2023秋アニメ感想まとめ
2023秋アニメの感想をランキング形式でまとめています。
<30位> 川越ボーイズ・シング
評価:B-
お気に入りキャラ:出井天使(だんぼっち)
長らく絶対的正義を誇示し続ける美少女全盛期の中においても、美しい男声オンリーのクワイアには大いに惹き込まれるものがあり、熱いスポ根要素も合わさり序盤の期待感は高かったのだが、”安定しない作画”という場外の要素により台無しにされてしまった感が強い。また、1クール作品で”親の都合に振り回される子供”を描くのは、何のカタルシスも生まず貴重な尺が奪われてストレスが溜まるだけなので個人的に悪手だと思っており、その点も残念であった。肝心のクワイアのハーモニーについても、終盤のコンクールの場面においても展開以前に技量そのものにあまり伸びしろが感じられず、成長の過程と共に最終的にその完成形を見せるという物語の設計が上手く働いていないように思えた。それらの結果と言うべきか、おそらくは予約数が振るわないためにBDの発売も中止になったようで、場内・場外の双方から非常に不名誉な結果になってしまったのは遺憾である。
<29位> お嬢と番犬くん
評価:B-
お気に入りキャラ:—
26歳の極道一家の若頭(※イケメン)が組長の孫娘を周囲の狼たちの毒牙から守るために裏口入学で高校一年生として潜入するというトンデモ設定だが、もっとトンデモだったのは何と言ってもその凄まじい作画に尽きる。『五等分の花嫁』の1期などは作画がイマイチだったという扱いを受けることも多いと思われるが、それが全く気にならなかった自分でさえあんぐりとしてしまうほど酷い場面が多かった。あろうことか、こちらの一人称視点でヒロインの顔がどアップの止め絵状態なのにしっかり作画崩壊していた時はどんな自虐プレイやねんと思わず心の中でツッコんでしまった。原作は普通に小綺麗な絵柄だったので、これにはきっと作者も涙で枕を濡らしていたことだろう。コメディチックにはなりすぎずに若頭の人生経験豊富な大人の対応をしっとりと描く作風は、多分に少女漫画の論法ながらも自分好みではあったのだが、色々と台無しになってしまった気分である。
<28位> アイドルマスター ミリオンライブ!
評価:B
お気に入りキャラ:佐竹美奈子
とにもかくにもフル3DCGへの移行が残念に過ぎた。制作側にとっては相当思い切った決断であったろうし、きっとそのおかげで劇場先行上映も実現できたのだろう。ただ、直近の『U149』でコンテンツの底力を見せつけられたと感心させられたのは、あくまでも「手描き」に拘る作画力とコンセプトに合わせた人選による脚本力が見事に噛み合った結果である。そして、今回の『ミリオンライブ!』にはその両者とも欠けていたと言わざるを得ない。人数が多すぎる上にチームごとのコンセプトもはっきりせず「ただ多いだけ」になっていたし、何よりもモデリングが1種類しか無いのではないかと疑いたくなるぐらい全員が同じ体型にしか見えず、アイドルごとの個性には非常に乏しかった。765プロの劇場版においていわゆる「できない組」だったメンバーの成長は眩しかったが、逆に言えば見所はそれぐらいであり、この「最適化」の方向性には大いに疑問を感じざるを得なかった。
<27位> オーバーテイク!
評価:B
お気に入りキャラ:蜜澤亜梨子
フォーミュラと公道レースという違いはあれど、『MFゴースト』と同時期に重ねてきたのは狙ってのことなのか。制作会社、監督、キャラデザと、かつての『アルドノア・ゼロ』を思い起こさせるスタッフの布陣はたしかに感慨深いものはあった。ただ、悠と孝哉の世代を越えて育まれる絆はたしかに美しかったが、男同士のそれはオタクとしては残念ながら訴求力には欠けるというのが本音。人間ドラマとしての純度を重視した構成は一理あるとしても、もう少し分かりやすく”遊び心”みたいなものがあっても良かったのではと思わずにはいられなかった。また、(孝哉の元嫁はともかくとして)唯一のヒロイン要素である亜梨子がライバルチームのイケメンに惚れているのもなんだかなあといった感じで、的確にツボを外してくる感がハンパなかった。結果として「フォーミュラ」という題材を選んだ理由も不明瞭であり、綺麗にまとまっているだけの作品になってしまった印象である。
<26位> 星屑テレパス
評価:B
お気に入りキャラ:雷門瞬
なんとなく久方ぶりな気がするきらら系作品。ランクマッチにも積極的に参戦するなど、『ハチナイ』を愛する声優としてユーザーから絶大な支持を得ていた船戸ゆり絵さんに、遂にきらら系作品の主人公役という大仕事が舞い降りたという感慨は大きいのだが、逆に言えばそれが数少ない見所となってしまっていた(ちなみに作画とキャラデザは素晴らしかった。)。オドオドとした引っ込み思案な性格の海果には可愛さよりも先にイライラとするもどかしさの方を強く感じてしまい、彼女が勇気を出して言葉を紡いだ感動的なシーンもどこか茶番臭が拭えなかった。そして、こうしたコミュ障の主人公像を巧みにエンタメとして昇華させた『ぼっち・ざ・ろっく!』は改めて偉大だったんだなあと再認識。個人的には、そんな海果の小さくても偉大な勇気に感化された瞬がむしろ一番眩しく見え、彼女が「部長」とある種畏敬の念を込めて呼ぶようになったのは素直に心温まり嬉しかった。
<25位> アンデッドアンラック
評価:B+
お気に入りキャラ:出雲風子 タチアナ
