【幸せのままで、死んでくれ】
完璧な人生など、あるわけがない。
あるわけないが、自分の人生はそうやって仕立てあげられてきた。
この本は、いきものがかりの水野良樹さんが「清志まれ」として書いた小説です。
衝撃的なタイトル。私は惹かれました。
何だろう、徐々に引き込まれていく感じ。
4日ぐらいかけて読んだのですが、一回に読む量がだんだん増えていきました。
よっちゃん、いや、まれさんは本当に「書く」ことで人生を進んできているように感じていて。
今まではエッセイなどが多かったのですが、今回は小説。
作家デビュー作とは思えないぐらいの完成度の高さでした。
何となく、まれさん自身が反映されているような感じもして。
まれさんの暗いところとか、ドロドロとした感情とか。
私もまれさんに似ているところがあるので、決して明るい物語ではないけれど救われる部分がありました。
「幸せ」って何だろう?
と誰もが考えたことがあるだろうし、幸せになりたいと誰もが思うだろうと思います。
そして、この主人公は絵に描いたような「幸せ」をつかんでいる。
そして若くして死にます。
私は主人公が死ぬことができて良かったなと思いました。
本人にも止められない「幸せ」が加速していき、どうにもならないまま死ぬ。
もし、死ななかったら。
そちらの方が恐ろしいのではないかと。
私も常々、「挫折」していなかったらどうなっていたんだろうと考えます。
上手くいくばかりの人生。自分でも止められなくて、自分ではない誰かを演じているような気分。
幸せなのにしんどい。誰かに止めて欲しい。
そんな叫びを抱えていたような気がします。
きっと、主人公には「死」が救いだったのではないかと思います。
光があれば影がある。
そんな影の部分を抜き出したような小説でした。
そしてこの小説には楽曲が付いています。まれさんにしかできない業。
私は小説を読む前と呼んだ後に聴いたのですが、
読む前は「意外とかっこいい曲なんだな」
読んだ後は「心を搔き乱す曲だな」
と思いました。
人によっても、聞くタイミングによっても、印象が変わる曲だと思います。