見出し画像

今も昔もオーバーツーリズム?――「カナレットとヴェネツィアの輝き」SOMPO美術館

2024年の美術館・展覧会を振り返る④

先日受けた美術検定1級(アートナビゲーター)に合格いたしました!
実は美術検定の存在は第1回の時から知っており、「いつか取りたいわぁ~」なんて思っていたらあっという間に時は経ち……。
去年、検定のことをふと思い出していきなり2級に挑戦!そして、無事に合格したので、今年は1級に挑みました。
最短の2年で取得するという目標が達成できてよかったです!

さて、巡回展「カナレットとヴェネツィアの輝き」。主に18世紀の水の都ヴェネツィアの甘美な風景画が続くので、実に目に快い展示でした。

しかし、本展の最後に展示されていた晩年のモネが描くヴェネツィアの風景画《パラッツォ・ダーリオ、ヴェネツィア》には「衰え」が感じられ、人間と肉体の儚さを想わずにはいられませんでした。モネ自身も美しいヴェネツィアを前に若々しい力で描くことのできない悔しさを感じていたようです。(ヴェネツィアを訪れた4年後には白内障と診断されます。)

本展のメインビジュアルにも採用されているカナレット《大運河(カナル・グランデ)のレガッタ》。

近年オーバーツーリズムに悩まされるヴェネツィアはついに日帰り観光客から入場料を徴収することにしたそうですが……。
もはやこの頃からオーバーツーリズムだったのでは?と思えるほどの人数!

ヴェネツィアが今も昔も変わらず旅行先として熱狂的な人気があることを物語ります。
(本展ではカナレットが活躍した18世紀の文化的背景として、貴族の若者がヨーロッパを巡る学びの旅「グランド・ツアー」の流行とその旅先としてヴェネツィアが選ばれていたことなども併せて紹介されています。)

窓から覗きこむ観衆は上半身しか見えませんが、お祭りに合わせて着飾っている様子が伺えます。
踏ん張って船を漕ぐ姿からは
力強さが伝わってきます。
よくみると屋根の上に登って
レガッタを見物している人達の姿も。

過去にフィレンツェに一週間短期留学したことがあるのですが、三日目あたりから「観光地疲れ」を感じてしまい、留学の最後の方は時間がある日はプラートへ行ってゆったりとした時間を過ごしていました。
そんな「観光地疲れ」の経験がある私は「ヴェネツィアで暮らすのは今も昔も大変そう……」なんてヘンな心配してしまうのでした。

とはいえ、ヴェネツィアは有名な画家が活躍し、お祭りに劇場と文化芸術に溢れ、一度訪れば誰もが虜になってしまう魔性の都市であることには変わりません。
カナレットはそんな一目で心を奪うヴェネツィアの魔法を見事に描ききっています。

ちなみに本展の音声ガイドは浪川大輔さんでした。
最近は人気声優さんが絵画の中の人物になりきって朗読劇のようなスタイルでガイドしてくれるプログラムが多いのですが、声色の変化や演技に鳥肌が立つことも。
浪川さん演じる老年の執事声、とてもよかったです。
過去の音声ガイドだと、ルーヴル美術館の展示の森川さんも素晴らしかったなぁ~。

久しぶりに美術館の看板アイドル(?)の
ゴッホ《ひまわり》にも再会できました。
元気そうでなにより!

いいなと思ったら応援しよう!