風子のビジュアルは相当好みであり大いに視聴意欲に貢献すると思われたが、さっそくの髪バッサリには思わず画面の前で神・エネルの例の表情になってしまいそうに。週刊連載であの髪の長さは作画が大変すぎるだろうが、そのフェチズムを貫いてくれていたら絶妙にプニプニしていそうな体型も相まって今期№1ヒロインまっしぐらだったのだが…(『とある』のローラ=スチュアートや『アズレン』の大鳳のビジュアルが大好物な自分)。ストーリーについては、ノリが少年漫画過ぎると思うところもあるのだが勢いは感じるので視聴感は悪くはない。ただ、主人公のビジュアルがあまり好みでないのは一番画面に映る時間が長い以上小さくないマイナスポイントであり、せめて髪をセットする前がデフォルトだったらとは切に思った。あと、巨大な球体形状で存在感が抜群のタチアナの中身は非常に気になっていたのだが、キービジュアルで豪快にネタバレしているような…笑
<24位> 盾の勇者の成り上がり Season3
評価:B+
お気に入りキャラ:ラフタリア
2期で作画が微妙になったが、また盛り返した模様。物語当初のような露骨で理不尽な扱いこそ受けなくなったものの尚文の苦労人気質は抜け出せておらず、今度は思い込みが激しく中々団結しない他の四聖勇者たちの勝手な行動に振り回される日々。そんな中で定期的にラフタリアとのイチャラブ要素も補給したかったのだが、今回はほぼお預けだったのはちと残念。ただ、ルロロナ村においてフォウルやアトラたちの保護者のような立場で暮らす様子はまるで熟年の夫婦のようでもあり、深い信頼関係で結ばれているからこそあえて描写する必要はないと作者も考えているのかもしれない。サディナからの問いかけにもあったように、お互いに勇者となった二人の今後の関係性には引き続き注目であり、ラフタリアの血筋の件にも絡めてその辺りにグッと進展があることを願って止まない。尚文も含めて、初期の四聖勇者たちは色々と拗らせているのが実に厄介やねぇ…。
<23位> 私の推しは悪役令嬢。
評価:B+
お気に入りキャラ:クレア=フランソワ レーネ=オルソー
「悪役令嬢(+異世界転生)もの」がすっかり定番のジャンルとして定着した感がある今日この頃。本作品については、主人公のレイの悪役令嬢であるクレアに対する変態偏愛はともかくとして、実際にそのクレアが本当に綺麗で可愛くて魅力的なことには完全同意をせざるを得ない。また、レイ役の芹澤優さんのはっちゃけた演技も作品の色を良く表現できており、『MFゴースト』での主題歌&演技も素晴らしかったので、来年は飛躍の年になるのではと密かに注目している。ギャグ一辺倒のシナリオかと思いきや、クレア様お付きのメイドで彼女にとって姉のような存在であったレーネのまさかの展開やレイの同性としてのクレアへの愛情を真摯に見つめ直す展開などシリアスさも徐々に見られるようになったが、エンタメとして効果的に働いていたかどうかには疑問が残る。あと、魔法の杖のデザインが書道の筆みたいで致命的にダサかったのはどうにかならなかったのだろうか…。
<22位> SPY×FAMILY Season2
評価:B+
お気に入りキャラ:アーニャ・フォージャー フィオナ・フロスト
気のせいではなく「コナン化現象」(=続きを作りさえすれば安定した売上や集客が見込めるドル箱状態になったため、メインストーリーの停滞を招きサザエさん時空に足を突っ込んでしまう現象(筆者命名))が進行しており、正直評価が微妙になってきた作品。アーニャのキャラとそれを生かす物語の設定は間違いなく秀逸であるのだが、ほとんどギャグ作品のようになりかけているのはちといただけない。孤児院で育ったアーニャにとってフォージャー家はかけがえのない居場所であり、オペレーション梟の終焉を恐れるが故の行動と幼心の描写は個人的に本作品で最も大事にしたい要素である。そこを間違えない限りは大丈夫だと思ってはいるが、どんなに明るく振る舞っていても根底にはそれがあるということは忘れないようにしたい。ただ、アーニャの脳内のロイドが彼女を「捨てよう」とポイする一連の流れだけは形式美として何度見ても笑ってしまうんだよなあ…笑
<21位> 16bitセンセーション ANOTHER LAYER
評価:B+
お気に入りキャラ:下田かおり
「みつみ美里」「甘露樹」という往年のエロゲファン(自身含む)にとって、ははーと平伏したくなるような御仁が原作に名を連ねている時点で勝利は約束されたかと思われた。しかし、序盤こそ美少女ゲーム黎明期の古き良き小規模の制作環境を味わうことができてホクホク顔だったのだが、思いの外早く次の時代に進んでしまったのは残念。また、『Kanon』などの懐かしの名作が次々と登場したのは序盤の勢いづけとしては良かったものの、『かぎなど』のようにヘビーユーザーもニヤリのあるあるネタで笑わせるようなこともなく、ファン視点のフェチズムには欠けていたと言わざるを得ない(「らしい」劇伴は◎)。そして何よりタイムリープにまつわるメインストーリーに魅力が無く、最後も尺をすっ飛ばして強引にまとめた感が半端なかった。総じて、全体的に薄っぺらい表現に留まっており、『げんしけん』のごときオタク濃度を求めた視聴者には訴求しなかったのではなかろうか。
<20位> るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-
評価:A-
お気に入りキャラ:高荷恵
もはや実家のような安心感しかないが、こんな時ばかりは熱心な原作ファンでなくて良かったと思ってしまうのは間違っているだろうか(某ラノベ風)。やれどこそこの演出がどうとかといった事柄に重きを置かず、「そうそうこんな感じだった」というように気楽に懐かしさを堪能できるのは全くのストレスフリーであり、自分のような層が今回の再アニメ化をもっとも純粋に楽しめているのでは。余りにも淡々粛々とストーリーが進むので、連載当時を知らない若い層には果たして響いているのか心配してしまうぐらいで、個人的にキャラデザを最大限に評価している『うる星やつら』のように、令和の世において再アニメ化した意義を感じさせる何かはやはり必要だったのかもしれない。それが本作品のような長編作品であればなおさらであり、それこそ『BLEACH』のように終盤のアニメ化されていなかったエピソードを全身全霊で制作するのが正解であった可能性は否定できない。
