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2分で読める超短編小説13 『深淵で交わる二つの歌』

はじめに

この短編小説は僕の書いた原文を元にChatGTPに加筆修正してもらい、さらに僕自身が加筆修正をして完成したものです。文体と作風は村上春樹というプロンプトを入れました。「僕 x ChatGPT x 村上春樹の文体・作風」を楽しんでいただけると嬉しいです。

深淵で交わる二つの歌

僕のFacebookの投稿に、彼女が「いいね」をしてくれた。ぼんやり画面を見ていて、たまたま気づいたのだ。それは偶然のような顔をして、何の前触れもなく僕の日常に滑り込んできた。まるで、長い間閉じていた古い引き出しがひとりでに開いたように。

彼女は、僕がニュージーランドで世話になったフリーダの孫だ。数十年前、僕がニュージーランドの高校に日本語教師として派遣されていた頃、おばあさんのフリーダの家に遊びに来ていた時に出会った。その時、彼女はまだ高校生だった。月日は流れ、僕はニュージーランドに移住し、彼女は看護師としてオーストラリアに渡った。彼女と最後にやりとりをしたのは2020年。フリーダが天国へ旅立った時。僕の妻が旅立った1年後だった。

何かが、僕の中の静かな水面に落ちた。小さな波紋が広がって、心の底に沈んでいた何かを呼び起こした。僕は彼女にメッセージを送る。

「いいねをありがとう。今もオーストラリアにいるの?」

すぐに返信が来た。SNSを最近は全く使っていないのだが、久しぶりにFacebookを開いた時、僕の投稿がフィードに最初に流れてきたと言った。そして、僕のことを思い出しながら、指先で静かに「いいね」を押したのだという。

「4月にスピリチュアルな目覚めを経験したの。」

そう彼女は言った。看護師を辞め、今はヒーラーとして活動している。「目覚め」とはなんだろう? 僕は答えを求めず、その言葉が心の中でゆっくりと沈んでいくのを待った。

僕は自分のことを話す。11月に日本でコンサートをしたこと。妻との結婚式の写真をもとに生まれたピアノ即興曲のこと。そして、その曲に僕が歌詞を書き、コンサートで歌ったこと。彼女にその動画を送る。彼女は日本語がわからないが、歌を聴いてちょっと涙ぐんだと伝えてくれた。

「私も最近、歌を再開したの。」

彼女はそう言って、フリーダの葬儀で歌った歌を送ってきた。オーストラリア在住の彼女は葬儀に出席できなかった。そこで、葬儀のために歌を歌ったのだという。僕も葬儀には参列できなかったが、葬儀のストリーミング動画をリアルタイムで見ていたので、その時に流された彼女の歌を聴いていた。もう4年前のことだ。

歌は時と場の制限を解き放ち、僕たちを過去と現在の狭間に漂わせる。結婚式の写真から生まれた僕の歌と、フリーダに寄り添う彼女の歌が、深いグリーフによる接点から、時を超えて、ゆっくりと絡まり合う。

その瞬間、僕たちは何か不思議な場所にいた。現実と非現実の間にある、見慣れたようで見慣れない空間。時間はやわらかく、空気はどこか青みがかっている。僕は静かに息を吸い込んだ。肺の中に広がる冷たい感覚が、現実に引き戻そうとするけれど、まだ完全には戻らない。

「フリーダとあなたの奥さんは、今、どこかで私たちの歌を聴いているんでしょうね。」

彼女がつぶやく。その声は、現実に乗って僕の耳に届いた。僕はふと、夜の海に立っている自分を想像する。闇の中、さざ波が足元を冷たく優しく濡らしている。闇の向こうには何も見えないけれど、確かに何かがそこにある。

どこに向かうのか、僕にはわからない。けれど、このつながりが偶然なんかではないことを、彼女も僕も感じていた。表層の現実と、潜在意識の深淵。その接点に生まれた小さな灯火が、静かに僕たちを照らしている。その灯火は、閉じた引き出しが再び開く時、無言でそっと姿を現す。耳を澄ませなければ気がつかない、遠くで静かに響き続ける歌の余韻のように。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

❤️ この短編小説シリーズは友人の中川麻里さんの投稿に刺激を受け、背中を押されて誕生しました。中川さんに心から感謝いたします。

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