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油吸う茄子の嘘つき(揚げ浸し)|酒と肴 その三十四

職場で頂いた長茄子。自己主張が強く、ビニール袋からはみ出すので持ち帰りに苦労しました。オリンピックで警備が強化されている折、職務質問を受けたら気まずい一品です。バールのようなものに見えなくもないですが、疑われるのはやはり公然わいせつあたりでしょうか。

猛烈な暑さのせいで、梅雨が明けたばかりなのに体が参っています。原因は水分補給に気を取られ、栄養補給を疎かにしたこと。麦芽とホップだけでは夏を乗り切れないので、旬の野菜を素揚げにしました。

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久しぶりの揚げ物は火傷に注意が必要です。油が跳ねてもすぐに冷やせるよう、各種取り揃えた心の救急箱からキン冷えした缶ビールを用意。これで準備は万端、安心して料理ができます。
揚げたてのジャンボししとうと万願寺とうがらしは、シンプルに塩で頂きます。この季節、食中毒が心配なので、口から喉、胃にかけてのアルコール消毒も怠りません。
いつも通り昼酒をしているだけに見えますが、あくまで治療や予防に準じた行為であることをご理解ください。

説得力がありませんので、話題を逸らします。

皆さんは茄子の連中に騙されたことはありませんか?

フライパンの中、オイルで黒光りしたあいつらが
「俺たち油好きっす! いくらでも吸えます、もっとください!」
みたいな態度をしてくるのはご存知と思います。

たっぷり入れたキャノーラ油がどんどん無くなるので、こっちも「そんなに言うならもう少し足しとくか」って追い油する訳ですよ。そしたら
「すいませーん、やっぱ無理でした。せーの、おえー」
てな感じで、いったん吸った油を出してくるのです。「さっきまでの勢い、どこ行ったんだよ……」そう思ったのは一度や二度ではありません。まったく奴らは涼しい顔して嘘をつきます。

まあ、こちらも油の量にびびって「揚げる」と言うより「揚げ焼き」レベルに抑えているのも良くないですが、あの態度はどうかと思います。酒の覚えたてじゃないんですから、そろそろ適量を覚えて欲しいものです。

そんな茄子の素揚げは麺つゆに浸し、冷蔵庫でしばらく頭を冷やしてもらいます。

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暗い冷蔵庫の中ですっかり反省したのか、出てくると立派な「揚げ浸し」になっていました。おかげでビールのおつまみやそうめんのトッピングに大活躍。結果、こちらが飲み過ぎるという不始末をやらかしました。

連休の二日目、朝から天井が回る不思議なアトラクションを体験しています。いい大人がこれでは示しがつきません。茄子のことをあれこれ言う前に、今年の夏は我が身を正すことにします。

メニューと材料
・揚げびたし(長茄子、麺つゆ、生姜)
・素揚げ(ジャンボししとう、万願寺とうがらし、塩)

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豆千|飲食系書店
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