<19位> 薬屋のひとりごと
評価:A-
お気に入りキャラ:猫猫
シリーズ累計部数が2,700万部を突破しているなど前評判の高さは耳に入っていたのだが、思いの外刺さらなかった印象。猫猫のキャラももしこれがサブヒロインであれば大好きなポジションなのだが、主人公に据えるにはちと可愛げが無く斜に構えすぎているように感じた。そのニュアンスを的確に表現した悠木碧さんの卓越した演技力は素晴らしかったが、せめて後宮外にもう一人の主人公を立てるなどして物語を多角的に楽しめる構造であれば良かったのだが…。また、舞台が後宮ということで当然ながら周りの男性は皆宦官であり、恋愛に発展する可能性が端から否定されているのも勿体なく感じた。おそらく主要な読者層は女性であると推察され、その目線からこの部分についてどう感じているのかは是非聞いてみたくはあるが、宦官との恋愛というのもアリなのかしら…?総じて、純粋なミステリーとして楽しむならもう一押し欲しかったというのが本音である。
<18位> ゴブリンスレイヤーⅡ
評価:A-
お気に入りキャラ:牛飼娘
なんかキャラデザが可愛くなった(特に蜥蜴僧侶)ような…?それに加え、心なしか画面全体の暗い色彩設定や凌辱的な残酷描写もマイルドになり、その辺りを魅力的に感じていた視聴者にとっては物足りなかったかもしれない。2期の一番の見所は妖精弓手の故郷への里帰りであり、ヒロインが勢揃いしつつエルフとドワーフの気の置けない友情も改めて目の当たりにすることができて非常に良かった。また、戦力的には女神官の成長が目覚ましく、パーティーメンバーとして立派に頼りにされる存在になったのは感慨深かった。そんな中で、最終話のラストシーンにも見られたように、最後は牛飼娘の元に帰ることができるという安心感は何物にも代え難く、やはり個人的なメインヒロインは彼女であると深く実感した次第。ゴブリンスレイヤーが浮名を流す人物だったらここまで暖かく感じられるシーンにはならないとは思いつつ、そういうifも見てみたいと思った次第である。
<17位> 魔法使いの嫁 SEASON2
評価:A-
お気に入りキャラ:フィロメラ・サージェント
自分のお気に入りキャラであるフィロメラにとことん注力した2期後半戦。ここまで彼女のストーリーにガッツリと尺を割かれると、もはやサブキャラというよりは”もう一人の主人公”といっても差し支えなく、キャラとしての人気にも後押しされたのではと愚考する次第である。実際、その生い立ちもあり破滅的思考を持つ後ろ向きな性格でありながら、(彼女本人は意図せずに)男性に庇護欲(と支配欲)を感じさせてしまう妖艶な魅力を持ったキャラであり、リアンやアイザックが彼女を放っておけなくなってしまうのも然りなのである(そもそもにして、容姿がバツグンに男受けしそう)。本作品においては、チセやルーシーが恋愛には頓着しない性格なのもあってむしろ親愛の情すら芽生えているが、元来はあまり同性には好かれないタイプであるのは想像に難くない。シリアスなストーリーそのものよりも、そうした隠れた学園ドラマ的な要素の方が気になってしまったのは内緒。
<16位> ウマ娘 プリティーダービー Season3
評価:A-
お気に入りキャラ:トウカイテイオー
例のごとく史実はあえて伏せたまま視聴に挑んだが、キタサンが思いの外近年活躍した競走馬であったことに驚いた(『ウマ娘』の主役になること自体、伝説的に語り継がれてきた昔の名馬である印象だったので…)。そして、満を持して最終話後に読んだウィキペディアの文字数が凄まじい…!笑 シナリオ上では勝ったり負けたりを繰り返すキタサンのレースにどこか盛り上がり切らないものを感じていたが、こういう時は奇跡の復活を成し遂げたテイオーのようにドラマチックな「1勝」の方がより映えるなと。しかし、憧れのテイオーと同じ中山競馬場の有馬記念で最もキタサンらしい走りで有終の美を飾った姿はやはり感動的であり、今回の主役に抜擢されたのも大納得であった(最終話後に視聴した実際のレースも素晴らしかった!)。「逃げ」という武器で他を圧倒するのは稀有な才能であり、一度も先頭を譲らないその姿は実にカッコいいなと改めて感じ入った次第である。
<15位> 陰の実力者になりたくて! 2ndseason
評価:A-
お気に入りキャラ:666(ローズ・オリアナ)
まごうことなき俺TUEEE系の異世界転生ものでありながら、作者の優れた感性による小気味よい視聴感から替えのきかない独自の地位を築いている実力作品。今期の『ティアムーン帝国物語』然り、主人公が意図しないまま周りからどんどん祭り上げられてしまうという仕掛けは大いに自分の趣味嗜好に刺さるようで…(本作品の主人公は正真正銘のチート級実力者だが笑)。2期はかねてからのお気に入りキャラであるローズが準主人公級の扱いを受けており、ドラマチックな悲劇のヒロインっぷりからメインヒロインの座まで奪取してしまいそうな勢いであった。今更ながら、”シャドウ”ではなく”シド”に想いを寄せるヒロインは彼女だけなので(※ブラコンの姉は除く)、原作での人気も高いものと思われ…というか、自分のお気に入りのヒロインってそういうポジションがけっこう多いのよね。オタク共通の感性っていうのは、やはり否定できないなと感じる今日この頃である。
<14位> ダークギャザリング
評価:A
お気に入りキャラ:寶月夜宵 寶月詠子
