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東京産ロブスタコーヒーを栽培する両さんのビジネスセンス

私は時折(というか頻繁に)、「こち亀」を読み返します。両さんの行動には、読むたびにハッとさせられる瞬間があります。普段は破天荒な振る舞いで周囲を振り回してばかりの両さんですが、その裏にある独特の視点や柔軟な発想には、ビジネスのエッセンスや人生訓が凝縮されているように思います。

今回手に取ったのは197巻でした。
物語は、両さんが「最近、やたらとコーヒー店が増えている」と気づく場面から始まります。そこから、「なぜ日本でコーヒー豆を作らないのか?」という疑問を抱いた両さんは、持ち前の行動力で東京産のコーヒー豆を栽培するというプロジェクトを始めます。現実には沖ノ鳥島周辺に海上農園を作るのはほぼ不可能でしょうが、ここではそれはさておき、両さんの気づきと行動力だけに注目したいと思います。

出来上がったコーヒー豆はロブスタ種で、苦味がとても強く、まともに飲める味ではなかったようです。事前に調べろよ、とツッコミを入れたくなりますが、それも両さんらしさということで目をつむります。むしろ、両さんの「考えるより先に動く」「考えながら動く」という行動力に感心させられます。

さらに注目すべきは、超苦いコーヒーの味でも諦めない両さんの姿勢です。両さんはこう言います。「なぜ世間のコーヒーに合わす必要がある?」この一言に、世間が気づいていない価値を見出そうとする両さんの感性が詰まっています。両さんは「ガツンとくる衝撃、男は黙ってロブスタコーヒー」「カフェイン2倍、刺激10倍」といった強烈なキャッチコピーを掲げて、あえてロブスタ種のコーヒーを売り出しました。結果として、そのコーヒーはコーヒー通に大ヒットします。まるでビジネス書の事例のように、ニッチ市場を的確に捉え、顧客のセグメント分けも見事でした。

ロブスタ種の特徴であるカフェインの多さや独特の苦味を「他にはない個性」として売り出す発想は、まさに両さんならではです。品質競争に加わらず、土俵そのものを変えることで新しい切り口を生み出す。これこそが、両さんの強さだと思います。

私はつい、「アラビカ種」のような王道ばかりを追い求めがちです。評価の高いものや「正解」とされるものにばかり目が向いてしまい、新しい価値を生み出すことが難しくなることもあります。その一方で、「ロブスタ種」のように少し敬遠されがちなものにこそ、大きな可能性が隠されているのだと思います。両さんのように既成概念を壊し、新たな意味を見出す視点があれば、もっと面白い世界が広がるのだと思います。

結果として、両さんのマーケティング戦略に共感した顧客たちは、いつの間にか「クセになる味」に魅了されていました。振り返れば、これは両さんの思惑通りだったのでしょう。「こち亀」を読み返すたびに、笑いながらも新しい気づきを得ることができます。両さんを見ていると、自分の中の固定観念がほぐれるような気がするのです。

ロブスタ種のように尖ったものに着目し、その価値を全面に押し出す姿勢。そしてそれを実現させる両さんの行動力。あの両さんの姿を見ていると、ついつい自分に置き換えて妄想してしまいます。やっぱり「こち亀」は、私にとって一生のバイブルです。

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