民主的な学校をデザインする授業は、授業自体が民主的だった
↓帰国後に学びの場のデザインに挑戦したいため、参考としてアンケートを取っています。ぜひご回答ください!
ハーバード教育大学院での授業の振り返りのトリを飾るのは、春学期受けて一番心に残っている学校デザインの授業についてです。
"Building a Democratic School: School Design Workshop"という名前で、秋学期の授業やDeeper Learning Conferenceでもお世話になったリンダ・ネイサン先生による13週間の授業でした。
この授業の目的は、Boston Arts Academyの立ち上げやその他三つのNPOの創設の経験があるリンダ・ネイサン先生の指導のもと、自分のコミュニティに向けて学校や教育施設をデザインするという授業でした。
大学院を選ぶときに前年度の在校生とZoomさせてもらう機会があったのですが、彼女にオススメしてもらい、できればこの授業を取ってみようと、留学前から注目していた授業です。
初回の授業に行ったら既に同級生の半分は友達で、なぜかすごくご縁があると感じた授業でした。
授業では13週にかけて、課題と授業(アクティビティや学校訪問、ゲストスピーカーなど)を通して、色々な角度から学校をデザインしていきます。
最終週には教育大学院や授業でフィードバックをくれたゲストなどを呼んで、全員で展示会を開きました。
↓当日の展示会の様子を同級生がYouTubeにしてくれました
↓当日の様子は英語でリンダ・ネイサン先生のブログにも載っています
この授業は春学期の中で一番良かったと感じている授業なのですが、その理由としては「ハーバード教育大学院でないと体験できなかった!」と感じることが多いからだと思います。
今回私が感じた学校デザインの授業の醍醐味三点について紹介していきたいと思います。
グローバルな仲間とローカルなコミュニティについて考える
この授業について「ハーバード教育大学院でないと体験できなかった!」と感じている一番のポイントは、実際に学校を創設したことがあるリンダ・ネイサン先生と、世界中の色々な国から学校を創設したいという想いを持つ学生とつながりながら学校のイメージを具体化していける授業は、世界中に他にないと思ったからです。
まず、リンダ・ネイサン先生ですが、お忙しいと思うのに24時間以内に返信することを心がけているそうで、とてもありがたい先生です。
そして実際に学校を立ち上げた経験があるので、フィードバックも常に「絶対できる」というスタンスで色々指導してくださります。
やったことがある人にできると言われたらもうやるしかないよね!?という気持ちで、とにかくインスピレーショナルな先生です。
↓リンダ・ネイサン先生とオフィスアワーでお話しして感動したときのstand.fmです
ここに今年でいうと六つの別々の国で学校を創設したい学生が集いました。
文化や言語はバラバラで、意見が食い違うこともありますが、「今ない何かを生徒のために提供したい」という想いはみんな変わらず、とても貴重な仲間でした。
学校をデザインする最初の一歩として、それぞれがどういう物語をもとに学校を創りたいと思っているのか、どんなコミュニティとつながっているのか、そのコミュニティにはどんな声があるか、どんな声が聴こえていないか、ということを考えます。
お互いそこまで深く話すからこそ、出身国や地域が違っても、かけがえのない仲間になる機会があるのだと感じました。
輪になって、意見やフィードバックを聴く民主的な場を再現する
私が授業の形態として一番好きだったところは、授業で必ず全員が入る大きい円をつくらないと、リンダ・ネイサン先生に怒られるところです。
リンダ・ネイサン先生は民主的な学校を創ることを目標にしていて、そのためには民主制が毎日の現場で体現されることをとても重視していました。
私も学部のときに法学部だったので民主制について知識としては学びましたが、教授だけが一方的に説明する講義形式だったので、民主制を体感したとは言えなかったと思います。
自分の信念を思う、言葉にするだけではなく、常に行動として示すことの大切さと難しさを感じました。
民主的な場を創るために、授業の初回は自分の名前の由来を音にするゲームやチームビルティングのアクティビティから始まりました。
その後も毎回授業でSeed Conversationという、あるトピックについて数分ペアトークをする時間も設けられていました。
そして一番この輪になることの重要性を感じたのが、ゲストスピーカーが来て私たちの学校に対してフィードバックをしてくれたとき。
高校の先生と高校生がゲストスピーカーとして来てくれたことがあり、高校生に今通っている学校について思うことを色々と質問させてもらった後、実際に私たちのデザインについてフィードバックをしてもらいました。
大人でも子どもでも、意見を持つ個人として尊重して議論する。
そのことがこの円の場には表れていたと思います。
民主的なプロセスで全員で展示会を準備する
最後に民主主義を体現することについて学んだこと。
それは最後に迎えた展示会…の準備のプロセスについてでした。
同じ授業を受けている同級生24名で一つの展示会を創り上げないといけないのですが、国籍や背景も違ってそれぞれのニーズはバラバラ。
大人数で何かを決めると言っても、権限が強い人のもとでやることがもう決まっていて従うだけだったり、誰も責任を取ることができて流れてしまったり…と現実社会で実践するのはとても難しいことだと思います。
この展示会では一人ひとりのニーズも聴きつつ、全体として統一した展示会にするためにこんな合意プロセスを取っていました:
ここでポイントになったのは、「全員の前で」「反対の理由を述べる」ことです。
「全員の前で」説明することで発言者も周りもその場の雰囲気が分かり、多数決の票数だけでなく「反対の理由を述べる」ことで、その意見が独りよがりではなく、全体として良いものかどうかが判断することができました。
この方法で時間がかかったら結局多数決になってしまうのかなと思ったのですが、この二点のおかげで意外と時間を取らず、全員が参加する形で展示会の準備を進めることができて、自分にとっても経験と自信になりました。
最後に…
最後に、学校デザインの授業や展示会の内容について、6月にオンラインイベントを開催させていただきました。
展示会をやりながら「時差や言語の関係で日本の方に聞いてもらえないのは悔しいな」と思っていたので、実現して本当に嬉しかったです。
参加していただいた皆さん、本当にありがとうございました。
終了後も日本の公教育について、多様な人が学び合うコミュニティということなどについて、様々な感想やフィードバックをいただき、議論させてもらうのがとても面白かったです。
一番感想が多かった「聴けていない声を聴くこと」についてstand.fmでも話してみたので、こちらも良ければお聴きください。
興味を持っていただいた方は、また日本でもぜひお話できると嬉しいです。
今回デザインした教育施設については、noteの「MANABIのあゆみ」マガジン、そしてインスタグラムのアカウント (@manabi.learningspace) で引き続き発信していきたいと思うので、こちらのフォローもお願いします。
ここまでハーバード教育大学院の授業の振り返りを読んでいただき、ありがとうございました。
少しでも教育大学院の雰囲気や、どのように授業を選択したのかという選択基準などが伝わっていれば幸いです。
修士課程の大学院生としてのnoteはこれで終わりになりますが、これからも書くことは続けていくつもりなので、どうぞよろしくお願いします。