余白の大事(鰹と漬け物)|酒と肴 その八十二
という訳で、ここしばらくは①-⑧なばっかりに、週末はすぐ②-⑩になって、どうにも③-⑥な状態。そのせいか④-⑦した雰囲気で、noteに至っては⑤-⑨になるのでした。
よろしくないですね。何かひとつに負荷が掛かり、繋がるあちこちに皺寄せが出るのって。
仕事の忙しさを言い訳に呑みすぎて、結果として疲れが取れず家の空気も悪化。終いには文章にまで影響するのだから始末に負えません。
それでもようやく出口が見えてきたと言いますか、繁忙モードにも慣れてきました。年齢的に疲れは残りますが、心には一寸余裕が生まれたのです。
最近は買い置きの大型焼酎で済ませることが多かった晩酌。この日は久し振りに日本酒を用意しました。何故ならそう、近所のスーパーに「朝獲れ生カツオ」が入荷するからです。
勢い余って開店と同時にお店に乗り込みますが、お目当てのブツは無し。慌ててチラシを見返すと「午後4時以降に入荷」の文字。興奮して我を忘れた自分が恥ずかしいです。大人しく帰って、溜まっていた仕事を片付けます。
それにしても鰹が待っているかと思うと、業務も捗るのですから現金なもの。越後長岡の血筋と聞いていましたが、もしかしたら江戸っ子要素もあるかもです。
やがて時が来て、台所には山盛り大葉を添えた初鰹と、仕込んでいた塩酒粕漬けが並びました。
ここでいきなり冷や酒をあおっては、疲れた身体によろしくありません。心臓に遠いところから水をかけるように、まずは胡瓜をひと齧り。水分と塩気で酒を迎える体制を整えます。
そこに真澄のYAWARAKA TYPE-1を含めば、忙しさで強張っていた心が、ほどけるように解き放たれます。
舌と喉の準備体操が終わったので、ようやく本番。厚切りにした鰹にたっぷりの大葉をのせて頂きます。用意した小皿はふたつ。ひとつは定番の辛子醤油、もうひとつにはおろし生姜に塩と胡麻油、レモンを加えたものです。
口に運べば大葉の千切れる食感のあとにやってくる鰹の弾力。ツンとした辛子醤油とあっさりした赤身が混じり合って、口の中に五月の薫風が吹き抜けます。
余韻もお酒で包んで流し込み、目線を上げれば心なしか機嫌良さげな家人の姿。白目になることが多かったこの数ヶ月ですが、あらためて、穏やかな気持ちで過ごすことの大事を知りました。
……とまあ、これを書いている間にもお仕事では新たなトラブルが発生中。スマホのチャット通知が鳴り止みませんけれど、こんな句が浮かぶ位ですからきっと大丈夫なはず。
「メニィ大葉 山とモリマス 初鰹」
心に余白を持っておけば、大概のことは不思議とどうにかなります。それでもダメならお酒を呑んで、修羅場が過ぎるのを待つのがいいでしょう。
メニューと材料
・初鰹(鰹、大葉)
・塩酒粕漬け(酒粕、水、塩、砂糖、蕪、茗荷、胡瓜)
■□■ 一箱本の市@熊谷太原堂のお知らせ ■□■
6月10日(土)12:00〜18:00は埼玉県熊谷市にある太原堂で開催される一箱本の市に出店します。酒と料理の読み物を中心に、もしかしたらちょっとばかり艶っぽい本、数量限定で長野県の美味しいものも販売します。
最新情報はtwitterにて。