「ここまでついてきたなら大丈夫でしょ?」と言わんばかりのホラー感マシマシな展開が印象的だった後半戦。特に「事故物件編」と「旧I水門編」はかなり描写がエグく、しばらくは肉団子が喉を通りそうにない。今更ながら「主要キャラだから大丈夫だろ」と「今回はさすがにお陀仏かも…」の天秤でハラハラさせる匙加減が中々に絶妙であり、ホラー耐性の低い自分はさぞ毎回のように作者にとって非常に良い視聴者になってしまっていることだろう。そんな中で夜宵の小学生とは思えない落ち着きぶりと胆力、詠子のヤンデレ&ストーカー気質という本作品の中核を成す魅力は健在であり、いい感じにホラー感を中和してくれているのは大いに助かっている。余談ではあるが、「卒業生」の殉國禁獄鬼軍曹が某「杉元」にしか見えないのは自分だけだろうか?見た目といい、不死身の肉体といい、女子供に甘い性質といい、完全に作者も狙っているとしか思えないのだが…笑
<13位> シャングリラ・フロンティア
評価:A
お気に入りキャラ:エムル
VRゲーム攻略型のヘタすれば安っぽさすら感じてしまいそうな題材でありながら、数々のクソゲー耐性を持ち理不尽上等のプレイヤースキル重視の攻略展開と、メインストーリーからは逸れるユニークシナリオやユニークモンスターの挿入が絶妙に”自分だけが味わえる特別感”をくすぐり、上手にこちらまで気持ち良くさせられてしまうのは見事。こうなってくると、某SAOのような「ゲーム内での死=現実の死」という設定こそむやみに緊張感を煽る安易な選択だったのではと思えてくるのだから、分からないものである。そして、さらに付加価値を高める要素としてエムルというNPCの存在があり、正直彼女(?)がいなかったら個人的に本作品の魅力は7割減していたといっても過言ではない。愛嬌のある可愛らしい容姿(人間Ver含む)といい、「〇〇ですわ!」という口調といい、サンラクに懐いている様子といい、今期№1ヒロインに相応しい実に縦横無尽な活躍ぶりであった。
<12位> Dr.STONE NEW WORLD
評価:A
お気に入りキャラ:コハク
遂に「Dr.STONE」というタイトル回収がなされ、いよいよ物語は最終章へ。まごうことなきトンデモ科学、そしてトンデモ医学ではあるがやはりその瞬間は感動的というほかなく、むしろよくぞここまで引っ張ったなと感心すらしてしまった。「おじちゃん」ことイバラがラスボスでは小物臭が過ぎると感じていたが、「ホワイマン」が石化王国にいなかったのには一安心。そしてここに来て”月へ行く”という人類史における偉大な到達点を目指すことになったのは、ここまで様々な人物の思いの結晶を積み上げてきた”科学王国”のラストエピソードとしてほぼ満点と言って良いだろう。その他、物語のサブ要素として個人的に気になるのはやはり千空とコハクの恋路の行方であり、本格的な恋愛には発展していないもののその信頼と親愛をしっかりと滲ませる関係性にはこの先を期待せざるを得ない。当然のごとく最終章のアニメ化も決定しているようで、実におありがてえ限りである。
<11位> め組の大吾 救国のオレンジ
評価:A
お気に入りキャラ:十朱大吾
最初に物語の山場(=将来における大吾と駿のバディとしての信頼関係)を先回り的に描いたのは好判断。原作は未読なのだが、これがアニメ化の際の演出であるなら賛辞を贈りたい。スポーツ系作品については、「“題材としての面白さ”なのか“作者の力量”なのか」はきちんと分別したいと常々考えているのだが、本作品についてもそれは同様である。その観点から判断しても、ドラマチックな現場の連続に感化されていると思う節はあるものの、その先がどうなるのか毎回惹き込まれてしまうのはやはり作者の類まれな”魅せ方”によるものも大きいのだろう。圧倒的少数の女性の特別救助隊員を目指す雪については、描き方次第では浮いて白ける存在になりかねないが、ヘビーな過去を抱えていることもあり常に緊迫感を纏う雰囲気には男目線からも思わず背筋が伸びてしまう。こうした”本気”を描ける作品は貴重なので、コンテンツの力として大切にしていきたい。
<10位> 豚のレバーは加熱しろ
評価:A
お気に入りキャラ:ジェス
天使のように心優しい美少女からいかに合法的に「豚さん♡」と呼んでもらうか、という萌豚なら誰もが夢見る至上命題に果敢にチャレンジした意欲作。結果、「主人公が豚に転生すればいいんじゃね?」(真理)というコロンブスの卵とも言うべきドストレートな発想に行き着いたようで、主人公と一緒にブヒブヒと鼻を鳴らし時に少女を困惑させながらもイチャイチャ(?)する日々を満喫できたのは僥倖であった。正直、本作品については”発想の勝利”の一言に尽き、メインストーリーはそこからの辻褄合わせに過ぎないぐらいの認識だったので、中盤から終盤にかけてのシリアスなストーリーには若干面食らってしまったのだが、序盤のノリのままギャグテイストの濃い作品として描いていたらどうなっていたのかは気になるところ。作者としてはシリアス展開に分があると踏んだ結果ではあるのだろうが、もう少し気楽に見られる作風であった方が正解であった気がしてならない。
<9位> カノジョも彼女 Season2
評価:A
お気に入りキャラ:水瀬渚
今期はまさかの100股作品と同時期の放送となったが、元祖として安定の面白さ。2期では咲の親友である紫乃まで本格参戦してますます混沌を極める様相に。個人的には紫乃はどちらかといえば要らない子だったので、理香の彼女に対する強い言葉もむしろ正論として擁護派。最終的には紫乃も開き直って対等(?)な立場となったが、今回一番躍進したのは実は理香だと思っている。暴力的なナイスバディを武器にした積極性&3股ではなくあくまでも略奪愛を狙う姿勢は咲&渚の正妻コンビの正当なお邪魔キャラに相応しく、自分が直也の立場だったらかなりグラついていたのは想像に難くない(直也もかなり危なかったが笑)。反面、お気に入りキャラの渚は咲も好きという姿勢を貫いたためかなり割を食ったが、たまに二人きりになった時に甘えられると破壊力が凄まじく、お祭り時のイチャコラでは個人的瞬間最大風速を観測した模様。やっぱ、彼女が理想的だなあ…。
