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何気ない優しさに溢れた日常が、一番愛おしい。

先週土曜日は、「天国」という舞台を見てきました。

入山杏奈さんがこの舞台に出演されるというネットニュースを偶然見て、
宮城県石巻市にあった劇場をモチーフにした作品だということもあり、
ちょっと気になってチケットを取った作品。
その前の週の土曜日に「October Sky」直前の水曜日に「ジュリアス・シーザー」を見ていて、1週間に3本劇場で観劇という、ずいぶん舞台三昧の1週間になりました(笑)

3日前に見た「ジュリアス・シーザー」とは真逆で、
リアルタイムに「今」の世相を描いた現代劇。
コロナ禍に揺れる劇場の今を描いた場面から始まり、3.11の津波ですべてを奪われた宮城県石巻市の劇場を巡る出来事を、震災前の場面から辿っていくという、テーマとしてはかなり重い内容に正面から挑んだ作品ですが、
だからといって終始重苦しい雰囲気になる、というわけではなくて。
むしろ、震災に襲われるシーンまでは、ずっと笑いが絶えない、コメディタッチな楽しい舞台でした。
だからこそ、震災やコロナといった出来事が余計に心に迫ってくるし、舞台上で演者さんが発するメッセージがダイレクトに響いてくる。

そしてなにより、震災・津波という出来事をこれだけ正面から扱う作品を、
仙台で上演するということ自体、大きなチャレンジでもあったはず。
カーテンコールで、キャストのみなさんが涙をおさえられずにいるのを見て、それだけ特別な思いをもって仙台公演に臨んでくれていた、ということがすごく嬉しくなったし、そんな光景にもぐっときました。


私がこれまで見てきた舞台って、
レミゼやジュリアス・シーザーみたいに「明らかに過去」の世界を描く作品か、
メリーヴェルやチャーリー・ブラウンみたいに「明らかに空想」の世界を描く作品が多くて、
そうするともう「非日常」の世界だと予め分かっているので、しっかり作品の世界観に入り込むことができるのですが、
ここまで「日常」「現在」に近い作品を見るのが、記憶をたどった限り初めてで。

現代劇って、妙に俯瞰して見てしまうというか、
自分もその時代を生きているからこそ、些細な所作や言動からも違和感を感じ取りやすくなってしまうと思うのですが、
そこはやはり「笑い」の力というか、精巧に再現された東北訛りの台詞回しも相まって、
ささやかだけどあたたかい「日常」の持つ幸福感が、余すことなく表現されていたなあ、と。
Twitter辿ってて見つけたこちらの方のツイートが、私の言いたいこともすべて表現してくれているように感じたので、貼っておきます。

辛いことも逃げずに描かれているけれど、この物語のキモはそこではなくて、そこにいたるまでの何気なくも幸せな毎日と、温かな気持ちのやりとりと、どんなことがあっても乗り越えて前を向こうとする力強さだと思います。積み重ねていく日々の愛おしさとさりげなくも大きな優しさ。

作品のフライヤーに書かれた言葉を、この投稿のタイトルにも引用させていただいたのですが、本当にこの言葉が全てだと思います。

何気ない優しさに溢れた日常が、皆様に伝わりますようにーー

しっかり伝わりました。とっても素敵な舞台でした。

日付変わって今日24日から大阪公演、12月には東京公演もあるようなので、ご興味ある方はぜひ!
http://takufes.jp/tengoku/


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