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2分で読める超短編小説14 『写真と場所の重なり:そして、てるてる坊主』

はじめに

この短編小説は僕の書いた原文を元にChatGTPに加筆修正してもらい、さらに僕自身が加筆修正をして完成したものです。文体と作風は村上春樹というプロンプトを入れました。「僕 x ChatGPT x 村上春樹の文体・作風」を楽しんでいただけると嬉しいです。

『写真と場所の重なり:そして、てるてる坊主』

彼女から一枚の写真が届いたのは、一年半ほど前のことだ。青い空、深い緑の山々、そして穏やかな湖面に浮かぶ小さなヨット。その写真には、どこか説明のつかない引力があった。それが何なのか、当時の僕にはわからなかった。ただ、その場所に自分も立ってみたいと思った。それだけだ。

その国は南半球にある。「行きたいところには今すぐに」と言うけれど、飛行時間が10時間以上かかるから、簡単に今すぐに行ける場所じゃない。でも、それがかえって僕の興味を掻き立て、その場所について調べ始めた。ネットで地図を見たり、特集記事を探したり、YouTubeで旅行者の映像を観たりした。そうやって少しずつその場所との小さな「接点」を重ねていくことが楽しかった。点の重なりがいつしか線となり、面となり、物語を紡いでいくことをなぜか素直に信じられたからだ。

そうして一年半が過ぎたある日、僕に思いがけないチャンスが巡ってきた。その国への出張が決まったのだ。ただ、僕の仕事は北島で、彼女が訪れていた南島まではさらに飛行機で移動する必要があった。しかし、こんな機会を逃す手はない。有給を3日取って、その場所に行くことにした。


その場所を探すのは思ったよりも大変だった。写真と現実の風景は、微妙にずれている。角度や光の加減、背景の山の形を何度も照らし合わせながら、ようやく「ここだ」と確信できる場所にたどり着いた。

足元の砂利の感触、風が運んでくる湿り気のある匂い、さざ波が立てるかすかな音。彼女が立っていたその場所に僕も立つ。その瞬間、何かが静かに胸の奥で「カチリ」と音を立てた気がした。それが何なのかはわからない。でも、僕がここに来るべきだったことだけは、はっきりと理解できた。

ただ、一つだけ違うことがあった。彼女の写真にはどこまでも青い空が広がっていたけれど、僕が立ったその日は小雨が降っていた。空は一面の灰色。夏だというのに風はひんやりとして、少し肌寒いくらいだった。


それでも、その場で写真を撮り、彼女に送った。送るべきだと直感で思った。写真にも鮮度がある。感情と同じで、その場でしか伝わらないものがあるのだ。

その場所から一歩も動かないうちに返信がきた。
「同じところから写真を撮ってくれたのね。嬉しい!」
彼女の言葉は素直であたたかく、曇り空の湿気を一瞬忘れさせてくれた。

僕は、空の色が違うこと伝えた。すると彼女はこう言った。
「そのとき、晴れるように、前の日にてるてる坊主を作って持って行ったのよ。次に行くときは、あなたも作ってみたら。」

僕は少し考えてから返信した。
「でも、それは君の作ったてるてる坊主でなきゃいけない気がする。」

彼女からの返信は簡潔だった。
「じゃあ、作ってあげる。」

そして、僕はふと考えた。曇り空であろうと、青空であろうと、そこにあるのはただの空であり、その変化を重要視していたのは僕自身の心に過ぎない。彼女の祈りが届いたのは、この場所に足を踏み入れた瞬間だったのだろう。てるてる坊主はただの布切れでしかないかもしれない。それでも、その小さなものが僕たちをつないでいる。潜在意識のどこかで絡み合った細い糸が、この場所で再び形を成したのだ。

次にこの場所を訪れるとき、そのてるてる坊主が僕の手元にある。そして、僕が見上げる空がどんな色であっても、それはもう僕にとってさほどの意味を持たないことに気づいた。ただ、その場所に立ち続け、空の色や風の匂いを感じること。それが僕たちの内面にひっそりと宿る何かを形作り、時を越えて残っていく。

たぶん、青空である必要はないのだ。むしろ、そこに立ち続けることの意味と、曇り空の下で立ち尽くす瞬間にこそ価値があるのだ。結局のところ、僕たちが手を伸ばすのは、遥か彼方にある空や風景そのものではなく、それに触れようとする行為そのものなのかもしれない。

僕は目を閉じて、深呼吸をした。風は少し冷たく、小さな雨粒が頬を滑り落ちていった。開いた目の先に広がる空はまだ灰色のままだったが、どこか遠い場所で、僕は青い空に手を伸ばしている。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

❤️ この短編小説シリーズは友人の中川麻里さんの投稿に刺激を受け、背中を押されて誕生しました。中川さんに心から感謝いたします。

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