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鬼の念仏(豆とタコのマリネ)|酒と肴 その二十

昨日は節分、豆まきの日でした。

昨年来、話題の尽きない鬼ですが、中高年にとって身近な鬼と言えば鬼平、鬼ひび、鬼ころし。時間の隙間、お腹の隙間、心の隙間を埋めてくれる頼もしい鬼たちです。
いざと言うの時のため、私のリュックには大概どれか二つは入っています。

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それにしても「鬼嫁」に代表されるよう、鬼には怖い印象があります。また「鬼は人の心に棲む」なんて恐ろしい言葉も聞きます。

だけどそんなイメージを覆すのが大津絵に登場する鬼たち。去年、東京駅の美術館で展覧会が開催されていました。
大津絵とは、江戸の頃に東海道の大津宿で量産されていた、お土産用の絵画のことで、鬼の念仏という画題が有名です。浮世絵よりもゆるい雰囲気にあふれ、描かれている鬼もヘタウマな魅力があります。

いかがですか?こんなユーモラスな姿を知ってしまうと、もう豆をぶつけるなんて出来ません。むしろ飲み屋で隣になったら、楽しく飲めそうな気がしてきます。

そんな気持ちから、節分で虐げられた鬼たちと仲良くなるための晩酌セットを用意しました。

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黒太い巻き寿司を丸かじりさせる関西発祥のプレイ(恵方巻き)も検討しましたが、人と鬼のおっさんが二人でそんなことをしていても地獄絵図なので止めておきます。

肴は鉄鍋で熱した炒り豆ではなく、茹でた豆を使ったタコのマリネ。昨日は柊鰯の棘と匂いで責め立てられたでしょうから、柔らかなバジルと、同じ鰯でも、食欲をそそる香りのアンチョビで風味づけしました。
合わせるお酒は立春朝搾りの天覧山、間違っても鬼ころしは出しません。今朝、搾られたばかりのおめでたい新酒を冷やで頂けば、距離が縮まること請け合いです。

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食後には甘味も大事。強面ほど案外スイーツ好きだったりするので、白玉にあんこを添えます。畜生の餌(犬、猿、雉に食べさせる団子)にはアレルギーもあるでしょうから、選択肢から外しました。

こんな具合にお酒を酌み交わせば距離も縮まって、何なら二軒目(豹柄や虎柄の似合うママがいるスナック)に行く算段が始まるかもしれません。おっさんが自分の行きつけのスナックに誘うのは、友情の証みたいなものです。

いずれにせよ、毎年この時期には散々な目に遭う悲しい鬼たち。そりゃ私たちが地獄に落ちたら責め苦を負わされるのも納得です。
我ながら天国には縁のない人間ですので、今のうちから彼らと仲良くしておくのも必要かと思います。よろしければ皆様もご参考にしてください。

メニューと材料
・豆とタコのマリネ(青大豆、たこ、バジル、アンチョビペースト、ニンニク、オリーブ油、レモン汁、塩、胡椒)

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