
優しいまま生きててもかまわないっていう証明。
母がファンタジー嫌いだったその反動で、わたしは昔ファンタジー小説ばかり読んでいた(姉は素直にファンタジー嫌いに育ったのに)。
学生の頃は、立原えりかさんの小説が大好きだった。
ヘッダーの写真は、「どこにもない動物園」という短編集。
久しぶりにひっぱり出して読んだら、お話をほとんど覚えていたし、その当時書いた自分の感想文まで思い出した。
ライオンが花と友達になる話や、月がきれいな夜に風邪をひいてしまうユニコーンの話、公園の木馬が手紙を持って郵便局長の家を訪ねてくる話。
今読むと、現実の辛さの反動や、大人の寂しさを描いてるものも多いし、厳しい風刺だったりするんだけど。
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学校を卒業して働き始めた頃、いろんな大人に、「そんなんじゃこの先、生きていけないぞ」みたいなことをよく言われた。「世の中そんなに甘くないぞ。」とか。
その言葉は脅迫みたいにいつまでも残っていて、でもわたしは特に変われなかったし、ずっと「そんなん」のままだったから、いつかこの先に「生きていけない」ようなことが起きるんだって怯えていた。
けど、気づいたらもう、今まで生きてきた時間よりも、残りの時間のほうが圧倒的に短くなっていて、「そんなん」のままでここまで来てしまってた。
人生での難関と思われるような出来事の大半を済ませたように思ってる今、世の中を甘くみたことは一度もないし、全て楽勝でクリアしてきたわけじゃもちろんない。
そりゃいろいろあった。
でも、別に、強くなったりもしなかったし、人を蹴落とさなきゃならないようなこともなかったし、わたしはなにも変わっていない。
そのままでも、なんだか大丈夫だった。
優しさは甘さと言われて、案外否定される。
心配される。
ほんとの優しさは強さ。みたいなウワサもあるけど、優しさは優しさだよ。弱いとも違う。
わたしはそれを証明したくて、ファンタジーを読んでたんだと思う。
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なんてねさんの小説、「蝶はちいさきかぜをうむ」。
立原えりかさんの世界を思い出したのは、これを読んだから。
この小説も、優しいままでいいよって証明だなって思いました。大好きです。
感想文書こうと思ったのに、自分語りになってしまいました。
なんてねさん、執筆お疲れさまでした。
素敵なお話をありがとう。