をクリアしていくことが、大きな目標に近づく唯一の方法だ。
トレーニングはただ何かするだけでいいというものではない。目標があるなら、その目標に合ったトレーニングではなければ、目標を達成するかどうかはただの運任せだ。目標ということは、おそらく今の自分の実力を少し超えているはずだ。だからトレーニングで足りない部分を磨き目標に求められる能力を身に付けていくのだ。そうするために、目標から逆算して必要なことを一つひとつのトレーニングに落とし込んでいくのが目的、ということだ。
目標を達成するために様々な要素がある。トレーニングでそれぞれの要素を鍛えないといけないが、数が多いだけに一つのトレーニングですべての要素に対応することは不可能だ。もしそうしようとするならトレーニングの質がと減ってしまい目標に繋がらないものになってしまう。一つか二つの似ている目的を選び一つのトレーニングのテーマにすることが効率のいいやり方だ。毎日同じことを繰り返しているとマネリ化し、成長しなくなる可能性があるから日によって目標に必要な違う要素をその日のテーマにすることで、目標に必要な能力をバランスよく鍛えながらマネリ化を防ぐことができる。
これからは、一つのトレーニングの流れに集中していきたいと思う。日によってテーマが違ったりする中でも、目的に沿った質の高いトレーニングをするための基本的な流れは一緒なので、その流れをちんと理解しておく必要がある。
運動するときに、当然疲れる。始めたときは調子が良くても、最後までに間違いなく疲れが溜まり同じパフォーマンスを保つことが難してなってくる。必ずそうなることが分かるから、いちばん集中したいものをまだ疲れがたまっていない、トレーニングの最初のほうに持っていく。ウオーミングアップをしてトレーニングができるように体を準備させておいてからその日のメイントレーニングに入る。ここを練習と呼ぶ。なぜなら、スキルを磨くようなイマージで質を追求するからだ。目指すところは、質の良い練習を多くすることだ。
練習が終わってから次は遊びに入る。遊びといえば、不真面目なイメージを持たれてしまうかもしれないが、決してそういった意味合いではない。ここでいうあそびは、磨こうとしているスキルを自由な形で探るというものだ。言い方を変えると、練習のあとに疲れがたまり始めている状態で、練習と同じ質でトレーニングすることができない。もし、その状態で練習を続けようとするとパフォーマンスが低下して、ケガのリスクも高くなるし、悪いクセもつかないとは限らない。だからあそびでは、練習でやっていたスキルに関連する比較的にレベルの低い内容のものをする。たとえば、練習では、上半身の筋力を鍛えるためにベンチプレスをしていたとしたら、あそびではレベルが低くなるが、同じ大胸筋を刺激する腕立て伏せをする。腕立て伏せは、ベンチプレスより負荷が低いからケガのリスクも少ない一方で、大胸筋に対して刺激を与えるから目標である上半身の筋力向上にも貢献できる。おまけに、腕立て伏せがメイントレーニングであるベンチプレスの向上にもつながる。まさに一挙両得。
あそびが終わってからトレーニングの最後の段階に入っていく。これはチャレンジという段階だ。言葉のまま考えてしまったら追い込むようなイメージになってしまいそうだが、そういった意味合いとは少し違って、チャレンジは、さらに内容の難易度を低くするのにひきかえ強度を上げることを指しているだけだ。たとえば、先ほどの上半身の筋力を高める例でいえば、胸や肩の柔軟性向上を目的としたストレッチが当てはまる。場合によっては、より負荷の高いものを取り入れてもいいが、いずれにしろここであまり量を多くしない。イメージとしては、そこまでの練習とあそびでのトレーニングを仕上げるというような感じだ。胸と肩の柔軟性を鍛えることが、上半身の筋力を高めるために必要なトレーニングをしやすくするからまたもここでの内容が目標につながっている。
このようにひとつのトレーニングの中でも、一見で違った内容のものをしながら共通目標にしっかりとつながっている。このように工夫を加えながら筋力向上や柔軟性向上といった違った目的のトレーニングはただの「上半身の筋力向上」という目標を達成するための手段であることが分かる。その目標を中心しておくことで、トレーニングの内容を考えるときにすべきことが分かりやすく、さらに「準備、練習、あそび、チャレンジ」という流れに従って進めていくことで、様々な要素を鍛えながら目標につながる質の高いトレーニングが可能になってくる。