5年ぶりのアイルランド取材で合計16か所の蒸留所を回る…
7月4日(木)から15日(月) まで、アイルランド取材に行っていた。アイルランドに最後に行ったのはコロナ前の2019年のことだから、今回は5年ぶり。すでに40ヵ所近くを回っていたが、今回は主にコロナ期間中にオープンした新しい蒸留所を中心に、計16ヵ所の蒸留所を回ることになった。
BAで羽田からロンドンに飛び、そこから国内便でベルファストに。そこから北アイルランドの蒸留所、そしてドニゴール、さらにクーリー、キルベガンなどアイルランド共和国の北東部の蒸留所から、最後はダブリン、そして中部まで。回った順番でいうとベルファスト(マコーネルズ)、タイタニック、ヒンチ、コープランド、レイデモン(ショートクロス)、ブッシュミルズ、コーズウェイ(ブッシュミルズの第2蒸留所)、そしてドニーゴールのボイリーク、クローリー、アーダラの3ヵ所、さらにクーリー、グレイトノーザン、スレーン、ロー&コー、チャーチ・オブ・オーク、キルベガンの16ヵ所である。そのうち10か所は初めての蒸留所ということになった。
それぞれインスタグラムに上げているが、詳細は9月12日発行予定のガロア46号から、連載されるアイリッシュの特集で紹介したいと思っている。特にベルファストのマコーネルズとタイタニックは必見!!かつて“ウイスキーの都“として栄え、その生産量はダブリンよりも大きいといわれた、北アイルランドの首都ベルファスト。そのベルファストに100年ぶり以上で誕生したのが、その名もベルファスト蒸留所と、タイタニック蒸留所である。
どちらも歴史的建造物の中につくられた蒸留所で、ベルファストはクラムリンロード監獄のA棟の建物をそっくりそのまま蒸留所に改造している。まるで網走刑務所のような建物で、その獄舎の中に、見事に蒸留所が収まっている。歴史的建造物であるため、外観は保存が義務づけられていて、蒸留設備は看守が歩く中廊下の幅いっぱいに収められている。つまり左右の獄舎はそのままなのだ。
タイタニックはもちろんあのタイタニック号のことで、船は1911年、ベルファストのトンプソン・ドライドックで建造された。当時世界最大だったというドライドックはそのままで、そのドックの扉の開閉をになっていたのが、ハイドロシステムを使ったポンプハウスの動力。さらに海水を満たした(船の進水のため)巨大なドックの水を抜いたのが、ポンプハウスの3台の巨大なモーターで、ハイドロシステムも、ポンプもそのまま残っていて、蒸留所もその建物にすっぽりおさまっている。そのモーターの能力は1分間に50メートルプール一杯分の水を抜ける凄いもので、わずか90分で巨大なドックの水が排水できたという。蒸留所だけでなくドライドックの下まで降りて、タイタニック号と、そのドックについても興味深い話を聞くことができた。次号からのガロアを楽しみに待っていて欲しいと思う。
北アイルランドではヒンチや新しくできたコーズウェイにも行った。どちらも驚きの蒸留所で、これもガロアを楽しみにしていて欲しい。なかなか撮影が叶わなかったブッシュミルズも今回はすべて撮影できたので、コーズウェイともども楽しみだ。特にコーズウェイについては本邦初公開かもしれない。スチルの形状、大きさなどはブッシュミルズと同じで、新旧合わせて、これで20基のスチルを擁することになり、その生産能力は年間1100万リットルを超えるという。
トータルでは南のミドルトンには及ばないが、ミドルトンはポットスチルウイスキーとグレーンだけで、モルトウイスキーは造っていない。そういう意味ではアイルランド最大のモルトウイスキー蒸溜所で、スコッチのグレンリベットやグレンフィディック、マッカランなどには及ばないが、アジア最大のカバランを抜いているのだ。