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「どうしよう」 くぐもった遼太郎さんの声。彼に頭から抱きかかえられている。 街角の路上。 行き交う人達も特に気にすることはない、クリスマスの夜。 「どうしましょう」 私も合わせるように言った。たぶん同じことを考えている。 「離れたくない」 「…はい」 それで、一緒にメトロに乗り込んだ。 * * * * * * * * * * * 遼太郎さんにしばらくぶりに呼び出された。 彼は6つ上の元上司で、ずっと憧れの存在だった。 私が今年退職した後、偶然街で再会し、それをき
7月8日。 思えば狂った一日だった。 そもそも僕が電車に乗る事自体が最近は珍しくなりつつもあったが、それがしかもトラブル収拾のために客先に向かう、という名目だったから、尚更イレギュラーだった。 上司は僕のコミュ障(それは発達障がいに起因し、性格のためではない)を理解してくれているので、最寄駅で営業系の社員を待たせてくれており、そこで落ち合って2人で向うことになっていた。 そして普段全く乗り慣れない路線。通勤ラッシュ時間を避けられたのが幸いだった。 雨だった天気予報は外れ、