ペルノの究極のテイスティングとガロアの原稿、そしてアイリッシュの準備…
このところあまりに取材やミーティングが多く、さらにガロアの原稿執筆とその校正、ウイスキーコニサー教本の原稿、またコニサーの「コニサー倶楽部」の原稿等があり、ほとんど朝起きてから寝るまで、それらの作業に忙殺されている。ミーティングでは中国関係の人と会うことも多く、中国のウイスキーの勢いを感じることも多い。
もちろん来年のTWSC(第7回)では白酒のエントリーも行いたいと思っていて、私自身白酒の勉強も始めている。ぜひ来年は、中国のウイスキー蒸留所だけでなく、世界にも中国にしかないという、固体(個体)発酵の白酒の造りの現場を見たいと思っている。実はそうと知らずに、今から50年前、1975年から81年にかけ、私は西チベット、ラダック・ザンスカール地方に足かけ1年ほど住んでいたことがあり、そのとき六条大麦から造られるチャンというドブロク、それを蒸留したアラックを取材したことがある。
チベットの六条大麦は裸麦で、これを蒸してそこに直接もち麹を混ぜて、それをヤク(チベットの牛)の毛を編んだムシロに包み、地中に埋めるというやり方だった。これがまさに白酒の発酵方法と同じで、その後白酒はこのモロミを直接蒸留するが、チベットでは醸造酒として日常的に飲んでいた。
その麹は日本の清酒や焼酎が使うバラ麹と違ってレンガ状に固めたもので、チベットで私が見たものは、それを小さく砕いた小石のようなものだった。いずれにしろ液体(水)を使わず、穀物を粒のままこの麹で糖化・発酵させ、それを蒸留したら白酒ということになる。地中に埋めるのは酵母が酵素を嫌う嫌気性ゆえだろうか。とにかく分からないことだらけで、やはり現地に行って見るしかないのである。
そんなことを考えながら、10月4日の金曜日は銀座のシティークラブ東京で、ペルノリカール主催のスペシャルテイスティング。シーバスリーガル、バランタインのマスターブレンダーであるサンディ・ヒスロップ氏がわざわざ来日し、氏が選んだ5種類の長熟モルトを飲んで楽しむという、究極に贅沢なイベントだった。テイスティングしたのは、グレンキースの33年物、ミルトンダフの32年、ロングモーンの30年、そしてキャパドニックの30年、さ
らに同26年のピーテッドの5種類。ボトルの値段はトータルして、ざっと96万円というテイスティングだった。
どれもこれも甲乙つけがたい逸品揃いで、それでいてしっかりと個性を主張していることにも驚いたが、最後のキャパドニックのヘビリーピーテッドは参加者一同が、一番驚いたアイテムだったかもしれない。キャパドニックはグレングラントの第2蒸留所で、一時期、3回蒸留やヘビリーピーテッドなど、他のシーバスの蒸留所がやらない実験的な仕込みを行っていた。これはその当時の非常に貴重な原酒で、これほどスモーキーなスペイサイトモルトは珍しいかもしれない。
キャパドニックは2000年代前半に閉鎖され、敷地も建物も隣にあるフォーサイス社に売却されたことは周知のとおり。その後フォーサイスの成長に伴って取り壊され、現在は何も残っていないという、幻の蒸留所だ。そういう意味でも、もう二度と飲めないウイスキーとなっているのだ。貴重な機会を提供してくれたペルノさんとサンディさんに、感謝してもしきれない思いだった。
で、土曜日は朝からやはりガロアの原稿書き。アイリッシュのところが終わったので、ジャパニーズの厚岸、苫小牧、ウォータードラゴン、そして中標津のクラフトモルティング社について書いてしまう。そして日曜日は今週金曜(11日)に行われる私のアイリッシュのための6種のテイスティング。さらにガロアの名物コーナーの7種のテイスティングもやってしまう。テイスターのHさんが体調不良で、急遽私が代役としてやることになったからだ。
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