去年の雪/江國香織
江國香織さんが好きです。
たぶん、作品はほぼ読んでます。何度も何度も読んでるのもあります。そうなるともう、登場人物と友達のような感じになります。
ふとした時に、あっあの子もこんなこと言ってたなーとか、この感じはあの時のあの子と一緒だ!とか思い出したりする。
それで、小説のいちばんいいところは、変わらないこと。そのままそこにずっといてくれるところ。いつでも会いに行けるところ。
あの子は相変わらずこんなことしてこんなこと言ってる!っていう安心。だけど、こっち側はいろいろ変化してるので、同じ文章を読んでも、届くものはいつも違う。今まで、嫌だなーって思ってた登場人物も、理解できるようになってたりする。あんまり気にしてなかったところが、すごく刺さったりする。
なので何度も読む。いちばんいっぱい読んだのは、「流しの下の骨」。家族の話。主人公の、こと子ちゃんが大好き。お母さんは理想のお母さんだと思ってる。わたしにはなれないタイプの。
自分にいちばん似てるなーって思うのは、ホリーガーデンの果歩ちゃん。自分にとってほんとに大事なものを壊さないようにずっと持ってるとこ。その他のことは、仕事でも友達でも、どうでもいいから真面目に働くし優しくできるってとこ。でも、ほんとはとても病んでる。
「きらきらひかる」の、笑子ちゃんもめっちゃ好き。アル中の笑子ちゃんとゲイのだんなさん睦月とその恋人の紺くん。3人の関係がめっちゃ好き。
語り出したらキリがないので、本題。
「去年の雪」
登場人物がありえないくらい多い。だって、最後のページでもまだ初めて出てくるひとがいる!
たくさんの人たちのたくさんの日常。そのうちのほんの1コマ。それがいっぱい。
渋谷のスクランブル交差点ですれ違うみたいな。だけど、わたしたちはもしかしたら、よく知ってるつもりの人だって、ほんの一部分しか知らないのかもって思った。
わたしだって、みんなに全部見せてない。いや、全然見せてないかも。
そのうちの少しずつが、微妙に繋がってる。時代も行き来してる。未来の同じ場所の声が過去に聞こえてたりする。だけど、それの意味は特になくて。
これが本当の世界な気がした。繋がってるようで繋がってなくて、でも繋がってて。影響してるようで全然してなくて、でも知らない間に誰かに影響してる。
もう一回読んだら、また違う世界が見えそう。
で、最後の最後に、ファンを号泣させるポイントがひとつ置いてあった。
これだから香織ちゃん好きって思ったよ。
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