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イノシシ食べたい


(約2,000文字です)


久しぶりに冬、関東圏にある義実家で一泊した。


私はキャンプが大好きだ。

義実家は、そんな私でも気を抜けない場所。

容赦ない寒さ、かなりのテコ入れが必要な設備、そして、、、が出る。

は、これまで滅多に出なかったのだが、昨年は県内で目撃情報が激増したそうだ。

一応、義実家近くでは、まだ大丈夫とのこと。

ただ、ヒロシがクマに怯える姿を大げさ〜などと、そのうち笑っていられなくなるかもしれない。


とにかく今回は、お義父さんに

ある事をしっかりお伝えしよう!

と意を決して向かった。



これまで、熊こそ出なかったがには相当悩まされてきた。

今は亡きお義母さんの畑も結構荒らされたし、、、。

生ゴミなどは地面に穴を掘る「お手軽コンポスト」で堆肥に変えてしまうのだが、浅いと猪にゴミを食い散らかされてしまう。

深く掘らないとなんだー
と、お義母さんは嘆いていた。


今回も山に入ってみると、地面がボコボコに掘り返されていた。

猪たちは冬、虫を探し、食べるのだ。

そんなわけで、義実家は罠師さんが害獣を獲る狩場にもなっている。

毎年、お義父さんから「デッカいイノシシが獲れた」と電話が来ると、

「これで安心ですね」

と、良き嫁は共に喜ぶ。

すごく、喜ぶ。



お義父さんはいつも野菜やお米を送ってくれる。
(いつも本当に助かってます!感謝〜)




しかし、、、


猪肉が我が家に届くことはなかった。





私は、猪肉が大好物である。


7、8年前、夫が千葉の魚屋さんで買ってきた冷凍猪肉を食べて以来、一家中でその美味さに目覚めたのだった。


豚は、野生の猪を品種改良した家畜である。

猪肉は豚と比べると、しっかりとした歯応えがあり、味が濃くて脂身には甘みが感じられる。

我が家で猪料理といえば、すき焼き一辺倒だ。


今回行くにあたっては、やはりその辺のとこをきちっとお伝えしなければと思った。


着いた日の晩。

子供は眠たそうだったので、早めに寝かせることになり、夫が部屋の準備をしに泊まる部屋に向かう。

石油ストーブで部屋を暖めておかないと、夜は電気毛布とシュラフのみで眠るからだ。


ジィジ、お休みなさい

オゥ、よく寝るんだよ〜

孫に目を細めながらお義父さんは、晩酌のワインを傾ける。



2020年の春以降、コロナで、来る機会は確実に減ってしまった。

やがて、夫とここに住む事になる。(多分)

山の管理の仕方も含め、教わっておかなければならないことは文字通り山のようにある。

植林後の下草の刈り方、頻度、川のそばに植える木、あと、、、とにかく、いろいろある。

水源も守らなければならない。

教科書に書いてある訳ではない。

うちの山には、うちの山の管理の仕方がある。

正直、梅と桃の違いを見分けるのも怪しい嫁だ。

私は、思いつくままお義父さんに質問する。

罠師さんのこと、罠の確認方法、どう猪を処理するのか、そして、その行方など、、、


あれ?

なんか、猪のことばかり聞いてる???


それでも、お義父さんはちゃんと教えてくれた。


罠は罠師さんが仕掛け、お義父さんが見回る。そして、かかっていたら罠師さんを呼ぶのだそうだ。

その後、罠師さんが仕留め、解体もする。

それで、それで、それで?

御礼として一部いただけるそうだ。


それで?


配ってしまうんだー


との事だった。

お義父さんは料理をしないので、当然である。

できれば、配る先に入りたい、と思った。


もう、ここで言うしかない!



お義父さん、

私イノシシ、大好物なんです。

獲れたイノシシ食べたいので、

是非送ってください‼️






、、、さすがに言えなかった。



なんか淺ましい?

いや、厚かましい?

アイデンティティにちょっと悩んだが、それでも、やっぱり諦めるわけにはいかない。


そこで、コソクな手段に出た。


〇〇(孫)は、

猪、大好きなんですよ!


お義父さんが途端に真顔になった。

んー?

〇〇は猪、食べるのか?


はい。

大好物ですよ🩷



お義父さんには、意外だったようだ。

夫は無類の魚好きだが、嫁は肉食獣のため、我が家の魚肉の割合は実は半々である。


そうか、、、

まだ、冷凍庫に入ってなかったかぁ?

と、立ちあがろうとした。

いいえ、入っていません。


すかさず、私は答えた。

冷凍庫の中は空っぽだ。掃除した時に確認済みである。

主婦なき家であれば、冷蔵庫の中を片付けるのも嫁の大事な仕事なのだ。
(決して、猪肉を漁った訳ではありません、決して、決して、決して、、、)


うーん、と唸り、目を瞑る義父。

孫に食べさせてやりたかったーというジィジの無念さが滲む。

改めて、強力カードの威力を思い知り、ちょっと申し訳なく思った。

あの、次、もし、かかったらで、、、

と、ゴニョゴニョ言う私であった。


こうして、ジィジのハートには愛する孫に猪を送るというミッションがインプットされた旨を夫に報告した。

まったく、、、と呆れていたが、なんやかんや魚好きの夫も猪肉はこまめに道の駅などでチェックしている。

実際、うちの子は猪のすき焼きだと、無言で誰よりもバグバク食べるのだ。

(自分淺ましくないアピールをここでしています)


いずれにしろ、、、

近いうちに我が家に猪肉がくるのは間違いない!

(はず)


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