<8位> 東京リベンジャーズ 天竺編
評価:A+
お気に入りキャラ:三ツ谷隆
今期で最後までやってくれるのかなと思いきやそれはお預けだったようで。原作勢からこの先の展開はなんとなく漏れ伝わってくるのだが、アニメ勢の自分にとってはなんだかんだハマリ続けている作品と言って良いだろう。いわゆる”戦闘力のインフレ”とは違うのだが、「愛美愛主」→「芭流覇羅」→「黒龍」→「天竺」と倒しても倒しても次のチームが出てくる展開は流石にこれで終止符だと信じたい。現代での直人の決死の覚悟と別れを経て最後の戦いに挑む武道であるが、背水の陣の覚悟とこれまで繋いできた思いが宿ったその背中は彼を強く大きく見せ、「オレが東卍のトップになる」というかつての言葉も現実味を帯びてきた(それにしても打たれ強過ぎである。)。個人的に印象的だったのは稀咲のヒナに対する執着の根幹であり、『エヴァ』の碇ゲンドウの時とは違ってその”純粋さ”がハッとさせられるようなカタルシスに繋がらなかったのはこれまでの行い故か。
<7位> ミギとダリ
評価:A+
お気に入りキャラ:一条華怜
当初のシュールコメディともいうべき双子の入れ替わり生活は個人的にはあまり刺さらず視聴断念の危機にすら瀕していたが、最終話で一気に評価が覆った。これは今期の1クール作品の中でも屈指の構成力を誇る作品と評するに相応しく、作者の力量を褒め称えたい。人が良いだけのピエロ的な役回りと思われた老夫婦がとっくの昔に真実に気が付いていたこと、「ふたりはひとり」であったミギとダリがそれぞれに夢を持ちお互いに異なる道を選択したこと、そして「チェリーパイ」というキーアイテムを中心にいつの間にか育まれていた義理の親子の絆に最後のピースである瑛二が加わることができたことが感慨深く、最後のこの場面のために全てがあったのだと確信せざるを得ない温かい光景であった。繰り返し、本作品のように最終話で一気に評価が覆ったのは稀有な体験であり、1クール作品とはかくあるべきという先例としてこれからの指標の一つにしていきたい。
<6位> 冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた
評価:A+
お気に入りキャラ:ミリアム サーシャ・ボルドー
これまたタイトル出落ち系のネタ作品かと思いきや、その想定以上にハートフルで芯のしっかりした内容には素直に感心させられた。最強となった娘が純粋に父親を慕うも、冒険者として多忙になりすぎてなかなか帰郷できずに仲間にぶー垂れるという一連のお約束の展開然り、隠居気味な生活を送っている元冒険者の父親がその実力を隠し切れずに皆に慕われ、あろうことか娘の活躍を通じて知り合った若い女性にまで好意を抱かれてしまうという展開然り、純粋に物語として頬が緩む場面が多く大いに惹き込まれるのである。タイトルの視点からして明らかなように、本作品の真の主人公はアンジェリンではなくベルグリフなのであり、これは彼を通じた親目線から娘を見守るという物語なのである。よって、親世代の年齢に差し掛かろうとする視聴者が気持ちよくなってしまう仕掛けが実は満載となっており、自分も例に漏れずそれにハマってしまった一人なのである。
<5位> 君のことが大大大大大好きな100人の彼女
評価:A+
お気に入りキャラ:花園羽香里
『カノジョも彼女』も真っ青のまさかの100股ラブコメディ。もちろん、そんな常識外れの人数に尺が追い付くはずはなく6/100を描くに留まったが、本当に100人分のキャラ設定とシナリオなんて用意できるのかしら…?主人公がちょっとズレた真面目系なのは、この手のハーレム系作品の最適解だと思っているので異論は無いところ。そして何より、アニメ化に際してのキャラデザ&作画がめちゃくちゃ素晴らしい!こうしたラブコメ作品においては視聴意欲に直結する要素なので、よくぞ最初から最後までこのクオリティを維持してくれたと作画班の方々のプロの仕事を労いたい。コメディ部分についても、これがアニメであることを意識したメタ発言などがテンポ良く挿入され視聴感は上々。なかなか言語化するのが難しいのだが、そうした”ラブ”と”コメディ”の黄金比や絶妙な間の取り方など、”ラブコメの呼吸”とも言うべきものに深い理解とセンスを感じる秀作であった。
【ヒロイン総評】
花園羽香里
原点にして頂点を地で行きそうなおバカで世話好きでかなりちょっとスケベな女の子。ムチムチバインなけしからん体型を武器に元気に迫ってくるのが股間に効果抜群であり、強制的に前かがみを強いられることもしばしば。メインヒロインという概念が本作品にあるのかは要議論だが、その”頂”に最も相応しいのは間違いない。
院田唐音
毎回、分かりやすすぎるツンデレ成分を提供してくれるギャルっぽい女の子。胸が小さいことに戦闘力不足を感じている描写も多いが、それを補って余りある”純”な可愛い性格をしており、最も主人公への惚れ込み具合が分かりやすく伝わってくるのがとても良い。主人公とのイチャラブシーンはこっちまで恥ずかしくなってしまう。
好本静
喋るのが苦手で常にスマホの音読機能で会話する本好きでもの静かな女の子。割と押しの強いメンツが多い中においてあえてその奥ゆかしさを武器にするバランサーであり、彼女の存在のおかげで主人公も我々も心を落ち着けて一呼吸置くことができるのである。とはいえ、音読機能によるギャグ成分の提供も中々侮れない。
栄逢凪乃
