八咫烏シリーズ『烏の緑羽』『追憶の烏』感想 本が読めなくなった私が「面白い!」と思えた


今日、八咫烏シリーズ第二部『烏の緑羽』を読了した。
先日、前巻にあたる『追憶の烏』を読んで「面白!」と某死神のようになって買ってきてしまった。文庫本がまだ出ていないので、単行本の方。
単純に高いしでかいので単行本はあんまり買わないのだが、続きが気になってしまったので仕方ない。既に最新巻が出てるので文庫になるのもそう遠くはないのでは?と思ったが、今読みたい気持ちは止められない。
というか、今個人的な事情から「これがしたい!」とか純粋に楽しみに思えるものがなかなかなく、そんな中での「読みたい」という気持ちを大事にしたかった。金銭的にはあまり出費を控えたい状況ではあるため迷ったが買ってきたのだ。正直買ったあとちょっと頭を抱えたが、面白かった。なかなか本を読むことも出来なかったのだが、読み出してからはするする一日で読んでしまった。

そもそも『追憶の烏』自体、買ったのは結構前だったのだが、なかなか読む気が起きず放置していた。
単純に本を読むということ自体のハードルが高くなってしまっていて、昔は本が好きで貪るように読みまくっていたのが全然になってしまっていた。
なんかもう読み始めるのが億劫なのだ。読めば面白いのは分かってるのに、その気が起きずにスマホばっかり見てしまう。だいたい読みだしたらとまらないのに読み始めるまでが長い。
この間話題になった『何故働いていると本が読めなくなるのか』を買って読んだりもした。面白かったです。

そういう状態だったのだが、色々あって強かにメンタルを持ち崩しスマホを控えることにした。出来ているとは言っていない。
で、読まなきゃと思いつつ積んであった本を読む気になった。
大半の本は引越しの時段ボールに詰めてあったが、たまたま手に取りやすい場所にあったのも幸いして電車で読もうと持っていった。

で、読み出したらまあ面白い。スマホ見るより続きが気になる。乗り換えの間とか行き先についてもはやく読みたい。寝なきゃいけないけど読んでしまいたい。
小学生の頃本を読みながら帰ってくるので二宮金次郎呼ばわりされていたのを思い出した。
読み終わってそのままの勢いでこれまた放置していた番外編『烏百花 白百合の章』も読んだ。
そしてさらに第一巻『烏に単は似合わない』が読み返したくなって第二巻『烏は主を選ばない』も読み返した。

もともと第二部で作品の舞台である山内がえらいことになっていたので、続きが気になってはいたのだ。それ以上に気力がなかっただけで。
なんか漫画でもなんでも期間が空くと続き読むのに「読むぞ!」って気合いが必要になってしまうようになった。辛い。

『楽園の烏』ではえらいことになった後の山内(と雪哉)を今までの目線とは違う外側視点から見せられたので「いったい何が……」と思っていた。
そのえらいことになるまでの始まりが『追憶の烏』では描かれていた。
「続きが気になる」と「読みたくねぇ〜」が共存する気持ちになったのは久々だった。
後半はずっと「さ、最悪〜!」と思っていた。
今まで登場した重要人物が次々退場していくのにショック受けてる場合じゃない。後からもっと大きな衝撃が来る。
最高に最悪の伏線回収とタイトル回収の天丼だった。
こんなに「この女……」となるのはFGOのオーロラくらいじゃないかという勢いだ。

あの美しいファンタジーの舞台と思われていた山内がディストピる(ディストピア化するという意味)までの前日譚。
奈月彦の臣下、垂氷の雪哉が、博陸侯 雪斎という独裁者になるその始まり。
完全に覚悟を決めた雪哉を見た時、「化け物が生まれた」と感じました。生まれたというか、羽化したというか。今までもその片鱗はあった。
四家は自分たちの手で化け物を生んでしまったのかと思いましたね。
これは八咫烏シリーズの主人公格だった(あるいは作者が意図してそう思わせていた)雪哉ではなく、雪斎だと思った。

恐らくは作者の思惑通り意識から消えていた藤波の宮に、前巻では動向が分からなかった大紫の御前の末路も最初からこのつもりだったのかと思うと空恐ろしい。
色々喋りたいポイントが多すぎる。
(あせびにとって)都合のいい舞台装置でしかなかった藤波の宮とただのサブキャラだった滝本の関係性とか、とにかく恐ろしいラスボス的存在だった御前とか、死んでしまったあとからその人間性に触れて切なくなりました。

まあしんみりしてる暇もないんやけどな。
紫苑の宮と浜木綿がどうなったのか、長束は何を考えているのか、てか真赭の薄の娘?とか、情報の洪水。
最後の引きで「続きは?!」となって、シリーズを読み返したくなった。

作者である阿部智里さんは20歳の大学生の時に賞をとったとのことで、本当にどんな頭をしていたらこんなもの思いついて、しかも書けるのかと。
悪口みたいな言い方になっちゃったけど本気で感嘆しました。
そして今既にそれより年上になってしまったのにも関わらず何も出来ず何も学ばず何の役にも立たずの我が身の体たらくを省みてしまって落ち込む。
いや、自分なんかと比べること自体が間違いなんだけど。
メンタルをやって何もしていない状態なせいで余計耐え難いけど、そんな状況でも物語を純粋に楽しめたのは良かったと思う。続きが気になる!って感覚も忘れてたので。

面白い物語を読んで面白い!と思う喜びがまだ自分の中にあることを確認できました。
好きなものや趣味すら分からなくなりかけていても、面白いものは面白い。

本当は『烏の緑羽』の感想をと思っていたのにその前の話ばっかりになったので、『烏の緑羽』の感想は分けようと思います。

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