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フランソア喫茶室

確か中学校の修学旅行で初めて京都へ行ったときだったと思う。同じグループの数人で高瀬川の辺りを歩いているときに偶然見つけたのが、"フランソア喫茶室"だった。

当時古着やレトロな雰囲気のものが好きだった私は、細い川をはさんだ向こうに見えたそのお店の佇まいに惹かれ、でもあまりにひっそりしていたのであまり来る人もいないさびれたお店なのだと思い込んでいた。

ところが後々雑誌か何かでたまたまフランソアについての記事を読み、えっ、これってあの!?とびっくりして場所を調べたらやはり私が気になっていたあのお店。有名な芸術家も通った歴史ある喫茶店だったのだ。

歴史ある建物や文化の薫りのするものへの憧れも強かった私は、そんな素敵なお店を自分の目で見つけてしまった!と舞い上がり、フランソアは絶対に行ってみたい憧れのお店になった。


なのに。

大人になって何度も京都へ行く機会があったけれど、私はまだ一度もフランソアに行ったことがない。おいしそうなスイーツや素敵な食器や紅葉のきれいなお寺などなどに気を取られ、フランソアのことなんてすっかり忘れてしまっていたのだった。


そして今日。

旅先で部屋の温泉に浸かりながら幸せな気持ちで本を読んでいたら、そこにその名前があった。

"フランソア喫茶室"

わーっと、憧れの気持ちと、初めて見つけたときの映像がよみがえった。あんなに行ってみたいと思っていたのに、どうして忘れていたんだろう。

お風呂から出てすぐにスマートフォンで検索すると、憧れのフランソアが、堂々と現実のものとして画面に現れた。鮮明な写真に加えて、感染防止対策とかメニューについてのお知らせとか、リアルな情報もしっかりと。私の思い出の中では儚い夢のようなイメージだったのに、こんなにしっかりと今に存在しているお店だった。

ちょうど、京都に住んでいる友達にこの情勢が落ち着いたら会いに行きたいな、と思っていたところだ。今度京都に行ったら今度こそ絶対にフランソアに行くんだ、と心に決めた。



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