美しい仕事をしたいなら力を抜くんだ
最近、あたらしくアルバイトを始めました。
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ここ10年くらいの間で、懐石料理店、鉄板焼き&しゃぶしゃぶ店、クラフトビール店…などで働いてきました。
職種は、サービススタッフ(ホールスタッフ)。
ホスピタリティを学びたかったのと、人と話す仕事がしたかったから。
(わたし、デスクワークが本当に向いていません…。対面で人と接していないと停滞するのです。)
あとは、食べることが好きだからです。
仕事を探すエリアとしては、銀座、六本木、代官山、表参道…など、ホスピタリティが求められる高級店が多いエリア、あるいは食の流行の最先端を表現するようなお店が多いエリア。
これまでは、そんなエリアを選んできました。
今回も、まずはそのエリアの求人をチェック。
ところが…。
求人を見てもわくわくしません。
こころが動きません。
……(あれ?なんでだろう?)。
……(あれ?困ったな?)。
……(うーん…)。
これは…。
違う方向にいくしかないなぁ。
「なにか、これまでとは違う、あたらしいことしてみよう!」というポジティブな気持ちから、というより、今まで選んできたことがフィットしなくなってきた感。
「違和感」というほど大袈裟でもない。
けれど、「こっちじゃないんだよなぁ」感。
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というわけで、同じ飲食関係でもちょっと路線変更して、いくつかの求人に応募してみました。
そのなかのご縁を頂いたお店で、今働いています。
企業としても創業10年未満で、ベンチャーな雰囲気漂う、自由な社風のお店です。
職種としては、接客もありつつ、食材の仕込みもやるという感じ。
ずっと飲食関係のお店で働いてきましたが、食材を直接さわるのは初めてのことです。
料理人がやるような難しい技術を必要とされるわけではありませんが、家庭で食材をさわるのとは、やっぱり違うわけです。
量が違うし、スピードと同時に美しさが求められます。
というわけで、慣れない仕事にわたわたしている日々です。
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そんな日々の中で「食パンを大量に切る」という仕事があります。
パンを大量に切るのですが、パン屋さんではないので「食パンスライス機」なるものはありません。
「食パンスライス機」…。あれですよ、あれ。
パン屋さんに行って食パンを買うと「スライスはなさいますか?」と聞いてくれて、「はい、お願いします」というと、シャキンシャキンと軽快なリズムとともに食パンを均等な厚さにあっという間にスライスしてくれる、あの機械のことです(わかって頂けましたか?)。
職場に「食パンスライス機」なるものはないので、パン切りナイフで、食パンを均等な厚さにスライスする。
しかも、大量に。
スピーディに。美しく。
これがね。
できないんです…。
斜めになって厚みが不均等。断面はギザギザ。
ダサい仕事です(泣)。
前の職場の上司の言葉が、ポンっと頭に浮かびました。
「センスのない仕事をするんじゃないよー」
サービススタッフの仕事は、すべての所作がお客さまへのホスピタリティにつながるわけですが、不器用なわたしはよく上司に怒られ、呆れられていたものです。
不恰好に切られた食パンを見ると、身体の使い方のクセ、こころのクセがまざまざと出ています。
左側に向かって斜めになる傾向があるのと、身長と作業台の高さも関係していると思いますが、パンの向こう側が切れていないことが多い。
切るときの動作が小さく、かつ回数が多いから、断面がギザギザ。
これは、自信のなさ、意志、決断力の弱さとも関係しているでしょう。
食パンをまっすぐに、同じ厚みで切るって、難しい…。
仕事の中で回数を重ねていくうちに上手くなるのでしょうが、今この瞬間から他にできることなにかないかな?と考えて…。
文明の利器YouTube先生にお世話になることにしました。
いろんな方の動画を見て、自分なりに勉強した結果…。
力を抜いて、ナイフと腕の重さだけで切る。
というのが共通の意見のようです。
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さっそく、お休みの日に自転車を走らせ、パン屋さんへ。
もちろん、食パンをゲットします。
帰宅後。
さて、食パンを切ってみます。
力を抜いて。
ナイフと腕の重さだけで切るように。
身体の中心を感じながら。
向こう側もちゃんと切れるように、上からしっかり刃先を入れて。
身体のクセも感じながら、まっすぐ切ることを意識して。
身体の軸と、パンの切り口の軸を感じながら。
まだ早くはできないから、まずは自分のペースでゆっくりと。
でも、キッパリとした意志を持って。
おぉ…!
今までより、格段に上手に切れるようになっています。
これを定着させるために、たくさん練習する。
その中で、また試行錯誤していく。
その繰り返しですね。
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美しい仕事をしたいなら、力を抜くんだ。
これを身体でしっかり理解できた頃、わたしがスライスした食パンは、魔法がかかったみたいに美しい食パンになっている。
そう信じて、ただひたすらに食パンに向き合っています。
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