豆料理愛好家(ミネストローネ)|酒と肴 その九十
食べるのはもちろん作るのも好きなので、『天然生活』や『クロワッサン』の料理特集は必ず目を通します。
記事に登場する料理家の皆さんに憧れて、「豆料理研究家」と呼ばれる自分を想像するのは、大概濃いめのソーダ割で酩酊している時です。
素面で暮らすには、ちょいとささくれだったこの憂き世。アルコール中心主義者の自覚はありますが、アディクションはおこがましくて謳えません。同じ感覚で料理家や研究家なんて恐れ多く、名乗るのであれば愛好家あたりが丁度良いと思われます。身の程を知るのは大事なことです。
世間の荒波にもまれる中肉中背中年男子、何者にもなれぬまま、いつまで経っても終わらぬ自分探し。そろそろ青い鳥を捕まえて、大人になったチルチルとミチルの三人、焼き鳥をつまみに中ジョッキをやりたいものです。
そんな自称・豆料理愛好家のワタクシが、長いこと避けていたのがミネストローネ。
まだ豆の奥深さに気付かぬ子ども時代、何で食べたか、トマト味の酸っぱい豆のスープと苦手認定したまま、いい大人になってしまいました。
初めての記憶は後に残るものでして、ミネストローネのレシピに出会っても、チラ見しては読み飛ばす後ろ向きな日々。幼い頃の印象のまま定番と向き合わないのもどうかと思い、この度チャレンジしてみました。
料理研究家リュウジさんのレシピで作ります。
それにしても世の中がこんなに便利になっているとは知りませんでした。食材の切り方や料理の手順、さらにはコツまでもが、分かりやすく無料の動画で紹介されていて驚きです。
偏屈なところがありまして、新しいメディアよりも、昔ながらのものやピークを過ぎたものに惹かれる傾向があります。自分の容量から逆算して考えるに、新しいものや上り調子にあるものを受け容れる余地がないのでしょう。馴染みのものを組み合わせ、少しでも隙間ができたら、そこにはお酒を流し込みたいのが本音です。
こうして作った初ミネストローネ、味見の段階からビール泥棒でした。酸っぱいスープから酒のつまみにイメージが上書きされます。酸味ではなく旨味がまさり、大変美味しゅうございました。
アルコールばかりで栄養が偏りがちな年末年始、お野菜がしっかり摂れる、身体に優しい一皿です。
気づけばインフルエンザに、またぞろ件のウイルスが流行り出しました。温かいスープを飲んで、みなさま佳きクリスマスをお迎えくださいませ。
メニューと材料
・ミネストローネ(大豆、ホールトマト、ベーコン、玉ねぎ、人参、ジャガイモ、キャベツ、ニンニク、日本酒、塩、オレガノ、パセリ)