アサーティブコミュニケーションの実践

「〇〇さん、この企画書、明日の朝一番までに仕上げておいてもらえますか?」

終業間際、突然の上司からの依頼。すでに手一杯なのに…。でも、「申し訳ありません、実は難しいかもしれません」と言い出せないまま、つい「はい、頑張ります」と答えてしまう。

また、こんな場面もよくありますよね。

「前回お願いした資料なんですが、もう少し違う切り口で作り直してもらえません?」

具体的な修正ポイントも示されないまま…。

「方向性は事前に確認させていただいたのですが、どの部分を変更すべきか、もう少し具体的に教えていただけませんか」と伝えたい気持ちを抑えながら、つい「はい、承知しました」と返事をしてしまう。

ビジネスの現場では、自分の意見や立場を主張しなければならない場面が数多くあります。しかし、「相手との関係性を壊したくない」「断ると評価が下がってしまうのでは」という不安から、本来伝えるべきことを飲み込んでしまいがちです。

そして後になって「あの時、きちんと伝えておけば良かった」と後悔する…。

このような経験は、誰にでもあるのではないでしょうか。

本記事では、相手との関係性を大切にしながら、自分の意見もしっかりと伝える「アサーティブコミュニケーション」について、実践的なノウハウをお伝えします。


さあ、一緒に学んでいきましょう!


アサーティブコミュニケーションとは何か

アサーティブコミュニケーションとは、「相手を尊重しながら、自分の意見もしっかりと伝える」というコミュニケーションスタイルです。

一般的なコミュニケーションスタイルは、以下の3つに分類されます:

  1. アグレッシブ型(攻撃的)

    • 自分の意見を強く主張する

    • 相手への配慮に欠ける

    • 一方的な主張が目立つ

  2. ノンアグレッシブ型(受動的型)

    • 相手への配慮を重視するあまり、自分の意見を抑制する

    • 自己主張を避ける

    • 問題を先送りにしがち

  3. アサーティブ型(自己主張型)

    • 相手を尊重しながら、自分の意見も適切に主張する

    • 建設的な対話を心がける

    • Win-Winの関係を目指す

仕事の依頼シーンでよくある会話を例に、3つのコミュニケーションスタイルの違いを見ていきましょう。

【シーン設定】
月末の繁忙期、すでに複数の締切案件を抱えているBさんに対し、新規依頼をするAさん

A:「Bさん、申し訳ないのですが、来週の金曜日までに新規顧客向けの提案資料を作成していただけないでしょうか?」

それぞれのタイプの返答例:

アグレッシブ型(攻撃的)
「申し訳ありませんが、それは無理です。なぜこんな急な依頼をされるのですか? 私も手一杯な状況です。いつもギリギリでの依頼ばかりで困っています。もう少し計画的に依頼していただけませんか」

ノンアグレッシブ型(受動的型)
「あ、はい…。確かに他の案件もあるのですが…。なんとか…頑張ってみます…」

アサーティブ型(自己主張型)
「Aさん、ご依頼ありがとうございます。実は現在、月末の決算資料と来週火曜締切の商品企画書を抱えている状況なんです。新規案件も重要だと理解していますが、このままでは品質に影響が出る可能性を懸念しています。納期を再来週の水曜日に調整いただくか、または内容を簡略化するなど、何か良い方法を一緒に考えていただけないでしょうか?」

みなさんは、どのコミュニケーションスタイルが良かったと思いますか。

私は、相手の立場を配慮しつつも自分の意見はしっかりと伝えるアサーティブ型(自己主張型)のコミュニケーションスタイルに好印象をうけました。

ですが、実際のコミュニケーションにおいて、3つの分類にはっきりと分かれているケースは少なく、自己主張の度合いの大小、相手への配慮の度合いの大小、これらの2軸による分布で大きく4つのカテゴリーに分類されます。

