やさしい和菓子の世界〜練り切り・こなし編〜
和菓子屋で10年の修行を経てお店を開いています
練り切りとは
練り切りは餅粉を水で練って耳たぶくらいの固さにして茹でます。これを水分をある程度飛ばした白あんに混ぜ合わせてさらに水分を飛ばすように練り上げて裏ごしし、ひとまとめにしたものをちぎってまとめて冷まし、ちぎってまとめて冷ましを繰り返して作ったものです。
裏ごししたものをそのまま置いとけば冷めるのでは?と思われたかもしれませんが、練り切りはあんこの水分をある程度飛ばして作ったものなので乾燥しやすいんです。
そのまま置いて冷ますとカピカピになってしまうので冷ましながら都度まとめて乾燥しないようにしてるんです。ちぎるのは早く冷ますためです。塊で置いておくよりは早く冷めますから。
これは簡単な作り方ですがお店によってはこの餅粉となるつなぎが違います。
山の芋を使った薯蕷練り切り(じょうよねりきり)や、求肥を使った求肥練り切り(ぎゅうひねりきり)、あとはこれらを組み合わせたものとか百合根を使ったりとか。
こしあんを使って作った小豆練り切り(しょうずねりきり)なんかもあります。
お店のあんの味とつなぎによって味わいが変わります。
中はだいたいこしあんを包みます。
こなし
白あんに小麦粉、上用粉、上白糖などを入れて蒸しあげてから、手にシロップをつけてこねていきます。このこねる→こなすからきています。
シロップは砂糖と水を沸騰させたものを使用します。
この蜜で硬さを調節していきます。
練り切りよりも固く、食感がもちもちしています。
京都はこなしが多いですが練り切りよりも固いので細かい細工には向いていません。
昔は関西はこなし、関東は練り切りと言われていましたが、今はどちらも関係なく使われています。
練り切りと似たような見た目ですが全てあんでできている練り切りとは味わいも違います。
茶道といえば練り切り?
茶道では和菓子って脇役なんですよ。
お茶席というおもてなし(ちゃんとしたお茶席では料理も出ますから)に添えるお菓子といった感じなので、この主催する方がこうゆう感じのものがいいって決めるんです。
それを和菓子職人がこういう感じですか?みたいにして作るだけ。
こうして茶道と和菓子は繋がってるんですが、別に和菓子でなくてもいいんです。
おもてなしのためのお菓子なので洋菓子でもいいんですよ。
メインはもてなすことですから。
お茶席のお菓子でおもてなしすると、用意したお花や掛け軸、お菓子のことお客さんに聞かれるんですよ。こういうの茶道のお稽古でやりました。
こういう一連の流れを勉強するんですけど、もてなすことだけでなく、もてなしされる側も練習するんです。
お菓子はこのお菓子なんですか?って直球で聞かずに「菓銘(かめい)は?」と聞くんです。
オツな聞き方するんですよ。もちろん主催側も用意してる。
たとえばきのこの山がお菓子として出てきたとする。
菓銘は?と聞くと
山里の恵です
とか答える。きのこの山から秋の里の恵みを連想させて、お客さんはもう秋ですね〜なんてその場を楽しむわけです。
こういうのお稽古でやるんですよ。
聞かれる時もあればない時もあります。お客さん次第ですからね。
↓初めて菓銘を知った話です
練り切りのデザイン
茶道に出てくる練り切りのデザインは主に花鳥風月、花とか鳥とか風景とか情景とかで表現することが多く、その時の季節によって変わります。
店頭で販売されてる練り切りも季節のものが多いですね。
最近では練り切りアートのような花鳥風月関係ないものもあったりしますが、桜はこう、とか紅葉はこうというような定形なデザインもあったりします。
↓桜の定型は右側のピンクのやつです
老舗のお店には昔の菓子職人がデザインした菓子帳なんかも残ってたりしていて、だいたい形ってすでに江戸時代あたりでは完成されてたとか。
こういうの見て勉強して自分なりに表現するので、昔の人は本当に想像力豊かというかすごいですよね。
私はシンプルなものが好きなのでわりとかわいい系になってしまいますが、ほんとに技術持ってるひとは本物みたいに表現したりとかする方もいてすごい人たくさんいますよ!芸術的な感じ。
表現が幅広くて扱いやすいので練り切りは和菓子の代表選手的な位置だし、お茶の世界でも練り切りは格式高いお菓子として扱われています。
上生菓子と言われるくらいですから。
かわいいから芸術的まで、この小さいお菓子にいろんな世界が詰め込まれています。
お菓子を通して見える向こう側の世界を感じるまさに五感の芸術といわれる所以なのです。
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