羽香里とはまた趣が異なるスレンダー系巨乳の知的なクールビューティー。こういう系統の子はノータイムで瀬戸麻沙美さんの担当という風潮は安直が過ぎるが、大正解なので全く異論は無い。当初は態度が頑なだったが、デレた後は「こうするのが最効率」を合言葉に真顔でストレートにアプローチしてくるのが破壊力抜群。
薬膳楠莉
幼児体型と大人体型を薬の効果で行き来するコ〇ンのような女の子。研究者キャラの性か、実に都合の良い薬の提供でシナリオの円滑な進行にも一役買っているのはお約束。天真爛漫なキャラで攻める方が有効とのメタ的な判断なのかほとんどの時間を幼児の姿で過ごしているが、たまに元の姿で迫られるのもまたたまらない。
花園羽々里
まさか羽香里の母親がヒロインになるとは…。娘に負けず劣らずの体型に大人の色香までブーストしているので色々掟破りである。13歳で人工授精により羽香里を身籠るという掟破りの設定で「20代にして高校生の母親&いまだに処女」という奇跡を実現。うん、もうここまで来たら好きにしたらいいんじゃないかな…(遠い目)。
<4位> ティアムーン帝国物語~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~
評価:A+
お気に入りキャラ:ミーア・ルーナ・ティアムーン
キャラデザに既視感があったので調べてみたら、『のんのんびより』『まちカドまぞく』などを担当した大塚舞さんの仕事だと分かり一気に注目作品に。革命によって処刑された某国の皇女が死後のタイムリープにより、”周囲は持ち得ない未来の情報”というアドバンテージをフル活用して断頭台へと繋がる未来からの大逆転を目指すストーリーは、わがまま三昧だった姫のまさかの変貌という周囲の驚きと”帝国の叡智”として彼女に心酔する勘違いが小気味よく、大いに楽しんで視聴できた。話の構造的な弱点をあえて挙げるなら、順調に”帝国の叡智”としてミーアが振る舞えているときは良いのだが、少しでも逆境になって彼女がしどろもどろになると途端にいたたまれない気持ちになってしまう点だろうか。順風満帆が過ぎるストーリーはどうしても安っぽくなってしまうのが常であるが、本作品については例外的にそれを求めたくなってしまったのは少し複雑ではあった。
<3位> 呪術廻戦 渋谷事変
評価:S-
お気に入りキャラ:釘崎野薔薇
毎週、鬼のように動きまくり作画班の亡霊が背後に見えそうな戦闘シーンの連続に敬礼。これまで馴染みの深かったキャラがあっけなく命を落とすことも珍しくなく、そういう意味でも緊張感は高く保たれていた。そして伏黒、釘崎という初期メンバーにまでその展開は牙をむき、特に釘崎の退場は回想シーンの演出も相まって非常にセンセーショナルであった。また、これらの主犯格として存分にヘイトを集めたであろう真人については、島﨑信長さんの好演が光りその狂気と生への執着が存分に盤面を支配していた。このようにメタ的な安全弁が働かない展開は読者の反応を伺っていてはとてもできないものであり、むしろ「これについてこれるか?」と言わんばかりの絶望の連続を突きつけた作者の判断を個人的には肯定したい。メタ的に先が読めてしまう安易な展開よりも、そこに一石を投じるような蛮勇があればこそ我々の心にも存分に爪痕を残せるのだろうから…。
<2位> 葬送のフリーレン
評価:S-
お気に入りキャラ:フリーレン
こうしたいわゆる“後日譚”が主題となる物語において、「おそらく次のラスボスが出てくるのでは」と予感した視聴者は自分だけではあるまい。しかし、それを否定し静かに50年が経過した後の世界で、“10年間の冒険”の残滓を巡る物語は、エルフという長命の種族と人間との“時間”の違いという現実を垣間見せながらも、だからこその感慨を我々と“彼女”自身の胸に絶え間なく注ぎ続ける。そしてそれは、彼女にとってこれまでは“持ち得なかったもの”であり、それに改めて会いに行く旅はかつてのそれとは全く意味の違うものとなった。静謐であり派手さはなくともその主題に深く首肯したくなる構造及び本作品が少年誌にて連載されているという事実には賛美を禁じ得ず、図らずも日本の漫画市場の老熟を感じることとなった。本作品に年少の読者が触れて何かを感じ取ってくれるのが実に楽しみであり、それはきっと未来の作品にも影響を与えていくに違いないだろう。
【余談】物語におけるフェルンの立ち位置
フリーレンがエルフという長命の種族であり、見た目も若々しく保てていることから時間の浪費に頓着しないのに対し、フェルンは普通の人間の少女であり、いわゆる”花の命は短くて”を本能的に理解しているのをヒシヒシと感じる。フリーレンが旅の途中にサラッと「10年泊まりたいから仕事紹介して」などど発言するのに対し、彼女が「1週間までですよ」と釘を刺す恒例の光景は、それが最も端的に表れた描写であるといえるだろう。つまり、フェルンは(長命の)フリーレンのペースに合わせていたらこちらはあっという間に年を取ってしまうといういわば”焦り”の感情を常に抱いているのである。この心情を前提にするなら、もっと邪険に扱われていてもよさそうなシュタルクと思いの外悪くない雰囲気を築いているのも納得で、気付いたら数十年が経っていてもおかしくない旅の貴重な少女時代に出会った同年代の少年という付加価値を彼は有しているのである。そういう意味では、二人の関係性にニヤリと頬を緩めつつも、どこか斜に構えた見方は否定できないのが本音である。
<1位> MFゴースト
評価:S-
お気に入りキャラ:片桐夏向(カナタ・リヴィントン) 北原望