4つのカテゴリー分類については、こちらの記事が参考になります。

ソーシャルスタイル診断とは?コミュニケーションに役立つ4タイプ診断法

リクナビNEXTジャーナルの記事から引用

アサーティブコミュニケーションの3つの基本技法

DESC法の活用

DESC法は、相手との建設的な対話を実現するために、4つのステップで自分の考えを整理して伝える方法です。

  1. Describe(描写する)

    • 現在の状況や問題を客観的に説明

    • 感情的な表現を避け、事実に基づいて伝える

  2. Express/Explain(表現する/説明する)

    • 相手の立場に配慮しながら、自分の感情や意見を率直に伝える

    • 「私は〜と感じています」という形で表現

  3. Suggest/Specify(提案する)

    • 問題解決のための具体的な提案や代替案を示す

    • 実現可能な選択肢を提示

  4. Choose(選択する)

    • 相手の反応に応じて、柔軟に対応

    • 建設的な解決策を一緒に見つける

アイメッセージの使用

アイメッセージとは、「私は〜」という一人称で、自分の気持ちや考えを主語にして伝えるコミュニケーション技法です。

アイメッセージの3要素

  1. 状況:具体的な事実の描写

  2. 影響:それによって生じる影響

  3. 感情:自分の気持ちや考え

基本的な会話の型

「(状況)のとき、(影響)となり、私は(感情)を感じます」

例:
「締切間近の案件が重なっている状況で(状況)、新たな依頼をお受けすると、既存の案件の品質に影響が出る可能性があり(影響)、私としては責任を持って対応できるか不安を感じています(感情)」

アイメッセージの比較として、よくユーメッセージという会話の型が取り上げられます。

ユーメッセージの特徴(避けるべき表現)

  • 「あなた」を主語とする

  • 相手を非難や批判する

  • 命令や要求を含む

アイメッセージの特徴(推奨される表現)

  • 「私」を主語とする

  • 自分の気持ちや考えを伝える

  • 建設的な対話を促す

適切な「No」の伝え方

アサーティブコミュニケーションにおいて、「No」を適切に伝えることは重要なスキルです。

「No」を伝える4つのステップ

  1. 相手の要請を理解していることを示す

    • 「ご依頼の重要性は理解しています」

    • 「お急ぎの案件であることは承知しています」

  2. 断る理由を明確に説明する

    • 具体的な状況や制約を説明

    • 客観的な事実に基づいて説明

  3. 代替案を提示する

    • 実現可能な別の方法を提案

    • 期限や内容の調整案を示す

  4. 誠意を示す

    • 謝意を表する

    • 今後の協力姿勢を示す

さらに、「No」を言う際には、自分自身の価値観や優先順位を明確にすることも重要です。

自分が何を大切にしているのかを理解し、それに基づいて「No」を伝えることで、自信を持って断ることができます。


実践のためのポイント

アサーティブコミュニケーションを成功させるために、次のことを意識しましょう。

  • 事前準備を怠らない

    • 相手に伝えたいポイントを整理する

    • 可能な限り、客観的なデータや事実を用意する

    • 想定される質問に対する回答を準備する

    • 相手が快く受け入れてくれなかった時のために、代替案を用意する

  • タイミングを選ぶ

    • 相手の状況や心理状態を考慮する

    • 必要に応じて、適切な場所と時間を設定する

  • 非言語コミュニケーションに注意を払う

    • 適度に相づちを入れ、話を真剣に聞いている姿勢を相手に伝える

    • 落ち着いたトーンと適度な声量で、相手に安心して聞いてもらえるようにする

    • オープンな姿勢を見せることで、相手が話しやすい雰囲気を作る

これらのポイントを意識して、実践を繰り返しましょう。

中には、こちらがアサーティブなコミュニケーションをしていても、相手がが攻撃な態度を示して、コミュニケーションがうまくいかないなんてこともあるでしょう。

そんな時、こちらも攻撃的なコミュニケーションで反撃をしたくなるでしょうが、その気持ちをぐっとこらえ、根気強くアサーティブコミュニケーションを続けることが大切です。


まとめ

この記事では、「アサーティブコミュニケーションの実践」をご紹介しました。

ビジネスの場面では、単なる主張の強さではなく、相手との関係性を維持しながら自分の考えを伝える能力が必要になってきます。

アサーティブコミュニケーションは、まさにそのバランスを取るための効果的な手法といえます。

アサーティブコミュニケーションを実践するために、まずは小さな場面から練習し、成功体験を積み重ねましょう。

そして、練習の際はとにかく失敗を恐れずにチャレンジすることが大切です。

練習したら、振り返りも大切です。何が良かったのかまたは何が悪かったのかを自分の言葉で理解することで、次の課題が明確になるため上達しやすくなります。

この記事が少しでもアドバイスになれたらと思っています。

それでは、学びを求めるあなたを応援します!

頑張ってください。

私の記事では、「学びを頑張るあなたを応援」をコンセプトに ・充実した人生のために必要な考え方や習慣 ・スキルのノウハウ ・効率的かつ効果的な学習方法 こちらの情報をお届けしたいと、記事作成を頑張っております。どうぞよろしくお願いいたします。