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夏仕舞い|日々の雑記 #83
長っ尻の夏が重い腰を浮かせた8月の終わり、サニーデイもかせきも、フィッシュマンズも聴いてない事に、はたと気づきました。
これまでは生活の中で当たり前の様に流れていた音楽。そのくせ、猛暑を理由にビールを呑む時間はたっぷりあったのですから、忙しさは言い訳になりません。
酔いで研ぎ澄まされた感覚は、回る天井を飛び越え、もはや地球の自転を知覚する程。心臓の鼓動も感じられます。
だけど「真夏のピークが去った」という、天気予報士のコメントは聞き逃しましたし、久しぶりに訪れた海も、Tシャツのまま泳ぎ出すことはありませんでした。
鋭敏だと思っていたのは、酔いがもたらす勘違いと単なる動悸だったのです。
夏に覚えた胸の高鳴りは、一体いつから失われたのでしょうか。
それはきっと女の子たちとの会話で震えなくなってからですかね。
……嘘です、見栄をはりました。今でも震えますし、お酒を呑まないと顕著です。
たぶん私の場合、持っていたプレイヤーを手放して、スマホのサブスクで音楽を聴くようになってからだと思います。
サブスクが悪いとかではなく、1枚のCDやレコードに掛ける思い入れ、熱量が減った時に、鳴りを潜めたに違いありません。
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頂き物の野菜で晩飯の支度をしながら、一寸ばかしおセンチになったのは、やはり季節が変わろうとしているからでしょう。頭の中では取り留めなく、夏の曲が思い出されます。センチメンタルバスの『Sunny Day Sunday』が脳内再生されたのは、心象風景にまで駄洒落に侵されているからです。
ですが感傷的だからといって呑まない事はなく、青唐辛子の味噌漬けを仕込みつつ、ビールをやっつけます。
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昨年作った青唐辛子の味噌漬けはもう終わりました。最後は味噌ばかりでしたが、きゅうりに焼きおにぎり、酒の肴と、暑さで食欲のない日は大変お世話になりました。
さて、9月に入ったのに、延長戦みたいな暑さが続いています。既視感のある風景は、まるでタッチの再放送の様。おかげでこの夏との、最後の一戦に臨むことができました。
クーラーを切った部屋で汗と音楽を流しながら、県予選ばりに片っ端からビールを空けていきます。そして迎えた決勝戦は10回の裏、ツーアウト、ランナー2塁。須見工の新田を思わせるロング缶と真っ向勝負をして、この夏に区切りをつけます。
試合を終え、窓からの南風には微かに秋の気配が混じっています。生憎、南ちゃんが見当たりませんが、私も達也ではなく、ましてや和也でもありません。
さあ、次の季節に向かいましょう。
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