人気シリーズ『頭文字D』における新世代の公道レース物語(ちなみに、同シリーズは全くの未履修)。装飾無しにとにかく「ただ走っているだけ」なのだが、その緻密に計算された”走り”を突き詰める主人公とシナリオにおけるバチバチの展開がとかく熱く、毎週の放送が楽しみで仕方がなかった。当然ながら各ドライバーたちがマシンをかっ飛ばす光景が画面の中心になることが多く、美麗な3DCGモデリングが獅子奮迅の活躍を見せていたのだが、もしこの作品を『SHIROBAKO』のみーちゃんが見ていたらどう思ったのかとしばし感慨に耽ってしまったのは自分だけだろうか。内田雄馬さんによる主人公のカタコト演技も素晴らしく、たまに発する英語も発音がカッコ良すぎたのだが何か特別なトレーニングを積んでいたのかしら…?本当にあっという間の1クールだったので続きが待ち遠しいが、原作のストックがあるならここからは定期的にアニメ化してくれることを切に望みたい。
<特別枠> 進撃の巨人 The Final Season 完結編 後編
評価:S
お気に入りキャラ:エレン・イェーガー
遂に一時代を築いた名作も完結。自分は原作勢であるのでここまでの感慨というよりは原作との印象の違いを探る方向性での視聴となったが、作者の剥き出しの表現がビンビンだった原作と比べると幾分マイルド寄りに感じた。思うに、自分が本作品(の特に終盤)を「エレンの物語」として彼の一人称かつ神視点を強く意識していたのに対し、アニメでは「皆の物語」という面を重視して演出していたからではないかと。エレンのヒールとしての在り方、そしてそうした選択肢を選ばざるを得なかった強さと弱さに深く感じ入っていた自分としては、より暗く深くネットリじっくりとした演出を望んでいたのだが、さすがに賛否両論が過ぎる結果になりそうか。そういう意味で、完結編に則して「プロフェッショナル 仕事の流儀」にてエレンにインタビューを行うという前代未聞の試みは実に刺さる内容であり、多分に遊び心がありつつも彼の内面を臆せずに抉り出す粋な仕事であった。
<劇場版5位> 大雪海のカイナ ほしのけんじゃ
評価:B+
お気に入りキャラ:リリハ
2023冬におけるTVシリーズ11話の後日譚…と言えば聞こえはいいが、TVシリーズでは結末が中途半端な引きを作っておいて、これでようやく完結したというのが実情である。物語のスケールは地球全体に発展しその壮大な過去の文明の意志には改めて息を飲んだし、何はともあれ完結まで持っていってくれたのには感謝であるが、このような「劇場版商法」とも言うべきやり口が増えていくようでは困るというのが本音。TVシリーズが12話でも13話でもなく11話であったことがその悪印象に拍車を掛けており、あえてそこで区切っておいて結末を劇場版に持ち越したと受け取られても仕方がないのではないだろうか。もうこうなったら開き直ってラブコメ成分のカサ増しに期待をしたかったが、カイナとリリハについては最低限、フラグを期待させたオリノガとアメロテについても尻切れトンボの描写に物足りず。案の定、初日でも客入りは最低限であったのは言うまでもない。
<劇場版4位> 駒田蒸留所へようこそ
評価:B+
お気に入りキャラ:河端朋子
P.A.WORKSの「お仕事シリーズ」最新作。期待値は当然のように高かったのだが、コミカルな要素を極力排除して硬派な路線に振り切った結果、これまでのシリーズでは目立たなかった「仕事」としての解像度の粗さが改めて明るみになってしまった印象。特に主人公の若手社員としての怠慢な姿勢にはかなりイライラさせられたし、やる気を出した後の奮闘ぶりはカタルシスを通り越して逆に腹が立ってきたぐらい。本来、本作品が描きたかった蒸留所の失われたウイスキーの復活のドラマという本筋以外の部分でこのようなフラストレーションを感じさせてしまうのは非常に勿体ないと言わざるを得ないが、蒸留所という仕事の描写としてももう少し踏み込んで欲しかったというのが本音。結果的に、同シリーズの魅力もなんだかんだキャラに寄せた描写に頼ったものだったのかと考えさせられてしまったし、今一度その辺りのバランス感覚を煮詰め直してほしいと感じた次第である。
<劇場版3位> 劇場版 SPY×FAMILY CODE: White
評価:A-
お気に入りキャラ:アーニャ・フォージャー フィオナ・フロスト
TVシリーズの放送中に劇場版を公開するのは商業的な観点から旨味があるのかは判断が難しいところであるが、ただでさえ新鮮な感想の執筆に悩まされるシリーズ作品で同時期にそれはちと勘弁と思ってしまうのもまた事実。家族旅行をテーマにした劇場版らしい展開と大規模なアクションシーンはいつも以上にツッコミどころ満点だったが、「脚本:大河内一楼」というテロップが燦然と輝いていたのを見逃さなかったのはきっと自分だけではあるまい。本劇場版では「はは」としてのヨルにアーニャがすっかり懐いている描写が多く見られたのは心にジンとくるものがあったが、彼女にとっては「ちち」の比重の方が高そうなのは本作品の重要なバランス要素なのでこれからも注目視したい。ヨルが「妻」として夫の浮気疑惑に悩む描写も微笑ましくて良かったが、(全くの誤解だったとはいえ)ロイドのあの程度の弁解で納得してしまうのにはさすがに心配になったなあ…笑
<劇場版2位> 青春ブタ野郎はランドセルガールの夢を見ない
評価:A+
お気に入りキャラ:双葉理央
『青ブタ』高校生編の最終章。「おでかけシスター」の後日譚である「兄妹」そして「親子」の物語は、まさしく咲太がこれまで各キャラと共に痛み・苦しみに真摯に向き合い乗り越え積み上げたきたものの集大成である。そして、彼自身が心地よい安易なハッピーエンドを否定し「愛すべきこの世界」という選択したのも当然のことだったといえよう。”家族の絆”というともすればお涙頂戴と捉えられてしまいがちな展開も、そうした実直な物語を経て成長した各キャラの心情を慮ることでグッサリと心に突き刺さる「今」という到達点は、本作品の偉大な功績である。今回は前作とあまり期間が離れておらず記憶が新しかったことが大きかったので、やはり流れというのは大事だなと身に染みる今日この頃。今後は「大学生編」も制作決定しているということだが、これにて一区切りなのは間違いないので、原作者、アニメ制作陣の皆様にはお疲れ様でしたと労いの言葉を贈りたい。
