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肉が入っていないものをバーガーと、牛乳の入っていないものをミルクと呼べるのか、という話。

先日、日本人の方何人かとご一緒する機会があって、一人の女性が「私オートミルクが好きで...」と話し出した所、もう一人の女性が「オートミルクって何のミルクですか?」と質問された。そこで、同席されていた在英の長い女性が、「オート、麦のヴィーガンミルクですよ」とご説明されたのだが、質問された女性は「麦、、、ヴィーガンなのにミルクというのですか?」とおっしゃって、それもそうだよね、という話になった。

イギリスでは、ヴィーガン商品は、もう既に広く市場に出回っており、いちいち説明の必要はないように思われる。でも確かに、ミルク(=牛乳)は入っていないのに、ミルクという名称で販売するのは、誤解を招くかもと思った。

オーツのほかにも、ソヤ(豆乳)、アーモンド、ココナッツ、ヘーゼルナッツなど、植物ベースの、私たちが”ミルク”と呼ぶドリンクは種類も多く、言わずもがな、すべてヴィーガンである。

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スーパーマーケットにずらりと並ぶ植物性の「ミルク」。すべてヴィーガンである。


この話を聞いて、半年位前に、ラジオでディベートがあったことを思い出した。”ミート・ロビー”と呼ばれる肉専門ロビイストの女性が、「肉の加工商品に使われる、”バーガー”や”ソーセージ”、”ステーキ”などの名称を、べジタリアンやヴィーガンの商品に使うべきではない」と主張する議論だった。ベジ・バーガーやベジ・ソーセージなどの名称は完全に定着してしまっており、それを買って「肉入っとらんがな!」と劣る人はさすがにいないと思うので、そんな意地悪言わんでも、と思ったのだが、「ヴィーガン・チキン・ナゲット」という商品名を聞いて、どっちやねん!?と思う人はいるかもしれないと感じた。

少し前になるが、2020年10月16日付けの、英ガーディアン紙に「畜農家やミート・ロビイストが植物ベース加工生産者を”文化的ハイジャック”と非難」という記事があった。どうやら、”ベジ・バーガー”や”ヴィーガン・ソーセージ”という呼称を禁止するよう欧州議会に決議決定を求めたという。しかしながらその後1週間後、23日の同紙が報じたところによると、欧州議会はこの申し入れを却下。引き続き”ベジ・バーガー”や”ソヤ・ステーキ”、”ヴィーガン・ソーセージ”がEU内のレストランやショップで見られることになった。

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ヴィーガン・バーガー。

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ヴィーガン・ソーセージ。


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ヴィーガン・ミートボール。

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ヴィーガン・ベーコン。


ヨーロッパ最大の農業協同組合 Copa-Cogeca は、植物製代替品に肉製品の呼称を使用するのは、消費者に誤解と混乱をもたらすとし、禁止法を支持していた。しかし、グリーンピースやWWF(World Wide Fund for Nature、世界自然保護基金)を含む13の団体は、禁止法はEUを”嘲笑にさらす”だけでなく、環境への配慮に対する信頼性にダメージを与えると訴えた。欧州消費者組合は、欧州議会の決議を歓迎し「ベジタリアンもしくはヴィーガンと明確に表示してあれば、”大豆のステーキ”や“ひよこ豆のソーセージ”と書いてあるのを見ても、消費者が混乱することはありません。’バーガー’’ステーキ’と呼ぶことによって、食事のメニューとして最も分かりやすくしているのです」とコメントしている。

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じゃあ魚はどうなのか?ヴィーガン・サーモンフィレット。もちろん鮭は入っていないが、色や形までも鮭の切り身にそっくりにしてある。


しかしながら、2017年の決議では、”アーモンド・ミルク”、”大豆のヨーグルト”などの呼称を禁止している。つまり、”ミルク、バター、チーズ”と命名することできるのは、乳製品のみで、植物ベースの代替品には使用できないとのことだ。

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確かにチーズという呼称は使用していない。ヴィーガン・スライスと書いてあるだけだが、チーズスライスの代替品だ。

私自身、このミルク代替品がミルクと呼べないことを知らなかったし、しかも決議されたのが2017年という事であれば、もうそれ以前にオーツ・ミルク、ソヤ・ヨーグルトなどが、十分に定着してしまっているので、間違える人もいなければ、混乱する人もいないと思う。私も普通にカフェなどで、オーツ・ミルク、プリーズと言えば、ミルク代替品のオーツの液体が間違いなく出てくるし、ましてや、オーツの液体ください、なんて言ったこともないしな。

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「オート・ドリンク」でミルクではない。カルシウムとビタミンDが加えられている。余談だが、最近このように、味付き植物製ドリンクが増えている(写真はバニラ味)。他にもチョコレート味やコーヒー味などもあるのだが、恐ろしくカロリーが高い(場合によっては牛乳よりも!)ので、飲み過ぎには注意!

ミルク、バーガー、ソーセージと呼べば、それがたとえ代替品で、ミルクも肉も入ってなかったとしても、慣れ親しんだものに聞こえるので、マーケティングの上では重要なのだろう。私も最近は食事を作る際、材料の半分を代替品にして、肉の摂取量を減らしているのだが、その名前になぞらえて、どう使うのか、献立のどこに位置するのかが分かりやすいので、混乱させるというよりも、逆に消費者を導いてくれていると思うのだが、どうだろう。




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