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スオミは言い訳をしない

駆け出しのライターとして出会ったメンバーたちが、毎回特定のテーマに沿って好きなように書いていく「日刊かきあつめ」です。

今回のテーマは「#言い訳」です。

「言い訳」ってあまり良くないと思っていても、やっぱり言い訳をしたくなる。「自分を正当化したい」「この場から逃れたい」と、御託を並べて奮闘している姿が愛らしく見えることを祈るばかりだ。

言い訳を一切言わずに、貫き通せたら良いなと思う。


さて、三谷幸喜監督の最新作『スオミの話をしよう』を観てきた。

(あらすじ)突然行方をくらませた、大富豪の妻・スオミ。スオミの失踪を知り、夫が住む豪邸に集結したのは、彼女を愛した5人の男たち。しかし、彼らがそれぞれに語るスオミのイメージは、見た目も、性格も、全く異なるものだった。一体、スオミの正体とは?ひとつの屋敷を舞台に、三谷幸喜真骨頂!サスペンス・コメディの幕が上がる―!

Filmarksより

(この記事はネタバレを含みます)

三谷幸喜監督が長澤まさみの才能にほれ込んで「長澤まさみという女優の代表作にしたい」というほどの映画だと聞いたので、一応劇場に見に行った。

代表的なレビューを見てみる。

否定的なレビュー
「薄味のダー子」

長澤まさみさんの演じるスオミが、『コンフィデンスマンJP』のダー子と似ているものの、キャラクターに深みが足りず「薄味のダー子」と表現されています。ストーリーに驚きや爽快感がなく、全体的に「劣化版コンフィデンスマンJP」と感じられるという意見がありました​
日刊サイゾー
「見どころがない映画」
長澤まさみの美しさ以外に見どころがない映画であり、三谷幸喜監督作品の中でも過去最低との批判も。意外な展開がなく、登場人物が騒いでいるだけで物語としての起伏がないと指摘されています。楽しめるのは出演者のファンだけという辛口評価です​
映画の時間
「ストーリーが嘘っぽい」
ストーリーが嘘っぽく、キャラクターの行動に現実味がないとする声もあります。「長澤まさみを鑑賞するためだけの映画」という表現で、物語の内容や深みよりも彼女の存在に重きを置いていることを批判しています​
映画の時間

chatGPTより

肯定的なレビュー
「長澤まさみの魅力が詰まった作品」

三谷幸喜監督が長澤まさみの魅力を存分に引き出しており、彼女の演技の幅やコメディセンスが堪能できると好評です。長澤まさみでなければスオミというキャラクターは成り立たないという絶賛の声もあります​
シネマトゥデイ
「演技合戦の見応え」
豪華キャスト陣の演技合戦が楽しめ、特にリビングでのシーンが見応え十分だという評価も見られます。舞台劇のような緊張感とリハーサルの緻密さが伝わり、映画ならではのエンタメ色を感じられるとしています​
シネマトゥデイ
「良くも悪くも三谷幸喜作品」
作品に賛否はあるものの、三谷幸喜監督らしいユーモアと演出が楽しめるという声もあります。長澤まさみだけでなく、共演する男性俳優たちも良かったという肯定的な意見もあります​
映画の時間

chatGPTより

どちらの意見も頷けるところが多い。脳みそ空っぽにして観れる良きエンタメではあるが、ミステリー要素を求めると俄然もの足りなくなる。

ひとつ興味が湧いたのが「スオミ」という人物が出来上がる生い立ちだ。

彼女の母親は3回結婚していることが、スオミが高校生時代の回想シーンで明かされる(スオミの母親役も長澤まさみが演じて、夢の共演(合成)と話題になった)。

「この子はね、どの夫とも仲良くなれるの。」と先生に話す母親の何気ない一言。おそらくスオミは、小さいころから何度も言われているだろう。
このシーンが示唆するのは「母親のせいで、スオミは相手の理想の姿を完璧に演じることができる娘になってしまった」ということ。つまりスオミの人格形成は母親の呪いであるのだと。その呪いから脱するために、姿を消し、狂言誘拐をしたのが物語の大筋だ。

しかしスオミは、自ら母親のことを言い訳にはしない。母親のせいだから、この生き方しかできないのだと、言い訳しても良いはずなのに。

ただただ「ヘルシンキ」に行きたかったと言う。

でも私には
もっと好きなものがあるの
それが ヘルシンキ ヘルシンキ ヘルシンキ ヘルシンキ・・・

映画のEDテーマ

唐突に表れたヘルシンキ(一応、スオミの実父が外交官で、彼が好きだった街がヘルシンキという設定はある)に面を食らったのだが、「好きなもの」に夢中になることが、母の呪いを突破する方法なのだ。スオミにとってそれは、愛でもお金でも生活ではなく、ヘルシンキだった。母親の呪いを解き、新しい自分を見つける可能性がヘルシンキだった。

結果、どうなったかはぜひ映画を観てほしい。

まとめると、「スオミの話をしよう」は、スオミの周りの人たちが「言い訳」を延々と繰り返し、スオミ本人は言い訳もせずスパッと生きていく、そんな話だったように思う。

執筆:真央
編集:アカ ヨシロウ

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