<劇場版1位> ガールズ&パンツァー 最終章 第4話
評価:S
お気に入りキャラ:澤梓
初っ端から最大戦力であるあんこうチームを失うという大逆境から始まる無限軌道杯準決勝。軍神・西住みほを欠いた状態でどのように見せ場を作るのかという憂慮も束の間、これまで戦力としては下位に属していたウサギさんチームの面々が大躍進。特に、車長の澤梓は「これで次の隊長は決まった」という最高評価を浴びる有能な指揮官ぶりを見せ、通称”一年生チーム”がこれだけ真剣にチーム全体を引っ張るまでに成長した姿に深い感慨を覚えた。また、サメさんチームのMk.Ⅳ戦車の性能が映える狭い地下道を利用した作戦然り、これまであまり光の当たらなかった部分に改めて活躍の場を与えた展開は見事。そして、当たり前のように劇場版クオリティを見せつける戦闘シーンは圧巻の一言。山場の雪道をスライドしながら敵味方の乱戦を繰り返す映像は至極極上であり、これだけ待たされた価値を十分に感じさせてくれる大満足の結果となったといえるだろう。
<2023秋アニメ総評>
その膨大な放送数から界隈がざわついていたように感じた今期。終わってみれば(自分にとっての)いつも通りの視聴数に落ち着いたというか落ち着くようにしたというか…。取捨選択で漏れてしまった作品の中にも今となっては惜しいと思えるものは少なかったように感じたので、上位作品の厚みはそこまでではなかったとも言えるのかもしれない。
そんな中で、フリーレン(『葬送のフリーレン』)、チセ(『魔法使いの嫁』)、アーニャ(『SPY×FAMILY』)、双葉理央(『青春ブタ野郎』シリーズ)と種崎敦美さんの活躍はめざましかった。今まさに旬を迎えている声優であるので、来年も引き続き飛躍の年になることを願っている。
自分の今期の一押し作品はご覧いただいたように『MFゴースト』となったが、これは多くの人の目には意外な結果に映ったのではないだろうか。「公道レース」という自分にとって未知数の分野を熱く描く作風はこれぞフェチズムと言うべきか、”その分野のオタク”である作者の前のめりの熱量がビンビンと伝わってくる感覚はやはり魅力的であり、”自然と雄弁になる”カテゴリを持つ者の強みを存分に味わうことができた。「自己満足」を突き詰めることが商売になるなんて、この世で最も幸せな瞬間の一つなのだから…。
また、上記の感想でも述べたように『ミギとダリ』では最終話で評価が急上昇するという久方ぶりの快感を得ることができた。このように1クールで綺麗にシナリオをまとめてくれる作品は本当に稀少になっており、コンスタントな供給が切に望まれるところである。そういう意味では、シナリオに自由度のある「アニメオリジナル作品」に期待したいところではあるのだが、近年は『リコリス・リコイル』が奇跡的な大ヒットを成し遂げた以外は中々質の高い作品に巡り合えないでいる。自由度の高いシナリオの妙を上手く活かした「アニメオリジナル作品」を見たいというのは常日頃から願っていることであるので、単発のアニメ映画ももう少し積極的に発掘していかないといけないと思い直した今日この頃である。
なお、今期で一番お気に入りの楽曲は、『葬送のフリーレン』のED「Anytime Anywhere」であった。
ヒンメルの死後における旅を経て変わっていきつつあるフリーレンの心を、美しい湖面のごとく透き通った表現で綴った歌詞とメロディーは大いに心に刺さるものがあり、一時期は狂ったようにヘビーローテーションをしていたものである。
『MFゴースト』のOP「JUNGLE FIRE feat. MOTSU」については、楽曲の良さもさることながら「ヤジキタ兄妹」の妹である北原望を演じていた芹澤優さんが歌っているというブースト効果が大きかった。作中の決め台詞である「OKアニキ!」(今更ながらこれって「OK寿一!」のオマージュなのかな…?)を筆頭にその勝気な性格のキャラの演技も心地よく、『私の推しは悪役令嬢。』の主人公であるレイのクレア様命の暴走気味の演技も素晴らしかったので、ひそかに来年辺りにブレイクするのではと期待している声優である。
また、密かに嬉しかったのが、『東京リベンジャーズ 天竺編』において、前シリーズの『聖夜決戦編』でのOPであった「ホワイトノイズ」が続投になったこと(歌詞は2番に変更)。実際は、制作側にとってはコスト削減的な側面もあったのかもしれないが、非常にお気に入りの楽曲だったので素直に嬉しいサプライズであった。
その他、賑やかで単純に見ていて楽しい気分になれる『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』のOP「大大大大大好きな君へ♡」もお気に入りだった。特にラブコメや日常系ってOPの出来が良いと一気に評価が高くなることも多いから、けっこう重要な要素よね。
そして、『Dr.STONE NEW WORLD』のED「好きにしなよ」の映像はサンドアートの演出がエモすぎて最の高だった。千空とコハクの言葉は要らない関係性って、やっぱめちゃくちゃ好きだなあ…。
さて、秋アニメの感想は年末年始の休みがあるからとのんびり構えていましたが、意外と時間があるようで無かったので頑張って年内でなんとか書き上げました笑
ここまで記事を読んでくれた方は大変ありがとうございました!
最後になりましたが、今年も大変お世話になりました。
来年も変わらず執筆活動を続けていきたいと思いますので、引き続き何卒よろしくお願いいたします。
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